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1日に10回「頭が痛い」と訴える子どもに起きた1年間の変容

水曜日の折り返し地点終了!

筆者はやはり木・金曜日が好き♪

週末に向けてどんどん心が軽くなるから笑

週末までカウントダウン。
明日も気愛で乗り切ろー!!


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教育、人間、人生など、様々な「知恵」や「情報」が詰まった図書館のような、皆さんがくつろぎ、人生の「気付き」を得たり、知的好奇心を満たしたりできる居場所を目指しています😌

どうぞ、ごゆるりとお過ごしください。

共育LIBRARYりょーやん、元教師です。


あなたはLDの子どもがクラスにどれだけの割合でいるかを知っていますか。

LDの症状は、

「読み」「書き」「計算」の3つの種類があります。

その内の「読み」「書き」を組み合わせた症状を、

「発達性読み書き障害」と言ったりします。

正確には、

ディスレクシア(読み)
ディスグラフィア(書き)
ディスカリキュア(算数)

の3つに分かれるのですが、
日本語の特徴から考えると読み書きをまとめた方が色々と都合がよいということで、

発達性読み書き障害というネーミングになっています。

さて、発達性読み書き障害。
そのパーセンテージは、

日本人の8.8%だと言われています。

40人学級で3人
30人学級で2人

といった割合です。

筆者は10年間担任を勤めてきましたが、
毎年1人は確実にLDの子どもが存在していました。

そして、
多くの場合、
LDの子どもは他の神経発達症の症状を併発しています。

ADHDやASDなどですね。

授業でエラーを起こした時に、

フリーズしてしまったり、
机の下にもぐってしまったり、
1人でクールダウンできるスペースに行ったりするのがASDのイメージ。

口を挟んだり、
貧乏ゆすりをしたり、
教室中を歩き回ったりするのがADHDのイメージ。

対してLDは、
真面目に授業を聞いている場合が多い。

学習用具も揃っている。
落ち着いて座っている。
教師の指示にも従っているように見える。

ただ、内容を理解しているかを確認すると、
内容が全く入っていなかったり、
教えた内容とはズレた角度で勘違いして捉えている
ことが筆者の経験上多かったです。

だから、
気付かれずに放置されてしまうのです。

今回は、そんなLDの子どもを受け持った際の1年間の変容を記事にします。

LDは10人に1人程度いるので、
周囲の子ども・大人の中にもいる可能性は高い。

そのような視点で読んでもらえればと思います。



ある年に受け持った3年生24人

ある年に受け持った3年生。

筆者は3年1組の担任+学年主任。

そして、
3年2組の担任は、
4月になっても決まっていない
状態でした。

あと1人の転出入でクラス数が変わるという特殊な状態で、担任不在の状態のまま新年度がスタートしたのです。

ただ、こういった状況は、
学校現場ではあるあるです。

そのことが事前に分かっていた運営サイドは、

「お前のクラスに配慮を要する子どもを集めるから頼む」

というスタンスで、
筆者のクラスに、
特性のある子どもが集まっていました。

以下のような感じです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ADHD症状の子ども 5人
愛着障害の子ども 1人
LD症状の子ども 2人
自閉スペクトラム症状の子ども 1人
場面緘黙の子ども 1人

HSP気質の子ども 4人

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

配慮を要する子ども13人。
(ADHD症状+愛着障害併発の子どもがいました)

配慮を要する子どもが50%を超えている状態。

ただ、
これはそこまでおかしな状況ではありません。

日本LD学会が発表している諸外国の発達凸凹の割合は、1つの学校に15%~20%です。

つまり、
人間は10人中2人は大きな発達凸凹があるのがスタンダードなのです。

日本はなかなか診断をすることに慎重なので、どうしても少ない数として見られがちですが、現場を知っている先生はこの感覚が分かる人が多いです。

特に、
特性を見極める目をもっていればいるほどです。

ということは何が起こりうるか。

授業の1時間1時間が戦闘状態ということです。

多動性・衝動性が強い子どもは教室の四方八方に配置し、お互いが同調・反発し合わないようにする。

LD症状をもつ子どもは教室前方に座らせ、
いつでも支援を行えるようにする。

他にも不安傾向の強い子ども、
自閉スペクトラム症の子どもなど、

コミュニケーションが不得手な子どもが所属する班のメンバーは、流動性を配慮する。

発話が難しい子どもも複数いたので、
指名や発表の形式に気を付ける。

といった形でした。

教師歴9年目だったのでよかったのですが、
新卒3年目までに受け持っていたら確実に潰れていたと思います。

その中にいたのが、LD症状をもつAさん。

彼女に関して、引継ぎは何もなし

しかし、
体調不良を訴える頻度が異常に高く、
1時間に3~5回前に出てきて、
「頭が痛い」
と症状を訴えてくる
様子が見られました。

その度に授業は中断。
他の子どもたちの思考もプツッと切れます。

前の担任の先生に昨年の様子を尋ねても、

「ずっとそんな様子でした」

とのこと。

さてさてどうしたものか・・・。

そのようにモヤモヤした思考を抱えながら、Aさんの行動を観察していくことになります。


Aさんに行ったアプローチ

Aさんの様子をよくよく観察していくと、
その「頭が痛い」という症状を訴えるのは、
算数、国語、社会などが多く、

図工や体育の授業時には見られないということが分かってきました。

ということは、
「学習」に何かを抱えているということ。

そして、
観察を続けると、
LD症状があるということに気付くことができたのです。

例えば、Aさんは以下のような特徴・状態にありました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・漢字テストが毎回0点
・自由記述になるとフリーズする
・国語テストは0点
・九九を覚えられない
・指を使って計算している

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そこで様々な支援策を取ることにしました。

主流なものをピックアップしてまとめていきます。

▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢

❶指書き支援
❷ルビ振り/わかち書き
❸テストを一緒に解く
❹九九表などの外部ツール
❺ノートにあらかじめ問題をかく

▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢

❶指書き支援

指書きのことは以前に記事にしましたので、詳しくはそちらから見てもらえればと思います。

指の平をグッと机の上に押しつけて漢字を書くやり方です。

それに加えて、
Aさんはエピソードバッファというワーキングメモリの長期記憶探索システムに凸凹がある特徴がありました。

つまり、
漢字を何となくでしか思い出せない+思い出す速度がゆっくりなのです。

よって、
漢字の一画目二画目を予めテストに書いておき、
徐々に自分だけで書けるようになるといいねという支援を行っていきました。


❷ルビ振り/わかち書き

ディスレクシアの症状として、
音読が非常に苦手・疲れるという特徴があります。

目の動かし方という視機能の問題。
文字の形を捉える視知覚認知の問題。
ワーキングメモリの思い出す力の問題。

そういったものが関係してくるからです。

よって、
ルビをふって読みを思い出せない部分のカバーをし、わかち書きを入れることで言葉の切れ目が分かりやすくなる支援をしていました。

指で追いながら読むと分かりやすい子もいます。


❸テストを一緒に解く

筆者は、テストの本番中だろうと何だろうと支援をします。

学校において、
テストを行うということは法律で定められていません。

テストはやらなくてよいのです。

テストは、教員が成績をとる材料がほしいからやっているに過ぎません。

テストを授業で行う限りは、
配慮を要する児童に支援をするのは、
教師の責任
です。

よって、支援をする。

まず、テストの問題文を全文読み上げていました。

当然、国語は本文もです。

そして、
テストの解き方自体を授業にしていました。

筆者の勤めていた学校は、
その市の中でもかなり学力が低く、
配慮を要する児童以外にも学習の支援が必要だったのも理由の1つ。

国語のテストや入試には、
解き方に法則があります。

そういったスキルを、
1つ1つ教えていったのです。

読解支援に関しては、
また別の記事でお伝えできればと思います。


❹九九表などの外部ツール

九九を覚えていない子どもに、
九九表を持たせるのは、
必須の支援です。

それに加えて、
筆者が自作した「繰り上がりのある足し算/繰り下がりのある引き算」の一覧表を欲しい子どもには渡していました。

ワーキングメモリの凹みがある分、
外部ツールに頼り、
いつでも思い出せるきっかけを利用できるようにしておくのです。

この足し算や引き算の一覧表を見た6年生の先生方が、

「うちのクラスにもできない子どもたちがいるのでほしいです」

と言ってきました。

6年生です。

そのような子どもたちが複数いる学校でした。

本当に1時間1時間が戦闘なのです。


❺ノートにあらかじめ問題をかく

さらに、Aさんは、黒板に書いてあるものを視写することにも凹みがあるので、写している内に授業がどんどん先に進んでしまいます。

そして、通常よりも視写にすごくエネルギーを使うので、それで疲れてしまい、授業の内容を覚えるどころではなくなってしまう

よって、筆者はノートを預かり、
全ての問題をノートに書いて渡していました。

もちろん、
本人と相談した上で、です。

そうすれば、
問題を解くことだけに集中することができ、
内容を覚えることにフォーカスできるのです。


凹のカバーと凸を伸ばす

不得意分野のカバーをするだけでは不十分。

Aさんの強みを伸ばすことが1番の支援です。

この2つを両輪で進めていく必要がある。

LDの特徴をもつ子どもは、
文字に頼る生活を送るのは疲れてしまうので、
絵、イラストに強かったり、
運動に能力値を振っていたりする
子どもがいます。

美大生の46%がLDというデータもあるので、
視空間に長けているケースが多いのです。

よって、
図工と体育で活躍をさせました。

休み時間は毎日鉄棒を練習し、
一人だけで連続何十回もぐるぐる回転できる状態に。

他のクラスの子どもが集まって来て、

「Aちゃんすごい~!!」

と称賛されるほどになっていました。

図工も絵画はかなり彼女のレベルがアップするような支援を施し、立体は元から得意だったので、それをプロデュース。

そのように得意で自信をもたせ、
不得手で劣等感を抱かせないような両輪で進めていったのです。


Aさんの変容

年度始めは、
がちがちの状態で、
声も小さく、
ほとんどしゃべらなかったAさんは、
よく笑うようになりました。

いつもニヤニヤ笑いながら、
面白いことをしてくるムードメーカー的なポジションになっていったのです。

算数では、
真っ先に計算の答えを黒板に書き、

「わたし、黒板に書けた!」

と休み時間に報告に来る様子が見られるように。

(厳密に言えば、黒板に書けるようにこちらが下準備を整えているからですが)

休み時間には、
筆者の膝の上にニヤニヤしながら乗っかってきたり、

鉄棒パットで何故か筆者のおしりを叩いてくるようになりました。それもニヤニヤしながら笑

元同じクラスの男子には、

「A、全然去年と違う!めっちゃ明るくなった!」

と言われるように。

そして、
授業で「頭が痛い」と訴えてくる数は、
2学期にはゼロ
になりました。

数々の成功体験が、

「自分でもできるんだ」

という自信につながったのだと思います。

3月にはお互いに泣きながら別れましたが、
翌年度も廊下で姿を見かけると、

「あっ、○○先生だ」

と相変わらずニヤニヤしながら近づいてくるような感じでした笑

その姿も、とてもかわいかったです。


まとめ

わたしたちの周りには思っている以上に発達に凸凹を抱えている人がいます。

それは
子どももそうですし、
大人もそうです

私たちの周りの10人に2人は大きな発達凸凹を抱えている

厳密には、
特定の分野に固まっている傾向はあると思いますが。

そして、
LDだったという人は、
幼い頃に「できない人」というレッテルを貼られたまま、大人になった可能性があるのです。

そのような人たちの訴えがあったからこそ、
LDというものの重要性が、ようやく、少しずつ、明るみになってきています。

その人たちの思いを無駄にしないためにも、
LDの子どもを見つけ出し、
適切な支援を行うことができる教育のレベルが、早く浸透していってほしいと思います。

学校だけでは厳しいです。

もっと多くの大人が関心をもち、
外部から関われるようにする必要もあるでしょう。

そうやって、
発達凸凹に関する日本人全体の理解度の底上げを、長い時間がかかっても行っていくことが必要だと感じています。

そのために、筆者自身も動いていきたい。
日々、自分に何ができるかを考えていきたいです。


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