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30歳手前でアートを学びにNYの大学院留学したプロセス全公開 Part 1(入試エッセイも公開)

【有料部分はエッセイ全文だけです!】安心してください

2023.02.14更新
卒業後のことなどこちらで継続的に更新しているのでこちらもご覧になってください!

みなさんこんにちは。そしてあけましておめでとうございます。
ヤミコ(@kurohune538)と申します。
(写真は大学のフロアとハロウィンのときの僕です)

この記事の読者想定
・アートやデザインまたは工学の大学院を検討している(国内外問わず)
・海外の大学院やデザイン・アートの環境に興味がある
・BTC人材やその先のキャリアについて興味がある
・「まだここにない出会い」を求めている

ニューヨーク大学のデジタルアートを専攻する修士プログラム(通称ITP)に合格し、入学しました。そして12月で初めての学期が終わったので、受験期からの振り返りも兼ねて一度まとめようと思い、このブログを書くことにいたしました。

こういったブログを書くのは3億年ぶりくらいなので、マサカリはすべて受け入れるくらいの心意気で書いていきたいと思います笑
是非ツッコミいただきたいです。

タイトルの通り、28歳になる年にアートを学ぶためにNYに留学を決意した経緯を軽く、またその過程のTipsをこちらで共有できたらと思います。
僕自身のバックグラウンドも含めると長くなってしまいそうなので、こちらはまた別の記事にて紹介していく予定です。

また、実際に出願時に使用したエッセイの全文を8校分公開したいともいます(こちらは有料とさせていただきました。応援してくださる方 or 実際に出願を考えている方は購入して参考にしていただけると幸いです)

結果としてはいくつかの合格校の中からニューヨーク大学大学院ティッシュスクールオブアートインタラクティブテレコミュニケーションプログラム / New York University Tisch School Of The Arts Interactive Telecommunications Program(通称ITP, 以下ITP)という英語でも日本語でもクソながい名前の修士プログラム(2年)に入学を決めました。
その他の合格校についても後ほど軽く触れたいと思います。
私は日本で首都大学東京システムデザイン研究科インダストリアルアート学域(現:東京都立大学)というこちらもクソ長い大学院を卒業したので、こういう名前に縁があるのかもしれません。

それはさておき、この記事を書こうと思った経緯としては、昨今noteやYoutubeの普及のおかげもありPhDや海外留学について発信する人は結構増えてきているのですが、アートやデザイン領域における海外進出のノウハウがとても少ないのと、僕自身社会人(当時27歳独身)の留学準備過程において情報収集にかなり苦労をしたので発信することに決めました。(あと友達欲しい)

現在学生の方はもちろんのこと、社会人の方でも留学を迷われている方のちからになれればと思います。また、僕のケースとしてはコロナが蔓延する以前に合格し、渡航までの道のりも険しいものになったので、今の時期だからこその悩みとしても共有できるかと思います。

また注意点としては
・この受験記は私個人の体験に基づくもので、あくまで参考程度にご覧ください。特に今年はコロナの影響もあり、合格から入学までの点は例年に比べるとイレギュラーな部分が多いと思います。
・アートやデザイン、情報系専攻の方とは親和性が高いと思いますが、他専攻の場合は状況が異なる場合があります。

自己紹介

略歴
2020.9 ~ NYU ITP
2018.9 ~ Eukarya Inc. CDO(Chief Design Officer)
2017.4 ~ 2018.8 リクルートホールディングス(現リクルート)入社 (デザインエンジニア/UXデザイナー)
2016.12 ~ DesignCat Inc. CEO
2015.4 ~ 2017.3 首都大学東京システムデザイン研究科インダストリアルアート学域修了(Master of Arts)
2011.4 ~ 2015.3 首都大学東京システムデザイン学部インダストリアルアートコース卒業(Bachelor of Arts)

キーワード
Human Augmentation / Accesibility / UX Design / Interactive Arts / HCI / Media Arts / Computational Arts / Creative Technologist

主に「人体拡張」をテーマに制作・研究活動をしており、人の身体的、心理的拡張をすることで認知や認識を変えるプロダクトや体験を生み、社会実装することに興味があります。といってもいわゆるアカデミックな「研究活動」という意味ではまだぺーぺーなので、ITPではこういった活動を中心に制作活動をしていきたいと思っております。

出願時スペック
英語: IELTS OverAll 6.5(Writing 5.5, Listening 8.0, Reading 6.5, Speaking 6.0)
論文: 国内国外ともに査読付き論文はなし(国内口頭発表、査読なし論文はいくつか)
GRE: なし(後述します)
GPA: 学部2.7/4.0(笑)/ 修士 3.7/4.0
留学経験: 留学と呼べるのはニュージーランドに語学留学1ヶ月のみ(2014)
国内奨学金: なし
学位: Bachelor of Arts, Master of Arts(日本語では芸術工学)
実務経験:
  学生時代インターン5社ほど。自社を立ち上げ。
  デザインエンジニアとしては3年位のデザイン、エンジニアリング社会人経験。
  その後会社立ち上げ&出資を受ける
海外大学院とのコネ: 渡航やメールを通して何人か連絡を取ったくらい
賞・展示など: SXSWにて作品展示(2017) / MashupAward2017 優勝 / 

なぜ今なのか

私が受験を決意したのは昨年2019年の6月ごろであり、そこから英語の学習を始め、10月頃にStatement of Purposeやら出願校の準備に手を出した感じでした。ではなぜ6月に決心したのかと言うと、「30前に世界で挑戦したい」というなんの根拠もない思いが一番強いです。もちろんそれだけではないのですが、自分がやりたいことに一番ハードモードで挑戦するかつ、視野を大きく広げる選択肢を取りたいというのが大きな理由だったため、年齢的には早いに越したことがないと思っていました。

しかし、合格後はコロナの影響もあり、渡航するためのVISAの面接が凍結されたり、授業がフルリモートになるかもしれないという告知があったり、トランプが留学生に対して向かい風となるような措置を取ったりなどと正直迷うことがたくさんありました。

ですが、コロナだからリモートで英語力が伸びないとか、実際にプロジェクトを現地で進められないのでは?というのは正直自分次第でどうにかなるんじゃないかと思い、決行することにしました。(2020/4くらい)
今思えば実際来てみると本当にそのとおりだなと感じており、クラスメイトの中には物理的なものを作る授業であったとしても、リモートでチリや中国にいるメンバーとプロトタイプを作り上げたりしています。

あとは地味に辛いのが時差の問題で、オンラインイベントであっても日本から参加するのは身体的に辛く(おじさん)その点はオンラインとはいえ現地にいる分楽になっています。

海外の大学院に行ってお前はどうしたいの?

すみません、リクルートネタです。
ただ、「お前はどうしたいの?」を自分に定期的に問いかけることはとても意義のあることだなと日々感じています。ありがとうリクルート。

まず僕のリサーチテーマとして「人体拡張」というキーワードがあります。
留学を決意した少し前に、自分の今までの活動や興味について振り返る機会を作り、そこでキーワードになったのがこの「人体拡張」でした。

振り返った際に、このテーマについてどうアプローチしたいかを同時に考えました。僕が今まで作ってきたもののアプローチはユーザーや体験者の常識のベクトルを変えることで、新たな発想や体験を生み出したり、体験者に別の角度から物事を考えるきっかけを与えることに成功してきました。(大きな成功というわけではないですが)
これが僕の原体験であり、やりたいことだと気づいたので、これを言語化しようと試みた際にキーワードに上がったのが「人体拡張」だったのです。

例えば僕の作品の一つにGROOVEという手袋型のダンサー用デバイスがあります。これはダンサーが音楽に合わせて振り付けを踊るだけでなく、その場の盛り上がりや観客との対話をリアルタイムに演者自身が演出に関与できるようにしたデバイスです。これはパフォーマンスのベクトルを変え、新たな表現方法を提示することに成功したと思っています。


「人体拡張」というと国内では東京大学の暦本研究室が一番有名でしょうか。学問的キーワード的にはHuman Computer Interaction、学会ではCHI, SIGGRAPH, UIST, TEIなどが有名だと思います(違ったら突っ込んでください)

ではなぜHCI系研究室ではなく、アートのアプローチを選び、また海外を選んだのか。
なぜNYにしたのかについては詳しく後述しますが、

・HCIとアートというアプローチを多角的な文化圏から観測したかった
・作品やプロジェクトを通じてアカデミアに貢献するアプローチを取りたかった
・自分の通用する領域を日本文化以上に広げたかった
・日本をレペゼンした活動を外国でも行い、日本に貢献したかった

というのが大きな理由です。

当然暦本研究室は今でも僕の中では憧れですし、いつか何か一緒にできないかなとか、PhDとして入学したいなあという希望は今でもあります。暦本研の友人が学会発表などをしている様子を見ているとただただ尊敬と羨望が募るばかりです。

しかし、アカデミアのアプローチをリスペクトしていて、その方法論をアートの中に取り入れていきたいというのが僕の本音であり、必ずしもPhDが必要なのか?という点に疑問はあったため、あくまで国内のPhDへの進学は一つの選択肢と捉えていました。

自身のバックグラウンドでもあるデザインエンジニアリングを主軸に置きつつ、アートの視野と文化的な視野を広げることが最優先事項と考え、海外留学に踏み切った次第です。(文化的な視野とはについては次の章で触れます)

この2年間で、作品やプロジェクトを通して、論文までアウトプットする(できれば査読付き有名所国際学会)ことを一つ目標に置いています。

卒業直後のことはまだあまり考えていませんが、将来的には自身の研究をしつつ、僕のようなアプローチを取っていけるような人と環境を育てていく立場になれたら嬉しいなと思っています。(教えることは大好きなんです)

なぜNY?

次に、なぜNYという土地を選んだのかについて少しお話します。

僕は出願前に30校ほど世界各国から候補をあげました。
例えば
・Politecnico di Milano(ミラノ工科大学 / イタリア)
・Aalto University(フィンランド)
・TU Delft(デルフト工科大学 / オランダ)
・RCA(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート / イギリス)
・CIID(コペンハーゲンインタラクションデザイン / デンマーク)
・Cal Arts(カリフォルニア / アメリカ)
・レンヌ大学(フランス)
などなど...

この中のいくつかの大学を実際に訪問して回ったり、中にいる友人や知り合いを通してお話を聞かせていただき、自分に合いそうな大学を探しました。

私がアートやデザインをする上で

「なぜ私が?なぜここで?」

ということを大事にしています。
いろいろな地域を実際に見て回った理由としては、大学だけでなく、大学を取り巻くエコシステムや社会のカオス性/複雑性とそこに寄与できそうな機会があるかを重視しているからです。

日本人である僕がわざわざ外国の地でなぜそれをやるのか、ということについてはおそらく外国の土地を踏んでいる以上一生問われる問だと思っています。実際に面接でも聞かれました。

なので重視した点としては

1. 民族多様性が多く、常識の変数が多い土地
2. 官民学の連携が多く、課題解決アプローチが取りやすそうな土地
3. 大学の教授やカリキュラムが自分にフィットしていそうか(これは当然)
4. アートの基盤が整っている土地(機会だけでなく、インスピレーションを受けれる場所があるか)

ということで1と4が自分にとってフィットしていそうという点でアメリカはNY、イギリスはロンドンを第一候補群にしました。


なぜ西海岸ではないのか?と思われるかもしれませんが、NYには10を超える世界でも有名な芸術大学や学部があります。さらに、様々なソーシャルセクターと大学間が連携し、プロジェクトやインスタレーションなどを行うことも多いため、圧倒的にNYの希望度が高くなった次第です。

なぜNYU?

ではなぜ最終的にニューヨーク大学(NYU)にしたのか。

言ってしまえば合格できたからというのがもちろんなのですが、他にも合格を頂いたり、NYUに受かったため途中で選考を辞退した大学もいくつかあります。(他大学との比較については後述)

NYUは僕が受けた大学の中で特にテクノロジーへの関心、寄与度が高く、僕のいる学科は特に、ml5.js, p5.jsやProcessing, RunMLなど様々なサービスやオープンソースを手掛けていたり、コンピューターアートをする人ならおなじみのDaniel ShiffmanやArduinoの生みの親の一人でもあるTomas Igoeも教鞭を取っていたりと、芸術・技術・アカデミック・デザインのバランスが取れている大学です。

また、総合大学ということもあり、他学科とのコラボや学科を超えた授業を履修することも可能な点は、もともと総合大学に在籍していて視野の広がりを感じた経験のある僕にとっては大きな決定理由でした。実際にすぐ隣のビルにはNYU Tandonという工学部のビルがあり、学科同士も仲が良いので簡単に授業を取ることができますし、Tandonの中にあるMakers spaceでは無料で多くの機材(3DプリンタやCNCなど)が利用できる大きなスペースもあります。また、他学科の学生とのコラボを前提とした授業もあります。

同じくらいの志望度としてはUCLAのMedia Artsも、総合大学かつ同じようなアプローチを取っているので、両方受かっていたら正直迷っていたと思います笑
UCLAは広大な土地でキャンパスも広いのでいわゆるアメリカンキャンパスライフを送れそうなのは羨ましいです
ただ、UCLAは訪問した際に先生方に質問をしたところによると、卒業後にアカデミックに残り、論文を書いたり研究をしていくような実績は殆どないらしく、そこは少し引っかかりました。

上記の理由で、PARSONSやSVA、RISD、RCAなどの大学は辞退した次第です。

(各大学の詳細や合否については別の記事にて詳しく触れたいと思います)

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その他調べたものの、受けなかった and 訪れなかった大学たち


・ポンペイファブラ大学(スペイン)
・レンヌ大学(フランス)
・西スコットランド大学(イギリス)
・リンツ工科造形芸術大学(オーストリア)
・CIID(デンマーク)
・Design Academy Eindhoven(オランダ)
・Umea Institute of Design(スウェーデン)
・ミシガン大学(アメリカ)
・イリノイ工科大学(アメリカ)
・ワシントン大学(アメリカ)
・スタンフォード大学(アメリカ)
・UCバークレー(アメリカ)
・カーネギーメロン大学(アメリカ)
・コロラドボールダー大学(アメリカ)
・ジョージア工科大学(アメリカ)
・CINCINATI(アメリカ)
・ユトレヒト芸術大学(オランダ)

受験にあたって用意したもの

IELTS

英語といえばTOEFLかIELTSがどの大学も要件に入ってくると思います。
ここで大切なのは

「とりあえずTOEFLっしょ〜」

と受験校を調べる前にTOEFLに絞ることは危険だということです。
理由は簡単で、大学によってはTOEFLのみ、IELTSのみしか受け付けていないということが多いです。ヨーロッパだからIELTSという常識っぽいものも最近では変わってきているみたいです。

もちろん両方の対策ができる人は両方やるに越したことはないです。
しかし、受験料はIELTS1回¥25,000くらいします。僕の場合はいくら社会人とはいえ、これにTOEFLも乗っかり、対策費までかさむとなると流石に時間とお金が足りないと感じました。。。

大学を調べていくにつれて、僕の場合はMITを受けたかったのと(MIT Media LabはIELTSのみ許容だった。今年は両方行けるらしい。)、IELTSを扱う大学に魅力的な大学が多かったため、IELTSに絞って受験することにしました。

IELTSの要求スコアの平均

ArtやDesignのMasterだとIELTSのOA(オーバーオール)は6.0 ~ 7.0あたりが要求ラインなことが多かったです。学部生であれば5.0~5.5でも入学できそうな感じだったので、海外の学部生を検討している高校生はこのあたりを目指してみましょう。(高校生読んでるんだろうか。。。笑)

Computer Scienceの学科だと体感OA +0.5くらいを要求される学校もあるイメージでした。またPhDの場合もOA+0.5要求のイメージです。


一応以下に僕が調べた大学の一覧をまとめるのに実際に使っていたスプレッドシートを貼っておきます。
少し汚いですが、IELTSのスコアの参考にしてみてください(当時のものなので、ボーダーは変わっている可能性があります)

あと、これは噂程度のものですが、他の要素(ポートフォリオやその他の実績など)でカバーできる場合、仮に大学の要求値に達していなくても入試に受かることもあるみたいです。

対策について

日本人での留学のハードル第一位or第二位あたりは英語だと思っています。実際僕もそうでした。

自分のイニシャルの実力を測るために初めて受けたIELTSはOA5.0(2019/6月時点)と結構絶望的な数字で一気に焦りました笑

最終的には上記にもある通り
OverAll 6.5(Writing 5.5, Listening 8.0, Reading 6.5, Speaking 6.0)
を11/23の試験を最後に記録しています。

僕の例を見ると、OA1.5は上げれるということになるでしょう(n=1)

この5ヶ月間の間に行ったことは

・毎月2回、できれば受験する
・DMM英会話のIELTS対策を受ける
・IELTS対策問題集(全体的なやつ)を買い、大枠を理解する
・Writing対策の問題集を買い、反復練習する
・短期IELTS対策プランに課金し、試験のテクを聞く&Speakingの練習をする
・過去問をいくつか解く

です。

毎月2回、できれば受験する

これはとにかく時間がなかったため、期待値を上げたいという一心で課金を覚悟しました。これを反面教師に、皆さんには余裕を持ったスケジューリングをしていただきたいです笑

DMM英会話のIELTS対策を受ける

これはあまり効果がなかったと感じています。30分の中でSpeakingのPartを流して行うのですが、先生たちがあまりプロではなく、対策というよりはGeneralな内容になっており、自分には合いませんでした。
数をただこなす練習という意味では良いのかも知れません。

IELTS対策問題集(全体的なやつ)を買い、大枠を理解する

IELTSの対策オリジナル問題集的な書籍(日本語)はTOEFLに比べると圧倒的に少ないです。
僕が使ったのはこの単語帳と

こちらのブリティッシュ・カウンシル公式問題集です。

どちらも見やすい内容だったのと、対策ポイントが今振り返ってみてもかなり充実していたと思います。
この問題集は試験当日も毎回持っていき、Speakingの試験直前まで悪あがきをするのにも向いています。

Writing対策の問題集を買い、反復練習する

Writingは書店でいくつか眺めた結果こちらの本を購入しました

この本は問題数が多く、Writingのジャンル(環境問題や人口増加みたいなやつ)によってどうアプローチすべきかなどを詳細に説明してくれています。


正直対策が難しいという意味で一番つらかったのはSpeakingとWritingだったのですが、贔屓目なしにこの本と後述する短期プランによってWritingはかなり自信につながったと思っています(お金とかもらってませんよ!!)


短期IELTS対策プランに課金し、試験のテクを聞く&Speakingの練習をする
とは言ってもSpeakingはやはり一人での対策が難しかったため、IELTSの短期対策のようなものでエッセンスと勉強方法だけを盗みに行こうと思い、バークレーハウスというスクールに1ヶ月ほど通いました。

このスクールは手放しに「めっちゃ良かった!!!!」とは言えないのですが、先生が合わなかったりしたときに、伝えればその都度相談に乗ったり、先生の変更をしてくれたりしました。

僕は主にSpeakingとWritingの対策だけをしたかったので、ネイティブの先生のSpeakingとWritingの授業だけを取りました。
Writingは宿題のように解いてくれば、先生が授業前に添削してくれ、授業中ではその対策について一つ一つ解説してくれます。
Speakingも苦手なパートがあればそこを重点的に解説、練習するなど個人の要望に合わせて授業を組んでくれます。

1回だけ日本人の先生のReadingとListeningの授業をとったのですが、そのときには

「ReadingとListeningのコツとか引っ掛けポイントだけ教えて下さい!!!」

という要望をして、テクニックだけを学ぶために使いました笑


過去問をいくつか解く
最後はもうできることがこれしかないという意味で過去問です。
あとはひたすら問題を解くだけです。
過去問にはこちらの公式のものを使いました。
いっぱいあるので、古すぎなければどれからやってもぶっちゃけ良いと思います。

GREについて
さて、IELTSについてはこんなものですが、GREは?と思う方もいるかも知れません。

結論から言うとGREの試験は受けていません。


スパイダーマンのお父さん代わりでもあるベンおじさんも言っていました。

「大いなる力には、大いなる責任が伴う」

そうです、僕にはGREまで対策するのは難しかったのです。

半分冗談ですが、GREを使う大学で行きたい場所があまりなかったという意味で投資対効果の観点で対策することをやめました。

CS系の学科だとGRE必須のところも多いので、そこは注意した方は良いと思います。

Statement of Purpose

一番の関門、Statement of Purpose(SoP)です。

いわゆる「志望動機」です。
各大学における魅力も違えば、行きたい理由も違ってきます。

そのため、当然各大学ごとに書き分ける必要が出てきます。しかし、何校も受ける予定の人にとっては全てのSoPに対して1から作ることはとても大変です。

なので、私は以下の手順でSoPを書きまとめました。

1. 骨組みを作る(共通して言えるやりたいことや将来の目標など)
2. なぜその大学でないといけないのかをまとめる(事前の大学調査をもとに、特定の先生や研究室と具体的にどういったことがしたいのかを書く)
3. 字数によって内容を削ったり増やしたりする

といった感じです。

実際の僕のSoPについては記事の最後に公開したいと思います。(有料)
僕のNYでの生活を応援したいと思っていただけたら購入していただけるととても喜びます。

なので、ここでは概要的にどう行った手順でまとめたかをかんたんに説明します。

1. 骨組み
まずいちばん大事な骨組みです。
これは、自分がどうして今回留学や受験をしようと思ったかを純粋に言語化するところから始めると良いと思います。

なんで受験したいの? / 何を研究したいの?

受験したあとどうしたいの?

日本じゃなくて、違う環境で何がしたいの?

といった感じで、自問自答したり、時には友人や家族に聞いてもらっても良いかも知れません。自問自答だけでは思いつかなかった質問や疑問が浮かんできて、とても良い刺激になります(ただし、本質をつく質問に答えられなかったときはちょっと凹むので、それは覚悟しましょう笑)

質問考えるの難しいと思われるかも知れませんが、やりたいことからブレイクダウンすればそこまで難しくないです。

私は

何をしたいのか

なんでやりたいのか/どのようにやりたいのか

それをすると(誰が/自分が)どう嬉しいのか、どう影響するのか

大学のあとはどうするのか(大学の経験がどう活きると思っているか)

のような感じで考えていました。

この骨組みをもとに、日本語でも英語でも500字程度のものを書いておくと、あとから肉付けしたり、削ったりするのに便利になると思います。

そこで、そもそもSoPってどういうフォーマットで書くの?という疑問が当然浮かんできます。なので、

・ネット上で合格者のSoPを探す
・LinkedInやFacebook, Twitterなどで合格者や先輩を探し、SoPをもらう

といった感じで、SoPとはどういった形で書くものなのかを掴みましょう。

最終的にはもちろん全て英語ですが、思考から英語にする必要はないので、日本語でまとめてから翻訳していく形でも良いと思います。

2. 大学ごとの理由
次に大事なのが大学ごとの志望理由です。

同じような学科や研究だから複数受けるのは当然ですが、全く同じ大学や研究室はありません。したがって、その大学独自の強みとその強みが自分にとってどう嬉しいかを書く必要があります。

僕の場合は

・特定の先生/研究室が行っているプロジェクトや研究に興味がある
・先生のアート・研究テーマに興味があり、自分とのシナジーが明確である旨(具体的に興味を持った作品名にも言及する)
・具体的にどのようなことを先生や研究室と在学中に行っていきたいかを書く
・(字数が余れば)なぜその大学、土地である必要があるのかを追記する

といった形でまとめました。

3. まとめ
この段階で、日本語で書いたものを英語化し、各大学の字数によって内容を増減させていきましょう。

ただし、各大学の字数制限や記載内容要件(こういう内容は絶対いれてくれよな!ってやつ)は書き始める前にまとめておきましょう。

英語の添削どうするの?という点に関してはかなり難しいとは思いますが、昨今ではDeepLGrammarlyなどの翻訳、文法訂正サービスが充実してきましたが、DeepLの翻訳も完璧というわけではないので、ネイティブチェックは骨組み部分だけでも行っておくと良いと思います。

僕の場合は幸いネイティブの友人が手伝ってくれたおかげで、外部サービスを使う必要はなかったので、添削サービスについては他の方のnoteなどを参考にしてみてください。(友人には高級寿司をごちそうしました。本当にありがとう)

Personal History Statement

こちらはUC系の大学で要求されたのですが、SoPで言及しなかった自分の実績や活動についてを書きまとめるものです。

あとでCV(Curriculum Vitae)といういわゆる履歴書のようなものについても触れますが、自分の場合はこの履歴書に載っている内容を深堀りし、SoPで述べた動機にどうつながるかを書きました。

気をつけた点としてはデザインやアートの界隈ではアカデミックでの経験だけでは視野が狭いと感じられる可能性があると思ったので、一つのプロジェクトに対して、アカデミックの観点・インダストリアルな観点・全体のコンセプトを述べるようにしました。

こちらも構成方法としてはSoPと変わらないので割愛します。

Video Essay

Video Essayは要求される大学はそこまで多くないのですが、SoPやPersonal Historyについて語ってくれという内容で1~5分ほどの自撮りビデオを要求されることがありました。

アートの大学だから凝った編集しないと、、、!みたいに思うかも知れませんが、その必要は全くありません。

基本的には自分の口でやりたいことややってきたことを語れるかを見られていると思っています。(SoPは英文校正でいくらでもどうにかなるので)

僕はVideo Essay用の原稿を用意し、なるべく暗記した上で、録画して提出しました。

ポートフォリオ

ポートフォリオはCS系ではあまり要求されない、アートやデザイン系ならではのものだと思います。

特にバックグラウンドがアートやデザイン系でない人にとっては

ポートフォリオ?分散投資の表つくるの?

となる方もいるかも知れませんね笑

個人的にはポートフォリオが合否の中でも大きな割合を占めていると感じています。(入学後もポートフォリオの内容によって奨学金の値段が圧倒的に違う同級生を発見したため)

ポートフォリオの作り方については多くの方がnoteやブログでまとめていたりしていますが、ここでは受験特化用のポートフォリオについて触れたいと思います。

大学によりますが、

1. Webポートフォリオ
2. PDFでのポートフォリオ(いわゆる冊子型)
3. いくつか過去のプロジェクトをピックアップして、画像orビデオ+説明文をアップロードする形

がほとんどでした。

結論から言うと、全くポートフォリオがない人はPDFのポートフォリオを作れば、最低限出願には困りません。

URLを貼ってねというタイプの出願においてもPDFのポートフォリオをGoogle Driveなどにあげて、そのURLを共有することで提出することが可能です。

また、3のタイプにおいて画像をアップロードする必要があるため、画像1枚でまとまったプロジェクト説明のようなものがあるととても便利です。PDFで作っておけばこれを使い回すことができるので、重宝します。
Web版しかない人の場合、レイアウトによってはスクショを撮って上げるだけでは読みづらいものになってしまうことがあるので注意です。

ちなみに僕が受けた大学の中では3のタイプが一番多かったです。

ポートフォリオのフォーマットとしては

・自己紹介(正直なくてもよい&名前などは書かなくても良い)
・5~10個ほどのプロジェクトについて
 ・概要(どんなことをコンセプトに何をしたか。プロジェクトの目的など)
 ・自分はそのプロジェクトにおいて何を担当したか
 ・プロセスや完成物の写真
 ・使用したスキルや技術
 ・受賞した賞や受け取った金額
 ・次のステップ(次がなくても残っている課題やそれに対するアプローチの方法や考察について触れる)

といった形でまとめています。

以下は僕のPDF版のポートフォリオの一例PetaPetaという作品です。
アイデア発案からハードウェアプロトの実装、ソフトウェア一部実装まで担当しただけでなく、実際に静岡県下田市と協力して、「遊ぼう祭」という防災イベントを企画、運営、協賛獲得、PetaPetaの遊ぼう祭向け開発までを行ったので、自分の経験の幅やスキルの幅、制作だけでなく、社会実装を実行するまでの過程を見せるものとして、良い例になっていると思っています。

画像1

インタラクションのある作品では画像ベースでの訴求が難しいと思うので、動画をきちんと編集し、YoutubeやVimeoにアップロードするなどして、採点者が見られる状態を作っておきましょう。

ピックアップするプロジェクトの基準としては

・自分の貢献度が大きいもの
・貢献度は大きくなくても、自分のSoPと紐付いた説明ができるもの(動機につながるもの)
・スキルや経験の幅を見せられるもの(マネジメントの経験だけでなく、実際に手を動かして作品やプロジェクトを遂行したなど)
・制作やコンセプト発案だけでなく、社会にどのような影響を残したか(具体的に得られた賞金や、機会などがあると尚良し)

あたりを気にしておくと良いと思います。

しかし、デザイン学科出身ではない、また制作のバックグラウンドがないけど、デザインやアートを学びに行きたい、という方も多いと思います。
こういう方向けの受験アプローチ方法がググっても出てこないのは一つハードルを上げている要因だと思っています。

実際に同級生や卒業生でもマネジメント出身や、工学出身などの人も多いので安心してください。多くの大学がそういったバックグラウンドの多様性を認めている証拠だと思います。

では、そういったバックグラウンドの人たちはどのようにポートフォリオを作るとよいかについて触れていきます。

これは僕が会社や大学で初学者に教える際にも良く言うのですが、

技術や経験がないときはコンセプト重視で戦うようにすること

がおすすめです。(あくまで個人的な意見です)


もし、学部生や違うバックグラウンド出身で、プロジェクト経験がないという場合には、普段疑問に思っていること(SoPに繋がる内容だと良い)をコンセプトとして練り上げ、それに対する自分なりのアプローチ(自分ならどう解決するか、どんなアイデアがあるのか)をまとめてみましょう。その過程でのラフスケッチもポートフォリオに載せることができます(プロセスを見せることはとても大事です。)

この例では社会や他人にどうインパクトを与えたのかについて述べることはできませんが、自分でどう影響しそうなのかを考察し、次のステップへの示唆として加えることはアピールとしてはとても良いと思います。

またマネージメントやプロダクト責任者のような経験があるという方は、協力してエンジニアやデザイナーなど、他の職種の人たちと制作した過程について触れたものをポートフォリオにすると良いと思います。

ものを作るロールの人がどのようにものづくりをしやすくなるか、またどうプロダクトを良くしてきたのか、そういった意識があることをアピールすることで、ものづくりへの関心や自分の考え方を示すことができます。

正直、技術力的なアピールよりも、関心やコンセプトの強さをアピールするほうがポートフォリオとしては意義があるものになると思います。

技術はなくても関心があるので、それを深堀りしに行きたくて大学を選ぶわけなので、技術のアピールだけでは、正直何がしたいのか伝わりません。

推薦状

推薦状の個数は1〜3通がだいたい基本となってきます。

アカデミックのバックグラウンドがある方からの推薦があることが望ましい(大学の先生など)というのは受験中も良く目にしました。
会社に努めている方は上司の方にお願いしたりすることになると思います。

私の場合は、学部、大学院の恩師の先生(教授2名、准教授1名)にお願いし、推薦書類を書いていただきました。先生たちと仲良くさせていただいてもらっていたことに本当に感謝です。

アメリカやイギリスの大学院(もしかしたら日本以外?)では、推薦書類というのは推薦者が1から学生のために書き、関係性によっては完全に推薦しない内容を書く(本当に推薦したくない学生を推薦して、何かあったら自分が困るため)というのが基本らしいです。日本でもそういった先生もいるかとは思います。

この方式は理にかなってはいますが、日本の文化的には、先生たちになるべく労力を掛けさせないように、大学の教授に推薦書類をお願いする際は、自分でひな形を作り、それを本人に添削してもらった上でその文章をそのまま提出するというのが基本です。(中には1から書いてくれる先生ももちろんいます。)

推薦書はとても大きな力を持っており、中にはこれだけで合否が決まると言っても過言ではないと言う人もいます。なので、推薦者をお願いする際には失礼のないようにお願いをしましょう。

いくらビックネームとはいえ、面識が少ししかないというような人にお願いするよりも、自分のことを本当に知っていて、純粋に推薦してくれる人を選ぶことが大切だと思います。

なので、

・本当に推薦してくれそうな人を選ぶ(できればアカデミア系から数人。志望校の先生が多分一番強い推薦)
・自分でひな形を英語で推薦者の人数分作る(日本の場合)
・推薦者に確認し、修正
・各大学の提出フォーマットに従って提出

という形が基本になると思います。

フォーマット

基本的にはA4一枚に収まる形で300~500字程度が望ましいと言われています。
内容としては

・被推薦者との関係性
・被推薦者との研究やプロジェクトなどの歴
・被推薦者の人間性がわかる具体的なエピソード
・他学生との比較

あたりを入れておくのが一般的です。

僕の場合は推薦者によって評価軸を分けて書いてもらうようにしていました。

例えばある先生には論文などのアカデミック観点、また違う先生には集団プロジェクトにおける立ち回りについてなどです。
先生によって評価軸が違うほうが、評価する側(大学)は多方面での評価がしやすくなると思っています。

提出の際に注意しないといけないのが、先程も述べたように、推薦者が自らの文章で推薦できるようにするため、大学によっては推薦書フォームが推薦者のメールアドレスに直接届くようになっており、受験者の我々は確認できないことがあることがあります。

その際は、フォーマットを推薦者の方に用意してもらうなど、相手に不便がないように、細かなコミュニケーションを心がけましょう。

結果10校ほど出願したため、先生方には10校分の推薦書類をお願いし、かなりご足労をおかけしました。中には提出日ギリギリにお願いしてしまったものもあり、かなりご迷惑をおかけしていたと思います。本当にありがとうございました。

CV

CV(Curriculum Vitae)とは、Resumeまたは履歴書のことです。
アカデミック式のCVの書き方は大方決まっているため、検索すると例が出てくると思います。

基本的には学歴、研究・プロジェクト実績、受賞歴、(会社経験がある場合は)キャリアなどを書く場所です。

アートやデザインの大学では研究やプロジェクト歴について多く触れておくほうが、わかりやすいものになると思います。ただ、大学向けのCVでは、アカデミアの内容が全く無いものは避けたほうが良いので、教鞭歴(大学での教鞭ではなく社内のものでも良い)や大学でもプロジェクトについて触れることが望ましいと思います。具体的なインパクトがわかる数字などがある場合はそれも入れておきましょう(受賞金額や、コンペの参加者数など)

具体的な例として、SVA(School of Visual Arts)の面接ではCVの中の教鞭歴について具体的にどんなことを誰に対して教えたのかということを深堀りされました。(SVAはアカデミアとアートやデザインの両立を志す生徒が欲しいと面接の時に言われました)

奨学金・お金問題

はい、現実がやってきます。

お金問題は避けては通れず、また、準備としてもいち早くしておくべきものの一つです。(なんなら大学調査より前にやっておくべきかもしれません)

僕の場合はその調査が遅れてしまったこと、また27という年齢のため、無利子で取れる奨学金が殆どないという状態だったため、かなり苦労しました。

またイギリスでPhDを考えている場合は奨学金があるかないかで、合否に影響することまであります。

イギリスでGoldSmithとUCL(University College London)の研究室に訪問してPhDを考えていると先生に相談した際に両者ともに奨学金のあてがあるかについて聞かれました。

実際に僕の分野(アートやデザイン)ではさらに取れる奨学金の幅も狭く、年齢の問題と考え始めた時期の問題もあり、JASSOの第二種奨学金(返却義務あり)のもののみ検討することにしました。

今年はさらにCOVID-19の影響で採択後キャンセルになる奨学金や、リモート授業のみの大学には支援できない奨学金などもあったようで、かなり皆さん苦労されていた印象です。なので、COVIDの影響も含め、早めに検討・調査することをおすすめします。

奨学金の一覧に関してはちゅうげんの記事が参考になると思うので、こちらを参考にしてみてください。

また、大学によっては合格後に大学から奨学金付きでの合格がもらえることがあります。僕もNYU含めいくつかの大学が学費半額分の奨学金付きで合格をいただくことができました。

また、複数合格をもらっている場合は奨学金を大学に交渉することも可能です。僕の場合NYUに対して、交渉し、その上で学費半額分になりました。

大学によって学費やその土地の生活費も違うので、その土地の家賃や食費などの生活費を調べておくことも重要です。
NYCに関しては僕に直接聞いてもらえればお答えできると思います😁

また、アメリカに留学する際に注意が必要なのはビザによる就労制限です。
アメリカにPhDで行く際には、大学から給料が出ることがほとんどのためあまり気にすることはないかも知れませんが、僕のように修士の場合でかつF-1ビザの場合は注意が必要です。

会社など、学費を出してくれるスポンサーがついていて留学する場合以外は基本的にF-1ビザでの留学になると思います。

F-1ビザでは原則在校1年目は学内のアルバイトのみ許されています。(NYUの場合時給$15~$20で週8時間ほど)
そのため、生活費をこれだけですべて賄うことは難しいと思ったほうが良いです。

また、在校2年目からはCPTという制度で、学外でのインターンなどの就労が可能になります。こちらは当然会社によって待遇は違うのでなんとも言えませんが、これまではアメリカで「稼ぐ」という行為は原則できないものと考えておいたほうが良いと思います。

そのため、日本にいるうちに

・奨学金やスポンサー、学生ローンなどを見つける
・貯金を作る
・(最悪の場合)親に土下座する

ことが推奨されます。

社会人である場合、学生よりもこの点は有利に働くことが多いと思います。
僕も入試1年前に発起してから貯金や資産増加、奨学金採択に時間を裂き、なんとか2年は生きていけるようにしたので、皆さんも余裕を持った資金プランを早めに検討することをおすすめします。

関係性(コネ)づくり

大学によっては、事前のコンタクトは合否に関係しないと名言されている場合もあるみたいですが、一概に全く関係しないとは言えないので、先生に対して興味がある旨をアピールしたり、プロジェクトについて質問や理議論をするなどのコンタクトを取ることはベターだと思っています。
興味のある先生と議論することで、自分の研究テーマの広がりや、ヒントを頂くこともできたので、合否に関わらず有益なアプローチになると思います。

ここで議論した内容が良かった場合にはSoPにその内容を入れることで、さらなるアピールにもつながると思います。

僕の場合は実際に訪れた先生や先輩方との議論の過程をSoPに混ぜたりもしました。

メールに関しては、当然返事がない教授もたくさんいるので、めげずにいろんな先生方に送ることをおすすめします。

他のメールに埋もれないように
・簡潔に件名を書く(あなたの研究に興味がある旨を伝える)
・自己紹介(入試に興味がある旨)
・やっていること、勉強・研究したいこと(ポートフォリオやCVがあれば一緒に添付)
・先生の研究、プロジェクトのどの部分について話したい・相談したいか(自分の研究と絡めて)
を伝えることが大切だと思っています。

お金や時間がある場合はキャンパスに直接足を運ぶことも、雰囲気を知る上で重要ですといいたいのですが、昨今はCOVID-19によって大学も大学関係者以外は受け付けていない事が多く、また先生たちも大学にいないことが多いので、今はメールでのコンタクトがより重要になってくるかと思います。

可能であればZoomでのお話ができないかをメールでお願いしてみるのも良いかも知れません。
先生によっては大学の実情を具体的に話してくれる先生もいらっしゃいます。僕の学科の場合はTom IgoeやDan’O Sullivanがそういった話を赤裸々に話してくれました。

面接

大学によっては、合格まで面接がない場合もありました(コロナの影響で中止になったものも含めて)

しかし、面接対策を全くしないわけにもいかないので、ここでは聞かれた質問をいくつかあげておきます

・大学に入って何がしたいか
・興味のある先生は誰か
・なぜこの土地でやるのか
・(CV見ながら)教鞭歴について、何を誰にどう教えたのか
・(ポートフォリオを見ながら)このプロジェクトはどういった形で行われたのか、また具体的にあなたは何をしたのか
・(ポートフォリオを見ながら)この研究は誰のどんな問題をどう解決しているのか
・卒業後どうしたいか、アメリカに残る予定なのか
・アカデミアとアートの融合というのは具体的にどんなことをしたいのか

といった感じです。

ポートフォリオに書いてあるじゃん!という内容も当然自分の口でもっと詳しく述べられるかを問われるので、自分のプロジェクトや研究については英語で語れるようにしておきましょう。(原則リモートでの面接なので、かんたんなカンペくらいは用意しても問題ありません)


ここまでが用意するもの&やることです


自分の弱みとの戦い方、社会人で辛かったこと・有利だったこと

私が留学を決意したときの明確な弱みは英語力の低さ(受験歴も0)とアカデミックの実績(国際学会論文など)がないことでした。

英語はほぼ対策無しでIELTSを受験した際にOA5.0(海外大学の学部入試でもだいたい最低5.5はないとダメ)しかなく、いろんなブログを読んでも1年でOA1.0上げるのがやっとみたいな記事もあったりとかなり焦っていました。

では、僕が1年間でどのような軌跡をたどったのかをスケジュールとともに振り返りたいと思います。

スケジュール振り返り
2019/1  来年度受験したいと発起&周りに相談開始 DMM英会話を受講
2019/6  英語の勉強スタート&会社を週2にしてもらう, IELTSスコア5.0
2019/7     IELTS問題集を購入、月に2回受験 IELTSスコア5.5
2019/8     IELTSスコア5.5
2019/9     IELTS特化のスクールに通い始める IELTSスコア5.5
2019/10   各国大学訪問
2019/11    会社を完全に休業&出願準備 IELTSスコア6.5
2019/12   出願準備+出張
2020/1     出願終了+面接準備
2020/2, 3 面接+合格発表

1月~5月
この頃に会社のメンバーに来年受験したい旨とやりたいことを伝え、会社を辞める覚悟で話したのですが、残ってほしいと言ってもらえ、6月くらいから時短で準備をさせてもらうことを決めました。

そのため6月までは業務1本に集中し、自分が抜けたあとのパニックが起こらないように、丁寧に引き継ぎをすることを心がけていました。

受験準備といえばDMM英会話を毎日30分だけやるくらいのことしかしておらず、今思えばもっと早くIELTS対策しておけよと当時の自分に伝えたいです。

6月、7月、8月
ここからIELTS対策に本腰を入れるようになります。
仕事は週2にしてもらい、もう1日は都内の大学の非常勤講師を行っていたため、残りの4日は英語の勉強と大学調査に費やしました。
アカデミックの実績がなかった僕は、どのように大学との関わりを持つかを考え、母校の先生に相談したところ、この非常勤講師を紹介していただき、
IELTSの参考書を買ったのもこの頃です。

9月
ここからIELTS特化のスクールに通い始めます。社会人として有利だった点としてやはりこういったスクールに投資できることがあげられます。スパルタ英会話などの有名コーチング系に比べると割安ですが、とはいえ大学生の時の僕だったら全く視野にも入れていなかったと思います。

また、推薦文の作成もこの頃からはじめました。

10月
この時期に会社の出張も兼ねて、世界各地の大学をめぐりました。約1ヶ月でイタリア、フィンランド、オランダ、イギリス、アメリカをめぐり、先生や滞在している方にアポを取らせていただきました。
このレポートについてはまた別途記事にしたいと思います。
この訪問を通じて、志望校の選定や自分の中の大事にしたい基準などを決めることができました。
英語で会話することがあるものの、正直試験対策ではないので、英語の勉強時間が確保できないことには焦りを感じていました…
こういった仕事のスケジュールが読めないような事態は、社会人として時間確保が求められる中では難しかったと感じています。
一方で出張などの機会は会社や大学にもよりますが、比較的会社員のほうが(私費旅行のしやすさも含め)多いのかなと感じています。

リクルートでは、アルスエレクトロニカや他国のデザインカンファレンスなどに年に1回は行けるような制度がありました。(今はわからないですが)

また、海外支社がある部署のメンバーはよく出張にでかけていたイメージがあります。

11月
実は12月にレバノンとトルコへの出張が決まっていたため、ここでIELTSのスコアを出しておかないと出願に間に合わないという事態になっていました。そのため、この月だけは毎週IELTSを受けるということをやっておりました。

というのも、殆どの大学が1月前または1月はじめに出願期限となっており、そこまでにスコアがある状態にするには最後のチャンスが11月だったのです。
最後のスコアがもう少しでOA7.0に届きそうなところだったので、正直悔しかった部分は大きいです。

ちなみにIELTSは英検、ブリティッシュ・カウンシルなど受ける機関によって日程やスコアの受け取りまでのリードタイムが違ったりします。僕の場合は英検でしか受けませんでしたが、機関によっては毎日開催しているところもあるみたいなので、時間に余裕のない人はチェックしてみてもいいかも知れません。

12月
12月は先程も述べたように、レバノンとトルコへ出張をしていました。ちょうどカルロス・ゴーンが亡命していた1週間前だったことを覚えています。(レバノンがあんなに有名になるとは思わなかった)

この出張はシリア、レバノン在住のエンジニアを雇いに行くためのものだったのですが、この出張についてのレポートもそのうち出せたらと思っています。(現在弊社ではシリア人エンジニアに実際に働いてもらっています)

話が逸れましたが、そのため12月は合間を縫ってSoPやポートフォリオの微修正をし、出願を繰り返す日々でした。

英語の荷が降り、気持ち的にSoPや他の書類に集中できたことはとても楽だったことを覚えているので、皆さんも本当に英語は早めにスコアを取りましょう

焦りに変わるのは精神的に良くないです。

1月
1月の中旬頃から面接の連絡が来るようになるので、面接対策としてどんなことを聞かれるのかや、自分のプロジェクト、やりたいことについて英語で話せるように練習しておきました。

面接のあった大学では、幸いリスニングは得意なため、わけのわからない質問が飛んできた!みたいなことはなく、自分的には拙いなりにも言いたいことは言えたのではないかなと思います。

2月、3月
面接の案内をもらっている中、幸いにもNYUから合格通知をいただき、第一志望群以外の大学はここでうちやめとしました。MIT、UCLAから合格をもらえなかったことは残念でしたが、第一志望群から一つ合格をもらえたことは精神的にかなり安心しました。(各大学の合否については下記)

4月以降~入学まで
ここでコロナが本格化し、4月頃には完全リモートで授業を行うと宣言した大学があったり、アメリカ大使館のVISA発行機関がストップし、9月の頭から渡米するのが難しくなったりしました。
アメリカ西海岸系の大学では全てリモートになる場合VISAの発行すら許されない大学もあったみたいです。

ここで本当に行こうかかなり迷ったのですが、幸いNYUは一部対面やハイブリッド(対面&オンライン)の授業があったため、VISAの発行が許され、10月には渡米できる状態にできたため、行くことを決意しました。

結果的には4ヶ月たった今でも、来てよかったと感じています。
制作に没頭できる環境があるだけでなく、周りの仲間といつでもコミュニケーションできることはいちばん大切だったなと感じています。
正直9月の1ヶ月のオンライン授業のみでは大学にいる実感すらなかったレベルでした。

コロナ下でのこっちの生活についてはまた機会があるときにまとめようと思います。

辛かった点、やってよかった点総評
やはり後悔しているのは英語対策にもっと早く手を付けるべきだったことです。社会人で難しいとしても、どんな形式なのか、テクニック的なものはあるのかを調べるだけでもかなり違います。実際僕はテクニック的なものを知ってからリスニングのスコアが6.0 -> 8.0まで上がりました。

ただ、テクニック的なものは小手先なので、基礎的な英語力を上げるという意味ではやはり時間がかかります。僕のように英語のスコアにギリギリまで悩まされると、精神衛生的にも良くないです。

私は、日々英語を話す機会を作ったり(友人や会社メンバーと)、リーディングのスピードを上げるために英語記事を読むことをしていましたが、もう少し早めに手を付けておくべきでした。少なくとも1年前から試験も意識した勉強をすると良いと思います。

もう一つは良かった点として、大学の訪問をガッツリできたこと。

これは完全に運が良かった&周りの仲間に助けてもらったことが大きいので、なかなかみんなもやってね!と簡単にはおすすめできないのですが、ホームページや周りのブログを見ているだけだと、良い点ばかり浮かんできて実際に訪問した際にがっかりしたことがいくつかありました。

そのためできれば(コロナが落ち着いたら)自分の行きたい大学1つは訪問できると良いです。この先2〜5年そこで過ごすと考えると、1回の訪問の投資は悪くないと思います。

ただ、コロナの現状それがまだ難しいので、できることとして

・日本にいる卒業生に聞いてみる
・LinkedInなどで世界中の卒業生を探す
・在学中の生徒/スタッフにコンタクトをとる(僕に聞いてもらってもOKです)
・在学中の生徒にビデオツアーをお願いする

などでしょうか。


各大学の合否

幸いいくつか合格をいただくことができましたが、当然落ちている大学もあるので、ベンチマークとしてこれくらいの実力の人だという指標にお使いください笑

NYUが決まった時点で残りの大学は辞退してしまったので、合格に行ける実力があったかはわからないのですが、心身ともに疲れていたため、全部最終まで受ける体力がなかったことをお許しください笑

合格
ニューヨーク大学
パーソンズ
SVA(School of Visual Arts)
Pratt

途中辞退(1次通過)

RISD(Rhode Island School of Design)
RCA(Royal College of Arts)
Aalto大学
RIT(Rochester Institute of Technology)

不合格
MIT Media Lab
UCLA

考察
受かった大学と受からなかった大学についてかんたんに考察してみると、

面接
面接でプロジェクトややりたいことについて簡潔に述べることができた実感がある

英語スコア
英語のスコアに関しては要求がOA7.0に対し、OA6.5で出願しても1次に受かった例もあるので、一概に落ちた原因とは言えませんが、UCLAは同じ要件で落ちているので、なんとも言えません笑
一つ言えるのは先述しましたが、足切りではないこともあるので、本当に行きたい大学の場合は思い切って出願してみるのもいいかも知れません。

ポートフォリオやSoP
ポートフォリオやSoPにて自身の経験の幅(アカデミックからインダストリアルまで、またデザインからハードやソフトの実装まで)を見せることや、具体的な興味の範囲を示せたことが合格につながったと考えています。
逆に、MITのような研究軸が大きい学科では、研究計画の甘さがSoPに出てしまい、不合格になってしまったのではないかと考えています。

倍率について
倍率についてはMITのみ30倍超えと教えてくれたのですが、あとの大学は非公開だったため、基本的にはわかりません。SVAの僕が受けた学科は定員20人ほどに対し、NYUの学科は110人と大学によって受入人数も大きく違うため、このあたりは気にしないほうが精神衛生的には良いと思います(僕は全く気にしてませんでした)

今後について

note(もしかしたら自サイトに移設するかも), Youtube, Twitterで制作や学びの還元、また日々の生活の発信をしていきたいと思っているので、是非Twitter(@kurohune538)のフォローお願いいたします!
また、知りたい情報等ございましたらお気軽にリプライでもDMでもご連絡ください!ブログのネタも募集しています!

日本の大学機関とのコラボレーションなどもできたら嬉しいと思っているので、よければご連絡いただけると幸いです。


Twitter: (@kurohune538)
Email: (kurohune538@gmail.com)

さいごに

受験結果を受け取ったときには今頃はコロナも少しは収まってるかなと思っていましたが、コロナは一向に収まらず、悪化しております。

しかし、幸いにもNYUではコロナ対策を徹底しており(2週間に一度の唾液検査、フロア内マスク着用義務、至るところに消毒液)、NYの患者の増加とは比例せず、ほとんどコロナ患者が出ていません。そのため、今でも一部対面授業や制作フロアの24時間開放がされています。

このおかげでクラスメートや先生方とも対面でコミュニケーションをすることができ、機材も申し分なく使えているので、そういった点でもNYUのITPは今オススメできると思います。

そして、こんなわがままな要望を快く応援してくれたEukaryaのメンバー、
推薦文を引き受けてくださった先生方、
一緒に出願を励ましあったリクルート同期でもあるちゅうげん(@ochugn)、
エッセイを隅から隅まで見てもらったクリス、noteも参考にさせてもらった岩渕さん、
実際に大学訪問させていただき、隅々まで案内してくださった方々、
その他大勢の協力していただいた皆さんにこの場を借りてお礼とさせていただきます。

ちゅうげんの記事はこちら(CS専攻でPhDをお考えの方はかなり参考になると思います!)

ここからは実際の私のエッセイを8校分全文公開したいと思います。
出願にご興味ある方、僕にご飯を恵んでくれる方はご購入いただけると嬉しいです!

では以下から実際のSoPの全文です!

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