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読書記録_本

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読書(漫画以外)の記録。 名前が覚えられないため、外国の本があまり読めない。まほろ市出身。 Instagramにも載せています。 https://www.instagram.co…
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2020年7月の記事一覧

『保健室のアン・ウニョン先生』 チョン・セラン

『保健室のアン・ウニョン先生』 チョン・セラン

ひときわ長い梅雨のジメジメした空気の中、この本を開いたら、爽やかさに包まれた。「今日こそは好きなあの子に告白しよう」と決意する男子高校生の恋心からこの本は始まる。そしてタイトルになっている保健室の先生は特殊能力を持っていて、学校にはびこる「ソレ」とおもちゃの剣とBB弾の鉄砲で戦う。私の中二病がうずきだす。表紙も非常にPOPでかわいらしい。

手入れの足りないパサパサの髪をした保健の先生がストッキン

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『若冲』 澤田瞳子

『若冲』 澤田瞳子

その人がどんな人だったのか、私は知らない。京都の青物問屋の長男で、家業を継ぐことなく、お金だけ使って絵に没頭した人。野菜や鶏、付喪神、当時の日本では見ることのできなかった象などちょっとユニークな題材を、驚くほど細かく、色鮮やかに描く絵師、伊藤若冲を。

京都のお墓参りに行ったり、東京から福島まで伊藤若冲展に行ったりするくらいに伊藤若冲が好きだが、これまで人柄を考えたりしなかった。この本は伊藤若冲を

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『バウルを探して<完全版>』 川内有緒

『バウルを探して<完全版>』 川内有緒

「バウルを探しにきた」と言うと、バングラデシュの人々は語り始める。そしてそれは次の展開へ、人へと繋がっていく。「バウル」とは何なのか。私は「バウル」を全く知らないままこの本を買った。川内さんの本が面白いのを知っているから。余計な情報を入れずに「バウル」を探し始めたい人はスクロールはやめてこのブラウザを閉じること。すぐに本屋に行くか、オンライン書店に注文を入れて。もう少しだけヒントが欲しいなら、先へ

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『針と糸』 小川糸

『針と糸』 小川糸

人の言葉が恋しいのかもしれない。緊急事態宣言が終わった今も、在宅勤務で一人暮らしの私はたいして人と話さない。図書館で借りてきた本を手にとったものの、みっしり字の詰まった漂流者の小説も、分厚くてクレバーな読書記録も手がのびなくなってしまった。そんな中、するすると読めたのはこの本だった。『食堂かたつむり』や『ツバキ文具店』を書いた小説家 小川糸さんの毎日新聞での連載エッセイ。

このエッセイを書いてい

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『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』 キャスリーン・フリン

『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』 キャスリーン・フリン

タイトルがなんだかなあ。狙っているんだろうけれど、いけ好かない。その表現はジェンダー論的にどうなのか、と思って手を伸ばさずにいたのだけれど、中身は面白そうで、結局読んだ。原題『The Kitchen Counter Cooking School』。うん、このタイトルでは読もうと思わなかったとも思う。

フランスの名門料理学校ル・コルドン・ブルーを37歳で卒業したアメリカ人が、この本の筆者であるキャ

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『ちはやふる』1-44巻 末次由紀

『ちはやふる』1-44巻 末次由紀

何度嗚咽したかわからない。ここまで44巻、20回は下らないだろう。百人一首を愛おしむ若宮詩暢(しのぶ)に、叶わなかったあの人の想いに、ついに叶ったあの想いに。

競技かるたに打ち込む高校生たちを描く『ちはやふる』。アニメ、映画化もされる人気作である。気づいたときには40巻を過ぎていて手をだせなかったのだが、読んだ。すごかった。

「競技かるたのマンガ」と聞いても何が醍醐味なのか、読む前に全く想像が

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『あのひととここだけのおしゃべり』 よしながふみ

『あのひととここだけのおしゃべり』 よしながふみ

意味がわからないけど、すごいことが書かれているのはわかる。だから食らいついてみよう、ということが時々ある。「『やおい』は男同士だけではない。女同士でも男と女の間でもある。『やおい』の定義とは」えっと・・・やおいってBLと同じものじゃなかったの?え、ごめんどういうこと?

『きのう何食べた?』『大奥』と底力のあるマンガを描かれるよしながふみさんの対談集。対談相手は萩尾望都さん、羽海野チカさん、三浦し

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『お葉というモデルがいた』金森敦子

『お葉というモデルがいた』金森敦子

竹久夢二、責め絵の伊藤晴雨、日本の洋画界で長く指導的役割を果たしてきた藤島武二という異なる3人の画家のモデルを勤めてきた女性、佐々木カ子ヨ(かねよ)。彼女はどんな人物だったのか。

大正時代にヌードモデルをし、さらに緊縛され乱れ髪の姿も描かれ公開されてしまう女性。タイトルの「お葉」は竹久夢二のつけた愛称で、彼との関係が最も多く書かれる。男と女、描く者と描かれる者、視る者と視られる者。内面も発露させ

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『シェフを「つづける」ということ』 井川直子

『シェフを「つづける」ということ』 井川直子

料理人、飲食店を営む人はかっこいい。おいしいものを作れるから。自分で決断して経営しているから。そんな飲食店の人々がコロナ時にどうしているかという連続インタビューを、この本の著者井川さんがnoteで発表していた。店をいったん休むのか、開くのか、テイクアウトに切り替えるのか、それらを組み合わせるのか。立地やお店の形態(レストラン/バー/居酒屋…)に加え、お店が大事にしていること、表現したいことは何なの

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『雲を紡ぐ』 伊吹有喜

『雲を紡ぐ』 伊吹有喜

おばあちゃんに会いたいよう、と思う。新潟の祖父母から圧倒的な愛情を受けていたことにようやく最近しみじみ気づいて、もっとしっかり受け取ればよかった、素直に甘えればよかった、もっと喜べばよかった、優しくすればよかった、と思っている。

この本の主人公は高校生の美緒ちゃん。繊細な子で、学校に行けなくなってしまうが、ともに仕事で行き詰まっていることもあり両親はうまく彼女をケアできない。美緒ちゃんは家を出て

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