フォローしませんか?
シェア
来戸 廉
2024年4月21日 09:33
いつだったか夫に尋ねたことがある。「子供の頃、何になりたかったの?」「古本屋のオヤジかな」 夫は即答した。その姿を想像したらおかしくて、笑いが止まらなくなった。「やっぱり変かぁ?」「いや、あまりに似合いすぎてる」 涙が出てきた。 あら、この本、結構面白いわね。 私は、ページをめくる手を速める。長い看病生活ですっかり本を読む習慣が身に付いた。そのせいか、夫の世界に少し近づいた気が
2024年1月29日 15:23
「かあさん、胃薬なかったかな」 藤田は、妻のかおりに尋ねた。「どうしたの」「どうも胃の調子がな」 藤田は、このところ胃の辺りに鈍痛を感じていた。「猛のところで診てもらったら」「いや、いいよ。それほどじゃないから」「未だまだ、お父さんには元気でいてもらわなくちゃ。猛の結婚も未だだし……」「ただの飲み過ぎだよ」「おとうさんに万が一のことがあったら……」 かおりは、涙ぐんでいる。「