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電柱のうさぎ

「なにしてるの?」僕は、ウサギに聞いた。
「ボウズ、お前は何してる?」

道路脇の電柱につかまっている真っ黒いウサギが、こっちをのぞいている。

「自転車の練習」

ふーんと、ウサギは興味ありげに鼻で答える。
「それは早いか?」
「うん、練習すればね」

僕の返事を聞いたウサギは、電柱の上をぴょんぴょん跳ねていく。それから、またこっちを振り向く。
ぼくは自転車を漕ぎ、その後について行く。
まだ、ゆっくりだ。

「ねえ、なにしてるの?」僕はもう一度聞いく。
「なあ、ボウズは、ウサギがどこに住んでるか知ってるか?」
僕は、すこし迷う。

「森、かな」

そう答える僕に、すぐに首を振ってウサギは話す。
「あいつらとは違うんだよ」首をかしげて、がっかり、といった感じのウサギ。
「ウサギは電柱に住んでいるんだよ。一羽、二羽・・・と数えるんだから電柱にいるほうが自然じゃないか。なあ、そう思うだろ。森にいたら一匹、二匹だ」

また、ぴょんぴょん跳ねて別の電柱に行ってしまう。

「ためしに大人に聞いてみなよ。夜に跳んでるウサギをみたことあるかって。じゃあな、ボウズ。もう帰んな、暗くなってきたぞ」
そう言ってウサギは、電柱の上を跳ねていってしまった。

別の日。

お父さんの車で出かける途中に、僕は窓の外を見ていた。
「ねぇ、おとうさん。夜にウサギ、見たことある?」


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