マガジンのカバー画像

読書記録_本

228
読書(漫画以外)の記録。 名前が覚えられないため、外国の本があまり読めない。まほろ市出身。 Instagramにも載せています。 https://www.instagram.co…
運営しているクリエイター

#本

『くもをさがす』西加奈子

『くもをさがす』西加奈子

この人のこと、好きだ。この本は夫と小さな息子と暮らす、小説家の西さんがコロナ禍のカナダで乳がんになって治療する話である。内容は、帯の「カナダで、がんになった。あなたにこれを読んでほしいと思った。」これに尽きる。シンプル、でも奥深い本。

どうやってがんに気づいたか、気持ちがどう動いていくかという西さんの暮らしや体調、心境が綴られる。カナダでは両乳房切除でも日帰り手術なので日本とは全然違う。そんなカ

もっとみる
『しんがりで寝ています』三浦しをん

『しんがりで寝ています』三浦しをん

ブフ、と前書きで吹き出してしまったので私の負け。本屋を徘徊していて好物の三浦しをんのエッセイを見つけたものの、値段に逡巡していた。でも前書きだけで私を笑わせるとは。やっぱり三浦しをんのエッセイは別格だ。精神安定剤、この世界を生き延びるための必需品だもの、とも思ってレジへ持っていった。

生理用ナプキンの袋をどう開けるのかをネイリストさんと話し合ったり、タクシーの運転手さんと新しい元号を予想したり(

もっとみる
モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語』内田洋子

モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語』内田洋子

段ボールに本を詰めたらすごい重さになって驚く。イタリアの山深い村には本の行商を生業とする人たちがいたという。今のように文庫本がない時代は、さらに重かろう。

貧しく、売るものがなかったから、村人たちは石を売りにでかけた。そして軽くなった荷には本をいれて売り歩くようになった。大きな町の真ん中に露店を開き、町から町へ、本を売り歩く。客の要望を聞き、本を届ける彼らは、客や出版社の信頼を集める。識字率の向

もっとみる
『ガラム・マサラ!』ラーフル・ライナ

『ガラム・マサラ!』ラーフル・ライナ

女と美容師の会話。

私、今つまらない本を読んでいて。読み進めるか、止めるか迷っていて。

面白いね、人生みたい。

1/3読んだところで気づいたんです。この本、愚痴ばっかりだってことに。半分まで読んでもそうで。主人公はチャイ屋の息子で父親に殴られながら、学校に行かずスパイスをすりつぶして暮らす。ひょんなことから教育を受ける機会に恵まれて、その後替え玉受験のビジネスを始める。今回のクライアントもバ

もっとみる
『リスペクト』ブレイディみかこ

『リスペクト』ブレイディみかこ

生活に不満があるとして。それが行政や政治に大きな原因があるとして。私なら、そして日本に住む多くの人たちは、どうするだろう?おそらく仲間うちで愚痴を言い合ったり、SNSに不満をぶちまけるだけだろう。せめて、選挙で「ちゃんと」投票するくらいなんじゃないか。でも、この本に出てくるシングルマザーたちは、行動を起こした。

2014年にロンドンで実際に起きた占拠事件を元にした小説。2012年のロンドンオリン

もっとみる
『正欲』朝井リョウ

『正欲』朝井リョウ

朝井リョウのエッセイとラジオが大好きだ。へなちょこで、くだらなくて、下世話な彼。そういえば彼の小説をちゃんと読んだことがない。友達が「今『正欲』を読んでいる」っていっていたっけ。

これは、私にとってすごい小説だった。とてもお勧めなので、これから読む人の邪魔にならないよう、極力あらすじには触れない。朝井リョウ、お腹弱くてアメリカでもトイレを詰まらせていたのに、あんた、すごいよ!!!心から賛美する。

もっとみる
『私という病』中村うさぎ

『私という病』中村うさぎ

ジェーン・スーさんのインスタに出てきて、すごいタイトルだし、読むことにした。あの、整形や買い物をたくさんするすごい人の本、読んだことなかったな。

本を読み始めたら彼女が47歳で初めてデリヘルをする、という話だった。やってみてどうだったのか、何を感じるのか、お客さんはどんな人か、個室で2人っきりになって、どうなるのか。デリヘルをしたことを知人に話すとどういう反応をするのか。男の場合、女の場合でリア

もっとみる
『しあわせしりとり』益田ミリ

『しあわせしりとり』益田ミリ

白湯のように、しんみりおいしくて、自分にするする入っていって、温めてくれた。益田ミリさんのエッセイ。

夜の新大阪から東京行きの新幹線。一人暮らしの家に粗大ごみを持ち帰ったこと。一人カラオケのこと。新宿でお笑いライブを見て、帰りに九段下の桜を見に行く話。大きな出来事ではないが、死ぬ前の走馬灯で幸せな場面として出てきそう。

益田さんはよく妄想をする。私は妄想よりひたすら分析をするタイプなので、他の

もっとみる
『海が走るエンドロール』5巻 たらちねジョン

『海が走るエンドロール』5巻 たらちねジョン

作品作りのモチベーションや自信の高低の波。高い時は良いけれど、「もう止めてしまおう」と思うほどコンディションが低くなることが、もの作りをする人ならあるだろう。

65歳を過ぎて映画作りを始めたうみ子さんは諸々の疲労が溜まって倒れてしまう。自分は若くないし、映画を作るのは途方もなく、正解もなく、苦しい。やめてしまおうか。何のために映画を撮るのか、自問自答と他人との関わりの中で探っていく様は、なんだか

もっとみる
『香川にモスクができるまで:在日ムスリム奮闘記』 岡内大三

『香川にモスクができるまで:在日ムスリム奮闘記』 岡内大三

『香川にモスクかできるまで』…香川県にモスクを作るなんて、とても大変そう。「探検についてのブックガイド」として川内有緒さんが挙げていたリストの中の一冊。東京や横浜、大阪、神戸だったら多様な国籍の人がいそうけれど、香川?なぜ?

香川で溶接工として働く、長渕剛ファンのインドネシア人のフィカルさん。日本人の奥さんと娘たちと暮らす彼は、香川にモスクを作りたいと言う。

この本を読んで知ったが、香川県には

もっとみる
『僕はお金持ちの付き人』水川友樹/佐野晶

『僕はお金持ちの付き人』水川友樹/佐野晶

「気晴らしがしたい…スマホばっかり見てしまうのやめたい…読みやすくてただ面白い本が読みたい…」と本屋を徘徊している時に出会った本。私はお金が大好きで、湯水のように持続的にお金を使いたい。お金持ちはどんな暮らしをしているのかテイストだけでもインプットしたい。興味津々。

一泊400万円のスイートルームに泊まる、総資産3兆円のお金持ち佐々井さん。彼は自分に賞金をかけて、世界各国を舞台にSNSで現在地を

もっとみる
『とわの庭』小川糸

『とわの庭』小川糸

その日、私はとても疲れていて、甘やかで優しい何かに包まれたくて、書店にいた。『とわの庭』小川糸。小川さんなら夢のように軽く、ふわっと優しく包んでくれるだろうと、本をレジに持っていった。

話はそう簡単ではなかった。主人公は盲目の少女 十和子。母親と二人っきりで暮らしている。家の外には出たことがない。私からしたら人生のリセットボタンを押したくなるような環境で彼女は成長する。

そんな彼女が、再生して

もっとみる
『メモリークエスト』 高野秀行

『メモリークエスト』 高野秀行

タイの山奥で会ったスーパー小学生、セーシェルで古今東西のエロ画(日本は春画)を集めていたおやじ、留学中に出会ったユーゴスラヴィア人。その後ユーゴスラヴィアでは紛争が起きたけれど彼は無事なのか。

「旅先で会ったあの人は今どうしているだろう?」そんな案件を募って、高野さんが実際に探しに行くノンフィクション。

依頼者の記憶(場所すらあいまいなこともある)や写真といったわずかな手がかりと共にそのエリア

もっとみる
『ラブという薬』いとうせいこう+星野概念

『ラブという薬』いとうせいこう+星野概念

「こんな人が先生だったら、あの時、精神科に行けば良かった」と思った。

精神科医でミュージシャンの星野概念さんと、いとうせいこうさんの対談。星野さんはいとうさんのバンド「□□□(くちろろ)」のサポートメンバーであり、いとうさんの主治医だという。

精神科というと、私にはハードルが高く感じる。空に向かって支離滅裂なことを話している人がいるんじゃないか。拘束衣で縛られたりするんじゃないか。多大な偏見を

もっとみる