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ショートストーリー

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短い物語をまとめています。
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#ウサギ

迷宮入り。

迷宮入り。

嘘しかつけない日に良い事があった。
正直に過ごそうとした日は怒られた。

嘘をついてはいけませんと教えられたけど、正直なことが良いわけではないらしい。ついていい嘘というのもあるらしい。

嘘をついて、笑って見せた。
正直に泣いた。

朝から、元気に挨拶した。
やりたくないことを断った。
みんなの話題に話を合わせた。
知らないところで起きた悲惨なニュースを消して、ゲームの続きをした。
もう会う気のな

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電柱のうさぎ

電柱のうさぎ

「なにしてるの?」僕は、ウサギに聞いた。
「ボウズ、お前は何してる?」

道路脇の電柱につかまっている真っ黒いウサギが、こっちをのぞいている。

「自転車の練習」

ふーんと、ウサギは興味ありげに鼻で答える。
「それは早いか?」
「うん、練習すればね」

僕の返事を聞いたウサギは、電柱の上をぴょんぴょん跳ねていく。それから、またこっちを振り向く。
ぼくは自転車を漕ぎ、その後について行く。
まだ、ゆ

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好みの問題

好みの問題

「あたまに『こ』がつくとさ、なんかムカつかね?」
ウサギは、ソファに深く座って宙を見上げている。

「たとえば?」と、ニワトリ。

「小難しい。小癪、小洒落てる、小うるさい。『こ』にさ、イヤな気持ちがこもってるんだよ。相手を下にみたようなさ」
ウサギが足を天井に向けながら、ソファの背もたれクッションに頭をバウンドさせている。

「お前が、そういうのを選んでるだけだろ」

「そうか?」

「そうだよ

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オバケはこわい

オバケはこわい

「オバケはさ、見えるから怖いんだろ」
「そうか? 聞こえるからかも。」

「近くに寄ってくるからじゃないか?」

「たぶん反射的に目を閉じるのは、心を防御してるんだ」
「へー。じゃあ永遠に防御しようと思ったら、死んじまうのがいいのか?」

「そんなことしたら、毎日オバケに会うようになるけどな」

ウサギとニワトリは、側に立つオバケを睨みつける。
「なぁ、会話に入ってこないでくれるか? 気が散るんだ

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「なあ、ヤブカラボウって知ってるか?」

「なあ、ヤブカラボウって知ってるか?」

「なあ、ヤブカラボウって知ってるか?」

眉ををあげて、ニワトリが答える。
「いまのお前みたいに、突然なんかやってくる奴に使う言葉だよ」
「じゃあ、オレはいまヤブカラボウになったのか?」
そう自問するウサギは、悩むように腕を組む。

「いやいや」と、ニワトリは手を振る。
「お前がなったとかじゃなくて、藪の中から急に棒が出てくるみたいに突然でビックリしたときに使う、ことわざ? みたいな言い回しだよ」

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