熊(鹿)@207号室

城下町金沢の一隅、暗く湿った場所にひそんでいます。 読書が好きです。あまり量を読みませ…

熊(鹿)@207号室

城下町金沢の一隅、暗く湿った場所にひそんでいます。 読書が好きです。あまり量を読みませんが。自分で文章も書ければいいですね。 ヘッダーは厳島の鹿、アイコンは林泉寺の蛙です。

マガジン

  • 日記・雑文

    不定期に更新。旅行の感想、日々考えたことについて。記事あたり2000文字足りない程度、たまに3000字程度のものあります。気持ちはだいたい俯き加減です。

  • 旅記

    旅行で訪れた場所、出会った人、感じたこと、道中考えたこと、深く悩まずに書きます。古い建物に興奮するのでそのあたりの内容が多いかもしれません。更新は年に数回になると思います。SNS上の人たちはどうしてあんなに頻繁に旅行に行けるのでしょうか。うらやましいかぎりです。

  • 読書感想文

    活字本、漫画、アニメ、映画、等々感想を上げていきます。鑑賞経験の共有ができれば嬉しいです。

  • 小説

    制作した小説をまとめます。日記にの代わりにも書きます。

  • 二次創作

    いわゆる二次創作は著作権者のお目こぼしによって存在しています。

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熊(鹿)@207号室 当室のご案内

こんにちは。 207号室へようこそ。 どのような施設を訪ねても、まず入り口には館内の案内があるものです。そばに受付の人が佇んでいることもあるでしょう。ここは狭隘な部屋ではありますが、ありがたい訪問者の方に少しでも親切であろうと思い、ここに案内をかけておきます。 この部屋は文章ばかり転がっています。写真を添えることもありますが、そういったものは不得手ですのであまりありません(眺めるのは好きなのですが)。かと言って文章が得意というわけでもないのが悲しいところです。 1. 「

    • 悠長にちょっと将来の夢の話

       近所の古本屋が閉店した。先々月の末のことだった。そこは、前職を辞めてやったときに無理を言ってアルバイトに雇ってもらった古本屋だった。  閉店は年始少しくらいに教えてもらっていた。正職に就いた後も折々遊びに行き、たまに店の手伝いをしていたのだ。した、というよりさせてもらっていた。このお店のために何かできるということが単純に喜びだった。仕事の内容も箱を作り、本を詰め、運ぶ、そんな淡々と行われる作業は性に合っていると思った。  この店がなくなるとは思ってもいなかった。  高

      • 旅記 帰郷

         明日、どこか行こう。仕事が終わってから唐突にそう思った。ここ最近の馬車馬の如き働きに精神が限界を迎えていた。  先日は高山市一宮、水無神社を参拝したところでした。生雛祭りには毎年多くの参拝客が訪れるといい、古典部シリーズ『遠回りする雛』のモデルにもなりました。(この「モデルになった」という表現には疑問があって、モデルのほうが先にあるのにどうして「なった」とモデル側が変質したかのような言い回しなのだろう。確かに作品イメージが付与されるという意味では変質しているけれど……)

        • 旅記 うだつの上がる町並み

           市営駐車場に車を停めます。時刻は十時を回ったくらい。六十台ほど収まりそうな駐車場は閑散としています。反対側に停まっているキャンピングカーがじっと搭乗者を待っているていどでした。看板地図を見るにうだつの上がる町並みはここから歩いてすぐのようです。ま、さっと一周歩いてしまいましょう。  観光マップも置かれていたので一枚抜き取ります。本当に狭い範囲です。二本の通りを路地がつないでいて、俯瞰すると「目」のような区割りになっています。ぱっと見て「旧今井家住宅」「美濃和紙あかりアート

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          旅記 さわやか・ホテル

           このあと予定がないんです、とおねえさんに話すとさわやかというハンバーグ屋さんを勧められました。とてもおいしいと有名なお店だと。  私もそのとき思い出していました。友人が静岡を訪れるたびに「さわやかを食べて来た」と話してくることを。そのおいしさを目の前で説かれ、いつか食べたいものだと思いを強めていました。いまがそのときなのだ。  時刻は午後四時。夕飯には早すぎるほど早いですが、曰くこれからどんどん混むから並びたくないなら早いほうがいいと。しからば行かん、いざさわやかへ。

          旅記 さわやか・ホテル

          旅記 加茂荘花鳥園・母屋

           アニメ『氷菓』の千反田邸を俯瞰したとき、一番心惹かれたのは塀の中に塀が巡らされているという造りでした。外門をくぐると田んぼ(実際は菖蒲畠)があり、その間を抜けて内門、その中に母屋が建っています。この二重構造は加茂荘でも同じでした。  けれどスケールは加茂荘のほうが大きい。加茂荘は山を背負って建っています。外塀は山と並行して伸びていて、塀は途中で茂みに代わりますが、これがとにかく長い。母屋の敷地の何倍もの土地を囲っている。母屋裏は直接山に続いていたから、境は三方を囲むのみな

          旅記 加茂荘花鳥園・母屋

          旅記 加茂荘花鳥園・温室

           ただ広い駐車場の向こうには山がそびえます。雨で霞む中を雲が低く流れていました。時計の針は十二時半を指しています。小矢部SAを発って五時間、長い運転でした。座席を下げて背中を伸ばして腰を捻り肩を回す。首を前後左右に倒すとごりごりと不気味な音が鳴りました。  雨に当たりながら建屋に駆け寄ります。瓦の大屋根。深い軒の下に「加茂荘菖蒲園」の額が掲げられていました。自動の大きな引き戸をくぐるとすぐ受付兼物販の方がいます。入館料は550円。菖蒲やダイヤモンドリリーの時期はとんと上がる

          旅記 加茂荘花鳥園・温室

          旅記 到着

           ひるがの高原から先は下り道でした。雪景色も姿を消し、郡上八幡を過ぎたあたりから反対の下り車線が混雑し始めていた。海側から郡上八幡へ向かう車列でしょうか。明日の夕方には人流が逆さまのほうに向いていることを願い、まだ走ります。  SAを発つ前にカーナビを設定しました。ここから先、二か所のJCTで高速道を乗り換えなければいけません。  まずは美濃関JCTで東海環状自動車道に乗り換えます。山県・土岐方面へ逸れました。事前にグーグルマップの上空写真で見たときはずいぶん横長のJCT

          旅記 出発

           午前四時を回るほんの少し前に料金所を通過しました。高速道路の車どおりは少なく、代わりにどの車もずいぶんとスピードを出しています。危ないな、と思いながら走行車線をゆっくりと走らせます。ハンドルを操る腕がなんだか、重い。  サイドミラーにライトが反射して、消えたと思ったら追い抜かれていきます。眠気覚ましに口に放り込んだフルーツガムをもぐもぐ。県境のトンネルを抜けて少しすると見晴らしがよくなりました。ここからしばらく、高速道は平地を横切るように伸びています。  変わり映えしな

          探しもの

           用事があって夜の山へ向かった。県境の峠道から脇にそれ、街灯ひとつないうねった道をしばらく進むと尾根に出る。右と左で県が違う。それをまた上がったり下がったり車を走らせる。慎重に。また脇道に入る。谷へと下りる道だ。雨が降って落ち葉で滑りやすい。ゆっくりゆっくり下りる。ふと頭をよぎる。雨とはいえ夜は動物の時間だ。熊や猪が出れば車に乗っていようとひとたまりもない。熊は出ないだろう。彼らは賢いから。猪は馬鹿だから、近くをうろついているかも。  道の終わりに家がある。谷の下っ腹によう

          『愚者のエンドロール』が『毒入りチョコレート事件』を乗り越えるために(『愚者のエンドロール』について)

          米澤穂信『愚者のエンドロール』の大変重大なネタバレを含みます。 「全部?」は誰に向けられたのかアニメ視聴時からずっと気になっていた。 次は原作からの引用。映画の完成試写会後、伊原摩耶花は折木にこう問いかけた。 まとめれば「万人の死角」は全て折木のアイディアかという趣旨の質問、けれど伊原はどうして「全部」と付け足してまで確認したのだろう。「万人の死角」は折木のアイディアか、そうだ、では不十分なのか? 伊原の「全部?」という問いかけはどんな力があったのか? そんなことをしば

          『愚者のエンドロール』が『毒入りチョコレート事件』を乗り越えるために(『愚者のエンドロール』について)

          旅記 古典部と重文と温泉を巡る旅 二日目

           朝はまず入れ替わった温泉に浸かりに行きました。  あがると朝食の時間までに日枝神社を参拝しました。早朝なので誰もいません。神妙な顔をしながら旅行の無事を祈願しました。  旅館の朝食です。朴葉味噌おいしいですし、漬物、あえ物、どれもご飯が進んで結局三杯もいただきました。  お部屋で一眠りしてチェックアウト。  まず向かったのは不動橋。折木と福部がいますよ!  本日は高山の歴史的な建物を見ておこうと、まず向かったのはすぐ近くの宮地家住宅。土日しか開いていないんですと。無計

          旅記 古典部と重文と温泉を巡る旅 二日目

          旅記 古典部と重文と温泉を巡る旅

           先日、岐阜県高山市に旅行に行きましたのでここに雑感を記録します。  写真を貼りますが下手くそなのでだいたいボケてます。悲しい。  友人がしている聖地巡礼と言うものを自分もしてみたいと思い、では手直に高山にしようと行ってきました。古典部です。  山の中を延々と運転すること二時間強。やってきました高山市営空町駐車場。煥章館でございます。内部は山中のロッジのような印象を受けました。こんなところで本の虫になりたかった。  次は「喫茶去かつて」さん。入須と折木が相対したお店です

          旅記 古典部と重文と温泉を巡る旅

          心からではない言葉の位置(『愚者のエンドロール』より)

          日々、心からではない言葉を使う おすすめしてくれたこの本はおもしろかった、ありがとう。そんな言葉を発するとき、私はどれほど本当のことを言っているだろうか。普段から親しく、もしくは本の評価に妥協を許さない相手でない限り、誰であってもそう言うかもしれない。たとえ内心、期待したほどではなかったなどと思っていようとも。  しかし、非常に個人的ではあるけれど、よほどのものでない限り私は読んだ本をつまらないとは言わない。どんな本にだって私の知らない知識や表現が必ず含まれている。一度読み

          心からではない言葉の位置(『愚者のエンドロール』より)

          このお話は終幕のあとで(5)

          ※当記事は米澤_穂信・著『愚者のエンドロール』の二次解釈小説であることをここに明記します。これら記事のいかなる表現、内容も原作者・原作と何等無関係であり、この記事に起因する紛争は全て記事製作者の責任です。著作権権利者、又はnote運営管理者より何らかの要請を受けた場合、一切異議申し立てることなくすぐ従うものです。  店前の通りは川沿いともあって早くも薄暗くなっている。入須とは表通りまで連れ立つことになった。 「ああ、そういえば。うちの部長から苦情がひとつだ」 「なんだ」 「

          このお話は終幕のあとで(5)

          このお話は終幕のあとで(4)

          ※当記事は米澤_穂信・著『愚者のエンドロール』の二次解釈小説であることをここに明記します。これら記事のいかなる表現、内容も原作者・原作と何等無関係であり、この記事に起因する紛争は全て記事製作者の責任です。著作権権利者、又はnote運営管理者より何らかの要請を受けた場合、一切異議申し立てることなくすぐ従うものです。  始業日の放課後、2年F組に入須を訪ねると不在だった。ただ企画参加者たちで完成上映会をしていると聞いて、視聴覚室に向かってみた。結果を言えばそこにも入須の姿はなか

          このお話は終幕のあとで(4)