見出し画像

『メモリークエスト』 高野秀行

タイの山奥で会ったスーパー小学生、セーシェルで古今東西のエロ画(日本は春画)を集めていたおやじ、留学中に出会ったユーゴスラヴィア人。その後ユーゴスラヴィアでは紛争が起きたけれど彼は無事なのか。

「旅先で会ったあの人は今どうしているだろう?」そんな案件を募って、高野さんが実際に探しに行くノンフィクション。

依頼者の記憶(場所すらあいまいなこともある)や写真といったわずかな手がかりと共にそのエリアに飛び、聞き込みと経験からくる推測などからその人を探していく。国境地帯等では様々な人が暮らすため、言語や容姿からコミュニティを割り出していく。ターゲットの中には母国を追われて逃亡した人もいて、ただの旅行者には難易度が高すぎる。アジアのアヘン栽培地域やアフリカの幻獣探しなど、世界を独特の切り口で歩いてきた高野さんだからこそできる人探しである。

その人は見つかるのか?見つかったとして今は何をしているんだろう?依頼者のことは覚えているのか?高野さんとともにドキドキワクワクしながらページをめくっていく。そんな偉い人だったのか…人生本当に大変でしたね…といった驚きもあり、それぞれの人生にしみじみとしてしまうことも。

今ではメールアドレスもSNSもスマホも普及して、旅先で会った人とも「なんとなく」繋がっていることが簡単になった。それでもそこから漏れてしまった人たちがいたり、昔のことであればなおさら旅先の出会いはまさに一期一会。目の前のことで精一杯になりがちだけれど、この本をきっかけに世界や歴史、色々な人生に思いを馳せて視野が広がる。

『メモリークエスト』高野秀行

#メモリークエスト #高野秀行 #旅行記 #ノンフィクション #本 #読書感想文

この記事が参加している募集

#読書感想文

188,766件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?