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不安には意味がある. でも支配されたら苦しい[コロナからこころの健康を守る2]

NHKのニュース
コロナ不安で、こころの悩み相談が殺到しているようです。
記事では、
「一人で悩まず、とにかく誰かに相談しましょう」
「みんな悩んでいるから、周りと悩みを共感しましょう」
「専門家や自治体のサポート・支援もあります」
と伝えられていました。
相談電話も殺到してなかなか繋がりにくいみたいです。
周りも同じように不安とわかっても、
なかなか自分の不安が解消とまではいかなそうですね。
できれば自分の力で、少しでも不安を和らげたいところ。

そこで今回は、
自分でできる、「コロナ不安の対処法」
を考えてみます。

不安には意味がある、でも支配されたら苦しい

前回の記事で、
「不安は意味のある、大事な感情」とお伝えしました。
 感情だとわかりにくいけど、例えば痛覚では、
とてもちいさなトゲが刺さっただけで、「痛っ」となったり、
沸騰したポットに触ると「熱っ」となったりしますよね。
その痛みで私たちは、
「異物が体に刺さってしまったこと」や、
「ポットがやけどするほど熱いこと」
に気づくわけです。
同じように私たちは、
真っ暗闇の中に、いきなり一人にされた時や、
角を曲がったら、怖そうなライオンが現れたら、
めちゃくちゃ不安(というか恐怖)を感じます。
だからこそ、
「あっ、目の前に何があるか見えなくて安全じゃなさそう」とか、
「ライオンがいる!安全が確保されてない」
ということに気づくわけです。ということは、私たちは、

”不安や恐怖を感じるからこそ”、
手探りで少しずつ、慎重に前に進んだり、
どうしたらこの局面を切り抜けられるか必死で考えたり、
周囲に助けを求めたり、
という選択を取ることができるんですね。

不安や恐怖を感じるのは悪いことではないし、
我慢する必要もないし、
ましてや不安を押し殺して「ポジティブに!」なんて考える必要もないのです。
確かにポジティブ・シンキングがいいこともあります。
が実は、心理学的にも「対処的悲観性」といって、
感じた不安をモチベーションにすることで、
適切な対処行動をとることの有効性が分かっています。

とはいえ…。
不安に支配されたら、誰だって苦しくなります。
大事なのは、
「不安によって苦しくならないようにすること」

どうやったら、不安に支配されずに、
危険を知らせてくれる不安とうまく付き合っていけるか。
今は「コロナ不安」に限定して、
“我慢するのではなく、不安から自由になる方法”
を考えてみたいと思います。

*ちなみに不安と恐怖は、厳密には異なる感情で、
不安は、将来のことやわからないことに対するもの、
恐怖は、現在進行形の特定のことへ対処がわからない時に感じるもの、
と区別できます。
人間が言葉を得て、想像力を持つようになり、
未来のことや、わからないことへの不安も感じるようになったのでしょう。

不安とのつきあい方:ステップ1[自分の不安を知る]


 最初のステップは、自分の不安について考えてみることです。
まずはできるだけ1人で、30分〜1時間、落ち着いて考えることができる環境を整えましょう。外出自粛で常に家族がいる方は、いつもより少しだけ早起きしたり、お休み前の1人時間を作られるといいでしょう。ゆったり落ち着いた環境で、自分の今感じている不安を「具体的に」書き出してみます。例えばこんな具合でしょうか。

(例)
・自分や周りの大切な人たちが、感染しているのではないかと不安
・自分や周りの大切な人たちが、これから感染するかもしれないという不安
・外出自粛が続き、仕事に支障をきたすことによる、経済的な不安
・子供の休校が続き、子供の成長(勉強の進捗、体力作り)に関して不安
・外出自粛でイライラ、ギスギスが募り、家族が不仲になるのでは、という不安

ここでとても大事なのが、「具体的に」書くことです。
ただ「感染が不安」とか「仕事が不安」「経済的不安」「子供のことが不安」
などと書くよりは、
「誰の」「何が」「どんな風に」不安なのか、
「どんな状態を不安に感じているのか」を、できるだけ具体的に書いてみます。
馬鹿げていても、突飛なことでも、同じようなことが重複しても構いません。
まずは自分が今不安に感じていることを、挙げられるだけ書き出してみましょう。

不安とのつきあい方:ステップ2[自分の不安を分析する]

 次にステップ1で書き出した不安を整理して分析する作業です。
整理するポイントは、
・分類
・期間
・コントロール度合い(自分でどれくらいコントロール可能かどうか)
・周りのサポートや共有の可能性

です。
ステップ1で挙げた不安それぞれをカテゴリー分けし、
想定される問題の期間や、
自分が対処可能かどうか、
周りのサポートや共有が可能か、

について整理していきます。
例えば今回の対コロナ不安では、こんな感じでしょうか。

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分類は、
大分類(現在・未来)
中分類(健康、経済、子供、家族)と分けてみました。
またコントロールについては、
自分の労力や工夫、打つ手など、なんとかできる可能性があるか、それとも
自分たちではどうしようもないものなのか、というものです。
そして周りと共有したり、周りにサポートを求めることが可能か、またそれが有効かどうかについても、◎○×で示しています。
巻末に、白紙のワークシートを添付しています。
よろしければぜひお使いください。

不安とのつきあい方:ステップ3[自分の不安を俯瞰する]

 いよいよ最後はリストを俯瞰し、優先順位と具体策を出していく作業です。
 まずはステップ2のリストを眺めてみます。いろいろな不安がありますね。

こんなに不安を抱えて生活している中、
なんとかここまで来ている自分を、褒めてあげたいですね(^^)。

その中で、何か打つ手がありそうなもの、対処するハードルの低そうなものがありますか。リストに優先順位をつけていく作業です。
この際、自分ではどうしようもないもの、打ち手もなく長期に渡るもの、周りのサポートも受けられそうもないものは、優先順位を下げてもいいかもしれません。優先順位は、緊急度と解決に向けて着手する場合のハードルの高さによって恣意的に判断します。なるだけ着手しやすく、緊急度の高いものから順に優先していくことをお勧めします。
 ちなみに巻末のワークシートをお使いであれば、ステップ2の欄外右側に、優先順位を書いていくといいかもしれません。 
リストに順位がついたら、ステップ3の空欄に、優先順位の高いものから再度書き出します。
たとえば先ほどの例では、高いコントロールの順では、

① 子供の成長
② 家族の関係
③ 健康不安(未来)
④ 経済不安
⑤ 健康不安(現在)

となりますが、
緊急度が高いと思われる
③健康不安(未来)の順位を優先し、

① 子供の成長
② 健康不安(未来)
③ 家族の関係
④ 経済不安
⑤ 健康不安(現在)

としました。

特に優先順位の高いものについて、考えられる打ち手を、できるだけたくさん書き出してみます。こんな感じです。

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不安とのつきあい方:まとめ


 いかがでしたか。今回は私が大学や企業の研修で使うセルフケアのワークを、
ご自分で、短時間でできるよう、アレンジしてみました。実際はもう少し時間をかけて、不安を細分化し、わからないことの中に実はわかることが含まれていることを知ったり、不安なときにやりがちな行動をお伝えしたりします。
今回はご自分の不安を書き出すワークですが、文字として見ることで距離を取って客観視できたり、意外な対処法が見つかるものです。

 確かに不安や恐怖に怯えているときに、
「落ち着いて、状況を分析する」のはとても難しいことのように思えます。
しかしライオンを前にして怯え続けるよりも、
周りに逃げ場はないか、対抗できる道具はないか、を必死で探した方が生き延びる可能性が高いように、
今の難しい局面において私たちは、
力を合わせて打ち手を考え、不安による苦しみを和らげながら、
より良い方向に向かうと信じて、とりあえず進む方が得策かもしれません。 

  不安による苦しみを和らげるのに必要なのは、
・不安を整理する力と
・不安を俯瞰する力

不安の扱い方には様々なアプローチがあります。
わたしが日頃クリニックや企業で接している不安障害の方々は、わけもない大きな不安に苦しんでおられます。
今回はそのようなケースではなく、原因がコロナ関連であると想定される
不安に対するつきあい方のヒントをご紹介しました。
世界中で悲観的なニュースが飛び交い、活動も抑制され、先行きも見えず、皆不安でいっぱいですよね。でも朝は必ず来るように、春も必ず来るように、落ち着く日が必ず来ることを信じて、不安とうまくつきあいながら過ごしていきたいですね。

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