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『夜の向こうの蛹たち』3人の女性が織りなす、ヒリヒリの心理サスペンス

今日の一冊は、ミステリー作家・近藤史恵さんのサスペンス小説『夜の向こうの蛹たち』

ミステリー小説はほとんど読まないので、近藤史恵さんのことは知らず。本屋をぱやぱや歩いていたら、表紙の柔らかなイラストが目に留まったのです。で、最初のページに目を通してびっくり。

記事を読んでくれている方には、全く関係無くて申し訳ないのですが、そこには、私と同じ思い出を持つ主人公が……!

虫が好きな子供だった。
ダンゴムシを掌(てのひら)に集めたり、カマキリの卵を机の中で孵化(ふか)させて、小さなカマキリを部屋中にまき散らしてしまい、母に悲鳴を上げさせたこともあった。

わかる、わかるよ、カマキリの卵を家で孵化させると大変なことになるのよね。というわけで、気づいたら買ってました。

虫が苦手な方、とつぜん気持ち悪い話を失礼しました。

まぁ、そんなことは置いといて


私と主人公が似ていることなんて、どうでもよいのです。伝えたいのは、何となく手に取った小説の書き出しに、ビビッとくることってありません?ってこと。

作品紹介の前にちょこっとだけ、この「ビビビ現象」を語らせてほしい。

これは私の感覚ですが、知らない作家の中身もわからん本なのに、不思議と目に留まるときは、95%の確率で、その本に「読んでよかった!」ってポイントがある。これ、読書好きさんにはあるあるじゃないだろうか。

読書の習慣を身に着けたいけれど、何を読むべきかわからない人、ぜひ書店をぼけーっと歩いてみてほしい。絵本コーナーから生活実用書までまんべんなく。

きっと、素敵な出会いがあるはず。

さて、『夜の向こうの蛹たち』の話をしましょう


話を『夜の向こうの蛹たち』に戻します。

ダンゴムシ、カマキリと、虫だらけのスタートでしたが、虫の話ではありません。三人の女性を巡る「隣の芝は永遠に青いけど、自分を見失わずに生きるには?」をテーマにした心理サスペンス。

主人公は、恵まれた容姿を持つ小説家の織部妙(おりべ たえ)

物語は、現実に退屈していた妙が、文学賞のパーティで新人作家の橋本さなぎとその秘書・初芝祐(はつしば ゆう)に出会うところから始まります。

妙はレズビアンで、初芝祐に恋心を抱く。そこから退屈だった日常が、じわじわと狂い始めて……。という感じのお話。

正直、物語がドラマチックとか、続きが気になって一気に読んでしまうとか、そういう小説ではなかった。なかったんだけど、読み終わったとき、ふわっと体が浮いたような気持ちがして、ああ、読書したなー、ってなった。

自分の信条とか世間に対するモヤモヤとか、ふだん周りの人間とは話さないような心の奥の奥を、ひっそりと共有させてくれるような、そんな小説でした。


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