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[コロナからこころの健康を守る]3.イライラの対処法

前回の記事では、不安とうまくつきあう方法として、
コロナウイルスや先の見えない状況への不安を受けとめ、整理してみました。
不安と同じくらい、私たちの頭を悩ませるのが「イライラ」ではないでしょうか。特に今回の新型コロナウイルスのような前代未聞の状況では、
健康や経済、生活、人間関係、あらゆる分野の大きな不安やストレスが、
私たちに「イライラ」を引き起こします。

居場所が自宅に限定され、自由に行動できないストレス、
先の見えない社会状況で、仕事も不安要素がいっぱい、
休校で家にいる子供達がダラダラ→つい言い合いに、
家族が皆自宅にいる→お互いの言動につい口出し→ギスギスした雰囲気に、
などなど…。
今は至る所で、イライラ・ギスギス、衝突・喧嘩勃発の火種が、
発生するのも無理のない状況でしょう。

イライラすると、私たちのこころはとっても疲れます。
イライラの原因を取り除くのが難しい以上、
この困った感情を少しでも”自分でコントロールすること”ができれば、
気持ちも状況も、かなり楽になります。

今回は、困った感情「イライラ」について、数回に分けて、
イライラのメカニズムやその対処法について、シェアしてみたいと思います。

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1. どんな時にイライラするの?

 イライラのポイントや状況、発火点は人それぞれ。
例えばこうして自粛生活が続き、家族との関係がギスギスすることもあるのでは。
こんなシチュエーション、ありそうですよねー。

35歳A子さんの場合:
在宅勤務や休校延長で、家族がずーっと家にいる日々…。
食事、洗濯、掃除の負担、ハンパない…。
私が家事で忙しそうでも、みんなTVの前で見て見ぬ振り…。
イライラしちゃって
「ダラダラしてるんだったらちょっとは手伝ってよ(怒)」
って声を荒げたら
「何そんなにイライラしてんの?こわっ」
とか言われて、ますますムカっ!


A子さん、大変です(-。-;。
いつも仕事や接待で、ほとんど家にいない夫も、
学校や部活で忙しい子供達も、
みんな居場所を失い一日中家にいます。
A子さんも仕事は在宅になり、
趣味のフラダンスも、友達とのカフェでのおしゃべりも、
しばらくは自粛です…。

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 さて私たちはどんな時にイライラするのでしょう。
考えてみるとイライラするときは、
「自分の想定している状況になっていない」とか、
「何かがうまくいっていない」、
「本来あるべき姿と現実にズレがある」
そんな状態に、自分が”困っている”ときですよね。

実は、イライラ感情は
「物事がうまくいっていない、よって私は困っている!」
ことを知らせる役割を持っているのです。

2.「イライラ」は、自分が何かに「困っている」サイン

 毎日の生活には、想定外のこと、予定が狂うこと、がたくさんあります。

・間に合うように出かけたのに、電車が人身事故で止まっていた→イライラ
・友達にすごく親切にしたのに、全然感謝されない→イライラ
・子供にコツコツ勉強してほしいのに、ゲームばっかり→イライラ
・高いレストランに行ったのに、接客がイマイチ→イライラ

私たちはそんな想定外のこと、予定が狂うことに、
困り、イライラしているのです。
皆さんも、何かイライラするシチュエーションを1つ思い出してみてください。
おそらく何かに「困っている」はずです。

イライラは「あの人にムカつく」、「こんなことに腹が立つ」
と「相手」や「対象のもの」に対する怒りを表すと思われがちです。
しかし実は「自分が」困っていることを、知らせてくれる感情なのです。

次に自分が何かにイライラしたとき、
イライラしている人を見かけたとき、
「私は何に困っているのかな?」
「あの人は何を困っているんだろう?」
と考えてみてください。

 「イライラ→困っている」に置き換えるだけで、
ただ感情的なのから「お困りごとをどうするか」に意識が向きますし、
困っている自分を、俯瞰できることにつながります。

3.イライラの対処法

イライラは「自分が困っていることを教えてくれる大切なサイン」
だと言うことがわかりました。
となるとイライラするのが問題となるのは、
「イライラによって自分が嫌な気持ちになる」とか、
「不快な気持ちが周りに伝染すること」や、
「それによって周りと衝突したり、関係が険悪になる」可能性があるからです。

これらを避けるためには、大きく2つの方法があります。

① うまくいっていないことを、”適切なやり方で”うまくいくようにする
② 「こうなるべき・こうあるべき」と言う自分の期待を変える

 言葉で言うのは簡単で「それができれば苦労しないよ」と思うかもしれません。ですので、これから少し具体的にご紹介しようと思います。
要は相手にうまく働きかけたり、
状況で変えられることを考えたり、
自分の捉え方を変えるなど、
適切な方法で何らかの対処をすることが、イライラの正しい付き合い方です。

 ①は「うまくいっていないことを、”適切なやり方で”うまくいくようにする」です。たとえば自分のイライラについて相手に
「私は今、○○について困っている。本来●●であればいいのに、と思っているのに、今はそうなっていないから。できればあなたにこんな風に助けてほしい」
と(実際はこんな丁寧な文語体ではないですが)、落ち着いた口調で、丁寧に伝えるやり方です。
イライラしているとき、落ち着いた口調で、丁寧に、
相手に伝えるのはとても難しいですが、
「自分が困っているのを助けてほしい」スタンスとなると、
少しハードルが下がる気がしますね。

 次は②「こうなるべき・こうあるべき」という自分の期待を変える」ということです。これは私が、クリニックや企業で扱っている精神療法である”対人関係療法”の考え方の一つで、言葉を変えると
「相手にも何か事情があるのだ」と思うことです。
 私たちには
「子どもは勉強する”べき”」とか、
「お金を出したら相応のサービスを受ける”べき”」、
「家族が忙しそうにしていたら手伝う”べき”」、
「人間とはこうある”べき”」など、
その「べき」と違っていることを受け入れられないことでイライラを感じます。

つまり「べき」の感じ方が強く、寛容できないことが多い人ほど、イライラを感じやすいと言えます。

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 でも自分の「こうあるべき」はそもそも全て、正しいでしょうか。
自分にとって「あたりまえ」と思うことでも、逆の立場から見ると実はそうではなかったり、相手の(自分から見ると)信じられない行動の裏には、実はやむにやまれぬ事情があることも多いのです。もっと言うと、人が何かの行動をとる背景には、その人なりの納得できる事情が必ずあると言えます。生まれ持った性格要因、育った環境、これまでや現在の、境遇・体験…。そんな様々な事情をもとに、その人が形作られています。2人として同じ人間はいない以上、人が自分と違う考え方や価値観を持つのは、実はあたりまえのことかもしれません。こうしてみると、「相手の言動には何か事情があるのだ」と、ある程度受け入れ、自分の期待値を変えることができるかもしれません。何よりも「イライラ」という、自分にとってストレスフルな環境を、相手への期待値を変えることで減らせるならば、自分の精神健康のためにも、試してみる価値はあると思いませんか?

 そのほか、よくあるイライラの対処で「我慢する」ことがあります、これは一見正しそうですが、我慢するくらいではイライラは消えず蓄積しますし、やりすぎると心の病になることもあります。また「爆発する」のもオススメとは言えません。本人は一瞬スッと気が晴れるかもしれませんが、衝突した相手には衝撃が残り、関係悪化や不快の伝染が起こってしまいますし、衝撃をぶつけたところで、相手が本心から変わることはないからです。「がまん」や「爆発」以外の解決策をとったほうが良さそうですね。

 次回からはイライラの対処法について、ケースをもとに、具体的なコツやヒントを少しずつご紹介していこうと思います。

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