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二人でどっか行くとかって思っているんじゃない?/青春物語33

開かれたダッシュボードの中にはマッチ箱が何個か入っていた。

「永尾さんも集めているの?」
「集めていると言うのか捨てられないと言うのか」
「ふぅん。これもらっていい?可愛いもん」
「いいよ。全部持ってっていいから」
「ありがとう。最近[CABIN]のマッチ箱がバス停のタバコ屋さんにあるんだけどタバコ買わないから、くださいって言えなくって」
「ん?それどんなの?」
「そのままCABINの形してるの。可愛いんだよ」
「桜田さんにかかればみんな可愛いなんだね」
そう言って彼は笑った。

ハート銀行を過ぎようとしていた。
「次の次の信号を左折してね」
「OK。結構遠いんだね」
「うん、ごめんね。帰り大丈夫かな?」
「大丈夫だよ。後ろから小林が付いて来ているし」
「ええっ?」
私は思わず後ろを振り返った。
少し車間距離を空けて もう一台看板車が走っていた。

「小林さんが?」
「俺がちゃんと桜田さんを家に送り届けるか心配らしいよ」
「えっ?」
「二人でどこかへ行くとかって思っているんじゃない?」
彼はそう言ってバックミラーを見た。