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不倫関係でもあるまいし/青春物語39

お正月に小林さんと会った。
母の実家から義兄の運転で寿駅まで連れて行ってもらった。
待ち合わせの時間より少し前に着くと彼はすでに車の中で待っていた。

私を見つけた小林さんは運転席から降りて手を振った。
「明けましておめでとう」
「おめでとう。わざわざごめんね、こんな所まで」
「いやいや。俺が誘ったんだから」
彼は永尾さんと違って、おっとりしたタイプだった。

意外にも左ハンドルだった彼の愛車に緊張しながら乗った。
「メシは17時に予約したんだけど良かったかな?今日は日帰りだよね?」
「うん。なるべく早く帰らなきゃいけないから17時で良かったよ」
「帰りは送るよ。寿5丁目だったよね?」
「ありがとう。こっちに来たのは小学生以来だよ」
「そうなの?なんでまた今年来たの?」
「親戚みんな集まるから、お姉ちゃんの結婚式に出席してもらった御礼がてらにね」
「俺たちのこと何か言ってた?」
「お姉ちゃんが、なんでこっちで会うの?って」
「そりゃあ、そうだね。不倫関係でもあるまいし」
彼はそう言って静かに笑った。