プロは「鉛筆の握り方」から100の分析をする 勉強・運動・感覚の関連性
1週間の折り返し地点。
明日からは週末が少しずつ見えくる。
あともうひとがんばりですね🎵
共育LIBRARYへよくぞおいでくださいました✨
教育、人間、人生など、様々な「知恵」や「情報」が詰まった図書館のような、皆さんがくつろぎ、人生の「気付き」を得たり、知的好奇心を満たしたりできる居場所を目指しています😌
どうぞ、ごゆるりとお過ごしください。
共育LIBRARYりょーやん、元教師です。
よく
「勉強ができる」
「勉強ができない」
という言葉を耳にします。
ただ、その「できる・できない」という状態は、テストや作文などでしか判断されず、その根本となる違いはどこから生まれるのかは、なかなか表面化しません。
実は、小学1年生の段階で、
「勉強ができるための素地ができているか」
は、ある程度決まっています。
だからこそ、小学1年生の
「鉛筆を持つ」
という行為1つに、どれだけの積み重ねが今まで行われてきたのかが現れてしまうのです。
本当のプロは「鉛筆の持ち方」だけで100の分析ができる。
ただ、筆者はそこまでの領域には至っていないので、
「鉛筆をもってノートに1ページ文字を書く」
を付け加えるのであれば、100程度の観点をもって分析することが可能であると伝えることができます。
この記事では、
「人間の発達段階」
「感覚統合」
「ビジョントレーニング」
「LD(限局性学習症)の症状」
などの観点をもって、
「勉強のスタートラインに立つためには、そもそも何が必要なのか」
ということを解説していければと思います。
様々な「気付き」を得るきっかけになる記事にしたいと思いますので、是非、最後までご覧ください。
人間の発達段階の観点
「鉛筆を持つ」ためには、何が必要でしょうか。
「鉛筆を持って文字を書く」ためには、何が育っている必要があるでしょうか。
「鉛筆を持つことができる身体」になっているためには、少なくとも、次のようなことができている必要があるでしょう。
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
◆利き手が決まっている
◆座った姿勢がまっすぐ保持できる
◆手首の返しができる
◆肩、腕、手首、指先を別々に動かすことができる
◆人差し指、中指、親指で鉛筆を握ることができる
◆薬指、小指で鉛筆を握っている状態を支えることができる
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
ここからは、「鉛筆を握る」ために必要な人間の発達プロセスを説明します。
記事全体が長くなり過ぎないように、シンプルに説明させてもらいますので、足りない部分があることはご理解いただければと思います。
人間の発達プロセス
人間の赤ちゃんは、あおむけ、寝返り、うつ伏せ、ずり這い、おすわり、ハイハイ、つかまり立ちと、様々な姿勢を経験しながら大きくなっていきます。
実は、全ての姿勢にその発達段階で積むべき運動要素が詰まっており、これらのことをきちんと積み上げないと、「鉛筆を握る」という行為に影響を及ぼすようになっているのです。
例えば、
あおむけ~寝返り。
これは、身体を上に向けながらも、あごをひいて体幹筋を鍛える経験、身体の中心線(正中線)を認識する経験、ゴロゴロと転がることにより、身体の側面をイメージする経験を積んでいるのです。
身体の中心線(正中線)の形成により、後々利き手が定まります。
体幹筋を鍛えることは、まっすぐな姿勢を保持することにつながります。
身体の側面をイメージすることは、ボディイメージの形成につながります。
ちなみに、ボディイメージが育つと自分の身体を操作する力が向上し、模倣をする力、距離感を図る力、空間把握能力が上がるので、文字の形を捉える力の向上につながるのです。
あおむけの状態でたくさんの経験を積ませることにより、初めて整った状態で次のステージへ進むことができるということになります。
他にも、うつ伏せ~ずり這いの姿勢は、
左右の重心移動を繰り返して進むことにより、身体の中心線、つまり軸の形成がより促進されます。
すると、身体の中心をまっすぐに保ちながら、手を操作することにつながっていくのです。
おすわりは、身体の中心線(正中線)をキープしながらまっすぐな姿勢の保持をする姿勢。
体幹も当然鍛えられますし、中心線をクロスして様々な活動を行うことにより、利き手が定まってきます。
そして、ハイハイは、手の平、手首の発達を徹底的に鍛える行為。
ハイハイをすることにより、肩、膝、腰などの関節の発達も促されていくのです。
このような1つ1つの発達段階で十分に経験を積むことで、
鉛筆を真っすぐな姿勢で持てる
手の五本指の役割が分離できる
手首の返しが発達している
などの、学習のスタートラインに立つ状態が確立されるように、人間はできているのです。
感覚統合の観点
「感覚統合」とは、私たちが日常生活で感じる様々な刺激や感覚情報をうまく処理し、統合する能力のことを指します。
感覚統合の土台は、「触覚・視覚・聴覚・固有覚・前庭覚」です。
この5つの感覚をバランスよく育んでいかなければ、図のようにアンバランスに能力が積み上がるようになってしまいます。
「学習・集中力・情緒・想像」は最上位。
一番下の5つの感覚を十二分に育てていなければ、「学習」にまでは到達できないことが分かってもらえると思います。
感覚統合のことを詳しく解説すると、情報量が溢れてしまうので、簡単にだけ触れておきますね。
固有覚・前庭覚とは?
固有覚とは、身体各部の位置や動き、力の入れ具合などを感じる感覚。
前庭覚は、重力や傾き、スピード、回転などの加速度を感じる感覚です。
では、「聴覚・前庭覚・固有覚・触覚・視覚」の中で最も大切なのはどれだと思いますか。
それは「触覚」です。
触覚は人間の体の中で
「最も大きな臓器」
と言われます。
触覚が働かなければ、
肌が焼けてしまうレベルの温度のものに触ってしまう。
痛みを感じないが故に、高所から飛び降りてしまう。
ということが起こり得ます。
最も人間の生死に関わる感覚なのです。
だからこそ、赤ちゃんの頃から、好奇心の赴くままに、たくさんのものに触らせて触覚を育ませることが大切です。
あおむけ、寝返り、ずり這い、ハイハイなどにより、関節や筋肉の使い方の感覚を会得していく。これは固有覚。
あおむけで揺れる感覚、寝返りの傾き、回転などは前庭覚です。
たくさん話しかける中で、情緒だけではなく聴覚も育つ。
興味関心のあるものを目で追うことによって視覚も育っていく。
そのような土台となる感覚を培った上に、
眼球運動・バランス・姿勢・身体の位置をコントロールする力が育つ。
すると、
ボディイメージの形成、身体の両側統合、注意の持続ができるようになる。
それが、
コミュニケーション、目と手の協調運動につながる。
そしてようやく
学習・集中力・情緒・想像に行き着くのです。
ですので、赤ちゃんからの発達の段階でたくさんの運動を経験しておくこと、様々な遊具や感覚遊び(砂場など)を経験させておくことは、非常に大切なことなのです。
幼稚園、保育園で行われている活動には、全て意味がある。
これまでの幼児、就学児のカリキュラムを築いてきた先代の日本人たちは、これらのことを分かっていたのでしょうか。
今までの教育をつくりあげてきた人々の知恵の結晶である。
そう、筆者は感じました。
ビジョントレーニングの観点
ビジョントレーニングとは、視覚認知の力をトレーニングするという療育です。
「漢字の形を間違えやすい」
「黒板を視写するのが得意ではない」
「読み飛ばしが多い」
「迷子になりやすい」
「探し物を見つけるのが苦手」
などの特徴が見られる子どもに効果的なトレーニングとなります。
私たちは、物事を「みる」という行為1つを、実は、様々な能力を駆使して行っています。
例えば以下のような能力です。
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
◆空間把握能力・・・水平・垂直・斜めなどの形を認識する力
◆図地弁別・・・見るものと背景を分別する力
◆視覚ワーキングメモリ・・・目て見て覚える力
◆衝動性眼球運動・・・物事を固定して見たり、動くものを見たりする目の使い方
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
他にも、
環境や条件が変わっても同じものは同じという「恒常性の維持」も学習には関係します。
これが働かないと、教科書で出ていた計算問題と、テストで出ていた計算問題は同じ種類の問題という認識がなかなかできません。
結果として、授業では分かっているのに、テストは壊滅的という状態が起こり得ます。
また、「部分と全体」という、言葉をまとまりとして捉え、文脈に合った意味理解ができる力も、視覚認知と関係しているのです。
眼球の使い方/視知覚認知
眼球の使い方は様々あります。
眼球の使い方は、赤ちゃんの頃から、眼球運動を促すような環境整備や働きかけを行うことにより、自然と育っていくものです。
つまり、眼球運動も、小学1年生になるまでの積み重ねがものをいうことになります。
赤ちゃんがあおむけの段階で用意する、天井に吊るすモビールも、焦点を合わせてモノを見るトレーニングを行うための玩具です。
そうやって、1ヵ所に視点を集中させるのは固定視。
他にも様々な眼球運動や関連する反応があります。
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
◆追従性眼球運動・・・運筆に沿って眼球を動かす「追う眼球運動」
◆跳躍性眼球運動・・・手元⇔黒板のように離れた場所に視点を移す眼球運動
◆両眼視・・・両目を使ってきちんと視ることができるか
◆前庭動眼反射・・・運動をしながらも固定視できるように視界の補正がかかる反射機能
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
また、物事の形をそもそも正しく認識しているかという「視知覚認知」の力や、目と手を協調して動かす力も、文字を書くことには関連しています。
LD(限局性学習症)の観点
LDは、知的発達に遅れはないけれど、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す状態のことを指します。
かつては、学習障害と呼ばれましたが、現在は限局性学習症という呼び方に変わっています。
LDは、30人学級であれば、3人程度はいるイメージです。
そして、ADHDやASDと、併発している場合が非常に多い。
LD児に見られる特徴として以下のようなものがあります。
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
◆黒板の文字を視写するのが苦手
◆文字を思い出すことに時間がかかる
◆文字の形をうまく認識できない
◆音読の読み間違えや、単語の区切り目が分かりづらい
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
正確には、LDはディズレクシア(読み)、ディスグラフィア(書き)、ディスカリキュア(算数)と分かれているので、上記の特徴は主に、読み書きに関するものになります。
視覚認知(ビジョントレーニング)の力とかなりの重なりがあることに気が付いた人もいると思います。
ビジョントレーニングを行うと、眼球運動が上手にコントロールできるようになり、多少の力は向上しますが、LDの場合、脳の機能の問題でもあるので、根本となる能力が直るという感触はありません。
支援をして本人が学習をしやすく調整はできるのですが、支援がなくなると、元の状態に戻る、といった感じです。
またLD児は、ワーキングメモリの長期記憶から最適な情報を検索して引っ張り出すという能力が弱い特徴が、とても顕著に見られます。
そのような視点は、LD児独自のものとなるでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
「鉛筆を握って文字を書く」
というのは、6~7歳までに歩んできた経験値や育ててきた感覚の結晶であるということが分かっていただけたのではないかと思います。
「人間の発達」
「感覚統合」
「ビジョントレーニング」
「LD」
の1つ1つは、深淵・奥深いもので、とても1つの記事に書き切れるものではありませんでした。
具体的にどうすればよいのか、どのようなトレーニングを積めばよいのか、支援はどうするのか、といったことに関しては、また別の形で記事にできればと思います。
他にも、「微細運動障害」や「発達協調性運動障害」というものもあり、鉛筆を握っても、プルプルとしてしまいギザギザな文字を書いてしまう子どももいます。
とにかく、「人間というのは、百種百様である」と仕事をしている度に痛感されられます。
もし、お子さんや自身のことで、困っているのだけれども、何が原因かが分からないという人は、今回の記事に書いた4観点の視点をもって、分析してみてはどうでしょうか。
また、これからも、様々なアプローチ方法の記事を書いていくつもりですので、それらの記事を参考にしてくださるのもよいかと思います。
教育に関する常識のラインが向上することにより、子どもの困り感にいち早く気付くことができるレベルが上がっていく。
そして、子どもたちに、より豊かで、多様性を認めた未来を示すことができる。
そんな日本になっていけれたらと思っています。
この記事の内容が少しでも「よかった」「ためになった」と思われた方は、「スキ」や「フォロー」をしてくださるとうれしいです!
「コメント」も残してくださる有難いです!コメントを読んだ方々が、より教育についての知見が深めることができる図書館でありたいと思います。
いつもいつも、最後まで読んでくださり本当にありがとうございます!
明日の記事は
まさか不可能でしょ?「叱りゼロ」の子育てを実現させてしまう方法(一部有料)
です。
「叱りゼロを可能にする心理学・学問」の存在を通して、教育について語っていけたらと思います。
是非、楽しみにしていてください🎵
皆さんの今日・明日がよき1日でありますように😊
📘今週のLIBRARYのラインナップ📗
(2023.11.6~11.12)
【月曜日】
意外と知らない「1年で異動してしまう先生」の真相と「学校の職員事情」
【火曜日】
《道徳》教科書通りの授業が失敗する理由 子どもに伝えるべき本当の日本人像とは?
【水曜日】
プロは「鉛筆の握り方」から100の分析をする 勉強・運動・感覚の関連性
【木曜日】
まさか不可能でしょ?「叱りゼロ」の子育てを実現させてしまう方法(一部有料)
【金曜日】
やっている人はもったいない!脳に悪い7つの習慣
【土曜日】
「頭の良さ」は4つの種類に分かれる!あなたはどのタイプに当てはまるか?
【日曜日】
もう古い?年々難しくなる「叱る」行為 そもそも「叱る」は必要か?