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葬舞師と星の声を聴く楽師【完結】

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新連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』のマガジンです。中世西アジア風の架空世界を舞台にしたBL小説。伝統的な舞師と楽師の過去の因縁、ある宮廷舞師の思惑、国同士の勢力争い。様々な運…
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2022年4月の記事一覧

5  砂嵐を越えて行け 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

5 砂嵐を越えて行け 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
前話の振り返り、あらすじ、登場人物紹介、用語解説、などは【読書ガイド】でご覧ください↓

前話

5 砂嵐を越えて行け

 空の青が地平線に向かって白みを帯びていく。色はその果てで折り返し、黄土色に変わってこちら側に迫ってきていた。広大無辺の土砂漠。丘や隆起が緩やかな影を落とし、地面には所々にひび割れが見られた。どこまでいっても同じような光景だったが、

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6 プレイ・イン・オアシス 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

6 プレイ・イン・オアシス 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

6 プレイ・イン・オアシス

「行くぞ! しっかり息を止めてろよ〜」
 アシュディンの言葉を合図に、ザインは大きく息を吸って口を目一杯膨らませた。つぐんだ唇がとても愛らしい。アシュディンはにやにやしながら少年の脇の下に手を入れると、ふたりは勢いをつけて水

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7 三日月に架け橋 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

7 三日月に架け橋 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
前話の振り返り、あらすじ、登場人物紹介、用語解説、などは 【読書ガイド】でご覧ください↓

また今話はnote神話部にも参加しますので、記事末尾の解説までお読み頂けたら嬉しいです!



前話

7 三日月に架け橋

 何でもない土地を舞台へと一変させる。この点においてアシュディンは生来、比類なき才を有していた。湖を取り囲む植物の途切れた一隅。適度な湿

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8 黄金樹を抱く男 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

8 黄金樹を抱く男 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

1〜7話

8 黄金樹を抱く男

 オアシスを発ち、丘をひとつ越えると、道の両脇が次第に緑を帯びていった。斑状に散らばる草原に泥沼、砂漠よりも雑然としたステップが広がる。陽射しはその手を緩めていた。ぐっと過ごしやすくなった地域を、アシュディンたちは北に向か

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9 西の無神論者たち 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

9 西の無神論者たち 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

9 西の無神論者たち

 突然の轟音にアシュディンは身を硬直させ、ザインは驚いてその場で尻餅をついた。あまりの大音量と森の反響で、ふたりにはその音がどこで鳴ったのか全く分からなかった。
 突如、荒地の中央にいたハーヴィドが、森の一方へと駆け出した。
「おい

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10 生きて、生きた木と 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

10 生きて、生きた木と 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

10 生きて、生きた木と

 アシュディンはその巨体をテントの内まで引き摺り込んだ。肩で荒い呼吸を繰り返すハーヴィド。服をはだけさせると、左右の脇腹に痛々しく広がる内出血を認めた。片方の胸は歪にへこんでいる。
「肋骨がメタメタに折れてる。まさか、肺にまで…

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11 もう舞ってるんだ! 【越境の章・最終回/葬舞師と星の声を聴く楽師】

11 もう舞ってるんだ! 【越境の章・最終回/葬舞師と星の声を聴く楽師】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
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前話

11 もう舞ってるんだ!

 象牙色の帯が床にとぐろを巻いている。マントを細く切り裂いて作ったそれは、アシュディンとザインの合作だった。
 アシュディンは帯を手にハーヴィドの後ろで膝立ちすると、右、左、右、左、と両脇を往復しながら、胴に丹念に巻いていった。

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越境の章(1〜11話)振り返り【葬舞師と星の声を聴く楽師】

越境の章(1〜11話)振り返り【葬舞師と星の声を聴く楽師】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』の第1章〈越境〉の振り返り記事です。作品自体は長くてなかなか読めないという方に向けて書いています。サラッと見て頂けるだけでも嬉しいです!

本作には、同性愛の内容、過度ではないにせよ性的表現・暴力表現が含まれております。これらには差別・暴力を肯定し助長する意図は一切ございません。
また今後、該当話ごとにネット小説レーティング同盟の定義に対照させたR指定をつけるこ

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12 ヒエラルキーを足蹴に 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

12 ヒエラルキーを足蹴に 【葬舞師と星の声を聴く楽師/連載小説】

連載小説『葬舞師と星の声を聴く楽師』です。
前話の振り返り、あらすじ、登場人物紹介、用語解説、などは 【読書ガイド】でご覧ください↓

前話

12 ヒエラルキーを足蹴に

 丘の上からから見たラウダナ国都は、中心部からの放射状に伸びる道と、同心円上に描かれる道とが交錯する街だった。外側に行くほどに建物はまばらになる。かといって中心部がもっとも密というわけでもなく、その一帯には公的機関と思しき大き

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