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何も起こらない探偵事務所

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何か起こりそうで起こらない。事件巻き込まれ体質だけれど特に解決しない社会人探偵と、ワトソン役の従兄弟の大学生がひたすらだべる短編集です。
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【何も起こらない探偵事務所】キャラとコンセプト紹介

【何も起こらない探偵事務所】キャラとコンセプト紹介

大まかに言うと東京のどこかの場末、バーの居抜き物件に住み着いたふたりの男の子が、探偵と助手という設定を使ったり使わなかったりしてダラダラ暮らすだけの短編連作です。設定だけ把握していれば、どれも一話だけで読めます。

キャラ設定砂倉渓一(24)……さくらけいいち。探偵。前髪長めの黒髪、長身。手足が長く視線が鋭いので喧嘩に強そうに見えるが、実際には切羽詰まるとすぐ気絶する。失踪癖と流血癖がある。

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【連載小説】何も起こらない探偵事務所 #1

【連載小説】何も起こらない探偵事務所 #1

「みはる~、助けてぇ、殴られた」

「うん」

 僕は小さくうなずいて、薄闇の中で光る液晶画面を見つめている。
 安いノートPCの画面上にびっしり並ぶ文字の列。そこで展開するのは、この世で僕しか見たことのない、血湧き肉躍る探偵物語だ。

 しかも今はとってもいいところ。
 探偵が真実に近づいたかと思いきや、犯人の逆襲に遭ってピンチになるところだ。

 そりゃあもう、指も胸も躍りっぱなしですって。

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【連載小説】何も起こらない探偵事務所 #2

【連載小説】何も起こらない探偵事務所 #2

「ああ~~いいにおいする、ご飯作ってるの、みはる」

からんころん、古い扉につけたベルが鳴り、のんびりした砂倉の声が響く。

ここは細長いスナックの居抜き物件。
汚くも楽しい、さくらと僕の探偵事務所だ。

僕は小さな台所で湯を沸かしながら言う。

「うん、チョコレートラーメン。もうできるからそこに座って? さくら」

すぐにカウンターの向こう側に肌色の男が座り、僕は顔を上げた。
視線の先には従兄弟

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【連載小説】何も起こらない探偵事務所 #3

【連載小説】何も起こらない探偵事務所 #3

「さくら!! 聞いて、依頼が来たよ」

「そう? すごいじゃん。それはいいんだけどさあ、みはる。化粧落とし持ってない?」

 僕の言うことをさらりと流したのは、僕の従兄弟で探偵の砂倉渓一だ。
 今日は女の顔をしている。

 ……正確には、女性用メイクをしている。唇真っ赤、まつげもバッチバチで左官並みに顔塗ってるタイプのやつ。
 理由は知らない。
 僕が探偵事務所にやってきたときにはこの顔だった。

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【連載小説】何も起こらない探偵事務所 #4

【連載小説】何も起こらない探偵事務所 #4

「みはる。ミイラって食ったことある?」

「あるよ」

「おっと、待って待って。どこで? 博物館? 河童寺?」

 従兄弟の砂倉があっという間に情けない顔になったので、僕はぷうっと膨れて見せた。
 ここはバーの居抜きの探偵事務所。
 事件に巻きこまれがちだが解決しない探偵、砂倉渓一と、従兄弟でワトソン役の僕、三春智史の楽しい遊び場だ。

 小型ノートPCから手を話し、僕は熱弁を振るう。

「いきな

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