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オランダの中央銀行がPRIに署名

以下の記事ではオランダの中央銀行であるDe Nederlandsche Bank (DNB)がPRI(Principles for Responsible Investment, 責任投資原則)に署名したことを伝えています。

PRIはその名の通りESG投資を推奨する原則で、年金基金や運用会社といった機関投資家が通常署名機関となります。もちろんESG評価機関など機関投資家以外の団体が署名することもありますが、中央銀行が署名機関となるのは初めてのことです。

ただし外部環境を考えると、署名の好機だったとも言えます。中央銀行は「銀行の銀行」とも呼ばれ、金融システムの監督を重要な役割の1つとしています。その一環として金融機関の健全性を評価しており、その高度化のためにESG要因を取り込み始めています。その代表例として気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Taskforce on Climate-related Financial Disclosure)があります。TCFDは銀行や保険会社の顧客企業の気候変動リスクを明らかにするために、企業に1)ガバナンス、2)戦略、3)リスクマネジメント、4)指標・目標が開示情報、を柱とする情報開示の指針を公表しています。

このような背景でDNBがPRIに署名したことは、オランダが欧州市場においてESG投資のハブとして存在感を強めたいとするような意図があるように思えます。上記のTCFDが英国の中央銀行であるイングランド銀行総裁の提案から検討が始まるなど、英国は欧州のESG投資で中心的な存在となっています。一方で、英国はEU離脱により、その金融業界の存在感も低下すると見込まれています。そこでDNBがPRIに署名し、オランダ国内のESG投資の取組を盛り上げて、オランダを有数の金融、およびESG投資のハブとしたいというわけです。

17世紀にはオランダのアムステルダムが世界の金融の中心地でしたが、それが18世紀にはロンドンに移り、現在に至ります。オランダがそれを取り戻すためにESG投資を推進するという動きは歴史的に見るとより感慨深いものがあります。

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