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LGBTQセンター「プライドハウス東京レガシー」探訪記〜情報の量と質、ホスピタリティがスゴかった!〜

「見つけた!」
とある施設のSNSを見た瞬間、思わず声をあげました。ウォーリーを探せたテンション。

その施設とは『プライドハウス東京レガシー』。LGBTQ+にまつわる情報発信をはじめ、多岐にわたる活動を展開しているところです。

LGBTQ+について、ちゃんとしたことを知りたい時。理解を深めたい時。ネットや書籍ではなく、誰かに質問したくなることがあります。
そんな私にとって(会社の人事部とかにもそういう方いるかも)、プライドハウス東京レガシーはまさに虹色に輝いて見えました。探してたんです、こういうところを。
しかも、どうやらLGBTQ+当事者の人だけでなく、誰でも無料で利用できるというではありませんか。
ということで、行ってきました。仕事の合間をかいくぐって。

行ってわかったこと。
プライドハウス東京レガシーは、ジェンダーやセクシャリティのことをそっと相談できる保健室でした。
そして、新宿でいちばん読書が愉しめる図書室でもありました。

ぜひ多くの人に(仕事サボってでも)訪れてほしい場所だったので、勝手にご紹介したいと思います。

※なお本稿の写真はすべてプライバシーに配慮し、利用者・スタッフの方の画像は一切撮影していません。

「プライドハウス東京レガシー」とは

プライドハウス東京レガシーは、常設の総合LGBTQ+センター。
公式サイトによれば「LGBTQ+の情報を発信し、安心・安全な居場所を提供することを目的にしている」とのことです。

運営はプライドハウス東京というコンソーシアム。2020年10月11日(国際カミングアウト・デー)にオープンしました。
ちなみにプライドハウス東京は2022年4月時点で、31の団体・専門家、21の企業、20の駐日各国大使館と1つの連合代表部(EU)、アスリートやスポーツ関係者、自治体などが参加しています。オフィシャル感がすごい。

ここではいろいろなことをやっているみたいで。
・居場所づくり
・交流の場
・情報を収集したい人のための情報提供
・イベント開催
・多目的スペースの提供
これらに必要な設備も揃っています。
さらには窓口を設けて相談支援も。いわばLGBTQ+に関する”なんでも駆け込み寺”といったところでしょうか。

場所は東京の新宿一丁目。はい。お察しの通り、新宿二丁目のお隣です。コミュニティとの連携を視野に入れてこの場所に、とのこと。すぐ裏には新宿御苑という風景庭園の名所もあり。なんとも風通しのいい立地にあるなぁ、と。

休館日は水曜日と木曜日。なので、私は金曜日に行きました。
トコトコと階段を上がると。

なんと入館制限中。
「え?どういうこと?そんなに人気なの?」
エントランスは解放感あるガラス張り。それをいいことに、私はドアの外からキョロキョロとのぞきこみ。行儀悪い。不審者まる出しです。

そんな私にもスタッフの方はドアを開けてくださり。
「スミマセン。いつもはこんなに混み合わないのですが、今日はちょっと事情がありまして」
と丁寧にご対応いただいきました。不審者なりにドキドキしていたので、優しい物腰にホッとしました。
「SNSをみて来たんですが、のちほどまたお邪魔してもいいですか?」
「はい。どうぞ」
ということで、私は近くのカフェで時間をつぶし、少し間をおいて出直すことに。

この”事情”とやらを聞いて、私は驚きにひっくりかえることになるのですが、それはまた後ほど。

1時間後。のこのこと再訪した私を、スタッフさんは笑顔で迎えてくださいました。
「あぁ、さきほどの。お待たせしてスミマセン」
「いえいえ。ここの正式名称は、プライドハウス東京ですか?プライドハウス東京レガシーですか?」
という、のっけからそれかい!かつ、どっちでもいいわ!な私の質問にも、
「プライドハウス東京が運営団体名、うしろに”レガシー”がつくと施設名になります」
と、サルでもわかる平易さで説明してくれました。

施設の中はこんな感じ。

「常設の総合LGBTQ+センター」ときいて、市役所のような白く乾いた空間を想像していたのですが、ぜんぜん違いました。
インテリアは木を基調としたデザインで、柔らかく温かい印象。おしゃれなカフェみたいです。
デスクと机は基本的に一人用。誰にも干渉されないけど、振り向いたりおしゃべりしたりはしやすい距離感。そんな配慮を感じました。

静かに読書したり、待ち合わせまでの時間をつぶしたり。読んでるうちに遅刻したり。Wi-Fiもバッチリとんでいるので「ごめん遅れる」の連絡もできそうです(あ。基本的には一人2時間まで)。

信じられる情報がここに。相談窓口、イベントなども。手話・英語対応にも驚き

カウンター周りは、パンフレットやらフライヤーやらリーフレットやらグッズやらがびっしり。こっち見てこっち見てと賑やかです。ちょっとヴィレッジ・ヴァンガードの趣き。
「こんなに?」
そう。こんなにいろんな問題がLGBTQ+にはあり、それを解決・支援しようとしている団体がある。世界は広いんだ、と。私は瞬間的に自分の無知を悟りました。

膨大な情報量にクラッとしている私を見かねたのでしょうか。スタッフさんが案内してくれました。
「ここでは、LGBTQ+に関するいろんな情報発信をしていたりしています。当事者の方はもちろんですが、保護者のみなさんに向けてのもの、スポーツ関係などいろいろあります」

実際、並べられている冊子類は、その内容も多種多様。団体の紹介もあれば、啓発冊子、カルチャー的なフリーペーパー、イベント告知もあります。医療的なもの、書籍のクラウドファンディング、就活なども。まさに死角なし。ほんと、文字通りカラフル。
もちろんいずれも発行者が明確なものばかり。紙媒体の魅力はそこですよね。

信頼できる情報を揃えるだけでなく、悩みや疑問のある方の相談にものっているとのこと。
ジェンダーやセクシャリティの話は、身近な人にだって話しづらいことが多いと思います。とはいえネットの情報は玉石混交。誰かの正解が、自分にとっては誤答であることもしょっちゅうです。

そんな時。いま自分がどんな表情で聞いているのか、話しているのか。何が言葉にならないのか。それを察してくれる人がいると、ファーストアクションは幸先のいいものになるのかもしれません。
歳をとるとわかります。孤独は勇気をくじく。勇気は意外と有限なのです。でも、ここなら報われるかも。そんな予感がしました。

なんてことを感じながらスタッフさんとお話ししているうちに、気づきました。
なんか、私みたいに戸惑っている人への助け舟がスマートなのです。押し付けない。でも、タイムリー。しかも的を得ている。
話しやすさは、すぐに心安さに。そして安心感へ。
私は学校の保健室を思い出しました。
若い人はもちろん、本当は大人にだって、保健室みたいな場所が必要なんですよね。

スタッフさんといえば、私がお邪魔しているほんの小一時間だけでも、手話でお話しされている方や、外国人の来訪者に英語で対応されている方もいて。おぉ。多言語対応の幅が広い。

そこで。ここを訪れてからずっと気になっていたことを質問してみました。

「いつも人数制限というか、満席だったりするんですか?」
「いえ、今日は特別です」
「さっきいた人たちは、学生さんのグループ?ですよね?制服だったような・・・」
「はい。修学旅行でいらしたみたいです」
「えー!修学旅行ですか?」
「はい。勉強にいらして」

修学旅行で来たってさ!
東京への修学旅行って、渋谷とかディズニーランドとかに行くものだとばかり思ってたのですが(いや、あっちにも行くとは思うんですが)。
修学旅行で勉強しに総合LGBTQ+センターへ。すごい、いや、素晴らしい時代になったもんです。おじさんなんて、40歳すぎた今やっと勉強はじめたばっかりなのに。学生さんたちの未来に幸あれ、ですよ。

SOGIE、障害、国籍、年代。その多様性というか、ダイバーシティっぷりに驚きっぱなしでした。

こちらはグッズ販売。売上金は施設の運営資金になるとのこと。とくに風呂敷が可愛かった。

なんとドリンク一杯無料のサービスも。もう至れり尽くせりじゃないですか。
私はほうじ茶をいただき、ズズズ。あーあったかい。ほぇぇぇ。勝手に飛び込んでおいてこう言うのもなんですが、細やかな気配りに感謝。

持ち帰ったパンフレット類です。早くも読み始めていますが、私は「トランスジェンダーのリアル」を非常に興味深く拝読。内容はもちろん真面目なのですが、重くなりすぎないように工夫されており、カルチャー誌としても面白く読めました(「カップルさんいらっしゃい!」最高)。

2,000冊の蔵書。新宿でいちばん読書を愉しめる場所

タイトルを読み連ねていくだけでも、読書になるのでは。
そう思えてしまうほど、プライドハウス東京レガシーには多くの書籍・雑誌がラインナップされています。
それもやはり居場所づくり、情報収集を目的としているから。
室内の三方がぐるり本棚に囲まれており、知の迫力と自由を同時に感じられます。
もちろんすべて無料で閲覧可能。座ってゆっくり読むことができます。

「すごい本棚ですね。これ、何冊くらいあるんですか?」
「2,000冊くらいです」
「はぁ・・・」
ため息しかでません。2,000冊って。開館日に1冊ずつ読んだって、8年くらいかかる計算ですよ(この計算、意味あるか?)。

ここを訪れる人の中には、大きな孤独を抱えている方もいるのかもしれません。
でもときに、孤独を癒すぼっち体験、というものもあり。
「これ、自分に向けて書かれた本だ」
そこから何かが拓けることが、読書の醍醐味だったりするのではと。

何を読んでもとやかく言われない。ほっといてくれる。
誰かが騒ぐ声を窓越しに遠く聞きながら、こちらは知の安全地帯。
束の間でも安心できる一人の時間。一人だからこそ行ける言葉の世界。
ページから目を上げれば、あぁ、読みたい本がまだこんなにある。
読書の愉悦です。

そういう意味では、プライドハウス東京レガシーは、図書室にも似ていました。都会のど真ん中の保健室であり、図書室。断言します。新宿でいちばん読書に没頭できる場所はここ!

本棚は窓際にもずらり。外の喧騒の他人ごと感もいい。ちょっと隠れ家的です。

うっかり見逃してしまいがちですが、足元にもずらーっと本が並んでいます。中には児童書も。

もしかすると、もう絶版になっている本も多々あるのではと。
レインボーフラッグが、プライドハウス東京レガシーらしいですね。

もちろん漫画も。名作揃ってます。スタッフさんのなかに見巧者がいるとみた。

で。入口にいちばん近い本棚には、このようなコーナーも。

「本棚の一番目立つところに、LGBTQ+の"Q+"に関連する本を置いています」
とスタッフさん。

公式サイトでも
「昨今のコロナ禍で、トランスジェンダーの皆さんが、さらなる貧困や、メンタルヘルスの不調など生活上の困難に直面し、社会的な孤立に追い込まれてしまうケースも少なくありません」
「LGBTQなど性的少数者、とりわけ多様なトランスジェンダー、ノンバイナリーや、Xジェンダーの方の生きづらさや困難などへ理解を広げると共に、多様なトランスジェンダーの人たちの「出会う、知る、つながる」交流の場づくりを目指していきます」
とあり。本棚や本の並びにも配慮がなされていました。さすが。先日、トランスマーチを見学した身としては、思うところがありました。
この施設では毎月第1・3火曜日に「トランスデー」を開催しており、他にもいろいろなイベントが企画されているとのことです。

本の背後に目をやると、窓の外はとっぷり日が暮れており。
ここに流れている時間はゆったりなのに、外界の時間はかなり経っていました。逆・精神と時の部屋。
それくらい居心地のいい場所だった、ということなのだと思います。

私は今後、何かわからないことがあったり、イベントごとを探すときには、まずはここを訪れようと思います。
だって、検索ワードの外にある情報がたくさんあるから。嬉しい偶然の出会いが待っている予感がするのです。

ちなみに大阪・天満橋にも似た施設「プライドセンター大阪」があったりしますね。こちらもいつか行ってみたいなぁ。。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

〜参考URL〜

■プライドハウス東京レガシー

■プライドハウス東京


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