見出し画像

TOEICは必要?不要?茂木健一郎×パックン対談から考える日本の英語教育問題

アベプラでTOEICをはじめとする日本の英語教育について、茂木健一郎氏と、TOEIC96回満点取得のもりてつさん、コメンテーターのパックンが熱い議論をしていました。話題の中心はTOEICですが、日本の英語教育を考えるうえで大事なところなので、改めて考えておこうと思います。

TOEICは受験、就職対策だけのもの?

Twitterで「TOEIC不要論」について盛り上がっていました。「みんな何のことを言っているんだろう」と思って探してみたら2022年2月21日21時からのアベプラで脳科学者の茂木健一郎氏と、武田塾国立校オーナー 武田塾English取締役のもりてつさん、コメンテーターのパックンがTOEICについて対談をしていたとのこと。さっそく内容を見てみました。もりてつさんは TOEIC(リスニング・リーディング?)満点96回、TOEIC(スピーキング・ライティング)満点 。国連英検特A級 TOEFL iBT115点 英検1級 Cambridge CPE 単検1級。著書50冊と、TOEICをはじめとする英語資格試験のスペシャリスト。

内容をざっくりまとめると、茂木さんはTOEIC不要論を10年以上前から提言している。理由として次のようなことをあげていました。

・スコアが出るような評価システムでは英語の本質は図れない

・テストはいらない。スコアを目指す勉強はくだらない

・個人の英語力は、ちょっと英語を話せばわかる

・脱ペーパーテストをすべき

・TOEICは金儲けの道具になっている。日本の教育を変えるべき

・日本人を永遠に二流以下の英語話者にとどめるための策謀だ

・教養としての英語力を身に着けるべき

・もりてつさんのYouTubeはすごくおもしろいのに、なぜその知識がTOEICに向いてしまうのか(なぜもっと英語のおもしろさを伝えることにつかわないのか)

・TOEICの勉強ばかりしてないで、ネットフリックスなどで洋画に触れ、生の英語や文化に触れるべき

・英語の文法や単語の間違えで評価するのではなくエッセイの内容で評価すべき

・TOEICは日本の大学入試試験と同じで点数至上主義になっている

これに対して、もりてつさんはTOEICについて必要論を伝えました。

・TOEICをきっかけに英語を好きになる人もいる

・日系企業など就職の場面でハイスコアだと有利

・海外派遣する際に、現地で生活できるかどうか図る試験

途中からパックンと茂木さんの対談になり、パックンがもりてつさん側として次のような発言をされていました。

・TOEICは運転免許と一緒。世界を旅するために最低限の英語の知識を持っているかどうか図るために必要。

記事として読む概要はこちら。

一次情報を確認するべき

Twitterでもいろんな人がこの問題について話していますが、TOEICが必要かどうかをいう前に、まずはちゃんと動画を見て考えてほしいと思います。これは記事にも言えることですが、Web媒体で記事を書いた場合、多くの人が内容も確認しないでタイトルだけで憶測していろんなことをヤフコメなどに書き込みます。内容を確認したうえで議論しないと、そもそもの前提が違うので議論にすらないのです。

動画では、最初はもりてつさん、茂木さん対談でしたが、途中から議論が白熱し、パックンが参戦。茂木さん、パックンはテレビ慣れしているだろうからなんの問題もないと思いますが、もりてつさんは時間制限あるなかでお話するのは本当に大変だっただろうなと思います。興味深いお話でした。32分くらいから始まります。

アベプラに出演したもりてつさんの感想は?

もりてつさん、アベプラに出演するのにかなりいろんな用意をしていったそうです。茂木さんの英語について話しているYouTubeを見て、反論を考え、台本にそって試験の解説や話すエピソードを用意して……。2日ほど前にアベプラのスタッフから連絡があり、それから用意したそうです。仕事もあって忙しいなか、しっかりと用意していくあたりさすがだと思います。

対談相手の茂木さんについては、「最初から最後までとても丁寧な方で、始まる前に、いろいろ言っちゃうかもしれないけどごめんねと声をかけてもらった」とのことでした。また、終わった後もDMなどで連絡をくれたりして、「また今度ゆっくり話しましょう」とのことでした。

私も1、2年前、オンライン取材で茂木さんにお話を伺ったことがありますが、話すのが速いので圧倒されるところはありますが、スタッフの人に対しても丁寧だし、白熱した議論のときと比べて、話しやすく穏やかな方といった印象があります。

アメリカ人のパックンはどうやって日本語を習得した?

ところで、お笑い芸人であ

りコメンテーターとしても活躍するパックン。元々はアメリカのハーバード大学を卒業して、日本が好きで来日し、お笑いタレントを始めたそうですが、いったいどうやって今のような高い日本語力をみにつけたのかといえば、ひたすら話す練習をしたとのこと。

実は、10年ほど前に麹町でお会いして取材させていただいたことがあるのですが、そのとき言っていたのは「とにかく人と話すことをした。わからないことがあればメモして意味を調べて、使ってみる」と言ってました。最初はお笑い芸人として、相方のマックンと路上ライブをやっていたそうですが、それを見に来ていた、のちに奥さんとなる女性が全然笑わなくて、どうしても彼女のことを笑わせたくて必死に練習したとのことでした。その頃には、もう日本語はかなり堪能だったんでしょうが、彼女のためにも相当がんばったんだろうなと思います。

ちなみに、パックンは日本語能力試験を受けたそうですが、それはただ自分の能力がこれくらいだと示すために受けただけといっていました。今回の番組ではTOEIC必要側にたって発言されていましたが、個人的には茂木さん側なんじゃないかなと、勝手に思っています。

「TOEIC不要論」を語る茂木さんの真意は?

茂木さんが伝えたかったのは、「日本の教育全体で脱ペーパーテスト化をするべきだ」ということだと思います。というのも、現在の日本の教育は、大学受験に受けるための対策になっていて、そのため点数至上主義になっているのです。これは20年ほど前から言われていることで、それもあって大学入試試験を抜本的に改革しようという動きがあったのです。

日本の教育は戦前に始まったものをそのまま踏襲していて、時代にそぐわなくなってきているのです。インターネットの発達もあり、知識編重教育ではなく思考力、探求力、批判力、リスクマネジメント、プレゼン力、リサーチ力など、様々な角度から教育効果を測定するべきだという意見もありました。実際にインターナショナルスクールなどで導入されている国際バカロレア教育(IB)は、こういった21世紀型教育を導入しているところも多く、日本の義務教育は遅れているといわれています。

日本も、大学の教授や教育関係者の方がもう何年も前からこの問題について話し合い、高大接続改革、大学入試改革、日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)、教育改革などを通して、日本の教育を大きく改革しようとしていきたのです。

日本人の英語学習者は脱ペーパーテストできないまま?

これに対してTOEICは、点数評価となるこれまでの教育を推進することになるので、茂木さんは危機感を感じているのではないかと思うのです。「TOEICでハイスコアを取ることを目指す学習ではなく、もっと知的好奇心を刺激するような映画を見たり、留学なり現地で働いたりして、英語を習得したほうがいい。テストの点数の結果に一喜一憂している暇があったら、英語の文学を読む、それについて英語で議論をする。そういったやり方をしないと、いつまでたっても”ただ英語が話せるだけの人”になってしまう」と考えているのではないかと思います。

大切なことは自分自身で判断すること

TOEICに関していえば、必要な人は必要だし、そうじゃない人もいます。英語学習者の何割くらいがTOEICを受験しているのかはわかりませんが、ユーキャンが実施したアンケート調査ではTOEICが「Z世代が最も取得すべきだと思う資格」ということは、英語の重要性を感じているからなのか、ただ単にハイスコアを目指すためだけにやるのかで、読み取り方が大きく変わってくると思います。私個人の見解としては、英語の必要性を感じながら、脱ペーパーテスト化できていないZ世代たちが狙うのがTOEICハイスコアかなという感じがします。

今回の論点は、「世の中の流れとZ世代の意識が乖離している」ということなので、ただ単にTOEICでハイスコアだと収入が上がる、TOEICで英語を好きになった人がいるということは、あまり関係ないかなと思います。

英語学習者の多くは、権威性のあるものに強く興味を示し、物事を理詰めで説明したい人が多い傾向にあるんじゃないかと思います。そのためTOEICのような資格試験は好きで、TOEICのほかにも次々といろんな資格試験に挑戦したいのではないかと思います。それを踏まえたうえで、TOEICが必要な人は受ければいいと思います。

英語学習3年目にしてTOEICに挑戦するワケ

実は、私もTOEICを始め、英検などの資格試験は自分の英語学習には必要ないと思い、これまでまったく受けようと思ったことはありませんでした。私が英語を学ぶ目的は、日本の教育と海外の教育、それぞれの良さを伝えるため。インタビューをする際に毎回通訳をつけられるわけではないので、英語が必要だと思って学んでいます。そのためTOEICなどの試験はまったく必要ないと思っていました。

ただ、ある程度話せるようになったら、語彙力の不足、文法の理解不足、発音、リスニングなど、これまでとはまた違った問題点が見えてきました。そんなときTOEICオンラインコーチング「コレダケ」を立ち上げた「コレダケ」代表:石原智之さんのインタビューを通して、TOEICを受けてみようと思って学習をスタートしました。

私がTOEICのリスニングとリーディングで強化したいのは文法力とリスニング改善。

ある程度はわかるものの細かいところが聞き取れない。文法も同じく。自分一人でやったら1日で挫折し、ネイティブキャンプでやったら1週間後に飽きて……。TOEICだったら結果重視&数字重視の自分の性格に合っていると思い、始めました。そしたら意外なことにリスニングの音声変化から学ぶことになり、これまで聞こえなかった音が聞こえるようになってきました。

また、リスニングパートでの会話は日常会話でもよく出てくるので、ここで習ったフレーズをオンライン英会話でフル活用しています。

もう1つ、近い将来、日系企業と業務委託をして海外の現地って調査員などもやってみたいと思っています。その際にTOEICでのスコアがあったほうが採用されやすいかなと思います。そのためにTOEICを受けておいたほうがいいという判断です。

鍛えるべきは「TOEIC」のスコアではなく英語を使って何を得るか

「TOEICのLRには、スピーキングがないから英語で会話できるかどうかわからない」という話もありますが、そもそも英語でいうスピーキングはただ単に英語を話せるかどうかではなく、あるテーマに対して英語で自分の意見を的確に表現できるかどうかです。

茂木さんはアメバプライムで「TOEICについて言えば国家的な損失だ。このままでは日本人は没落するだけだと思うし、僕は愛国者として、日本人の英語力をこのままにしておくことに耐えられない」という発言されていました。

私も、これについては同意で、まずは日常英会話を話せるようになることが必要ですが、そこからもっと先のディベート力を鍛えないと、これから海外に出てやっていくときに大変だと思います。TOEICは英語力を鍛えるきっかけとして、そこから先の英語の本質をつかむ勉強をしていかないと厳しいだろうなと思います。

日本では、英語が話せない人が多いから「英語が話せる=能力の高い人」と思われがちですが、フィリピンにいったらほとんどの人が英語を話せるし、アメリカだったらいわずもがな。数か国の人が集まる会社の会議などでは英語が話せない人は「何しに来たの?」状態になるわけで……。そう考えると、TOEICが不要か必要かで議論しているばあいじゃないなと思います。

とはいえ、テレビやWeb媒体の企画を作るとき、「AとB賛成ですか?反対ですか?」はネタとして盛り上がりやすく、シェア率もPV数も格段に上がります。ついでにTOEICはTwitterでのトレンドワードに入るくらい人気のキーワードで、Twitterは他のSNSに比べて拡散されやすいので企画として成立しやすい、という事情もあるでしょうね。

TOEIC問題、あなたはどう考えますか?






この記事が参加している募集

#最近の学び

181,025件

#英語がすき

19,333件

フィリピンセブ島の孤児院で出会った子どもたちをサポートします😊✨✨子どもたちが大人になったとき、今度は誰かをサポートしてあげられたら素敵ですね❤️