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『若きウェルテルの悩み』ナポレオンの愛読書?恋への陶酔と絶望を描いた、ゲーテの書簡体小説

よき心の友よ。もしあなたにもウェルテルとおなじく胸にせまる思いの抑えがたいものがあるなら、彼の悩みから慰めを汲みとってください。また、宿命にもせよ、おのが罪からにもせよ、あなたが親しい友をみいでることができないでいるなら、この小さな本をとってあなたの伴侶としてください。

ひえー!難解だった。約250年も前の小説なのね。

「タイトルだけは知ってる!」って人が多いと思われる、『若きウェルテルの悩み』。

マスメディアの報道に影響されて、自殺者が増える「ウェルテル効果」のもとになった作品です。これで結末が予想できるから書いちゃうけど、叶わぬ恋に苦しみ、最後は自殺してしまうウェルテル青年の話

それだけ知ってたから、「めちゃくちゃ暗そう」って思って手を出さなかったんだけども。「昔はよく理解できなかったけど、今はどうかな?」って、人生の折に触れて読み返したくなる部類の作品でした。ああ、学生時代に出合いたかった。


婚約者がいる女性を好きになったウェルテル少年の苦悩


この作品は、書簡体、いわゆる「お手紙形式」で書かれた小説。主人公のウェルテルが友人に送った手紙を通して、お話を追っていく形式になってます。

内容は、ウェルテルが一目ぼれした「ロッテ」という女性について。

彼女には「アルベルト」という婚約者がいたんだけど、ロッテと出会った当時は旅行で不在。彼が帰ってくる前に、2人はどんどん親交を深めていくの。

でも、そんな幸せな日々も長くは続かない。

アルベルトが旅から戻り、じわじわと心に変化が起こります。なんてったって、毎日、仲睦まじい2人を見なくちゃいけないし、アルベルトがすごくイイ奴というのもやるせない。

人生には「あれかこれか」で解決できることはめったにない。感情と行為のあいだにはさまざまの濃淡の別があって、その段階は、さながら鷲鼻と獅子鼻のあいだにおけるがごとしだ。

鷲鼻と獅子鼻はピンとこなかったけど、まぁ白か黒か、きっぱり分けられないってことよね?あきらめろと言われても、そう簡単じゃないんだよ君、ってことか。世の中はグレーだらけ。

そして、ウェルテルの心を絶望が支配していくさまが描かれていきます。

私の生命を躍動させていた酵母がなくなってしまったのです。更けた夜にも私を緊張させ、朝には眠りから呼び覚ましてくれた刺激が、どこかに失せてしまったのです。

この表現、文学の香りがして素敵じゃないですか?好き。

約250年前の作品!だけど、今も不変のテーマに共感


この作品が書かれたのは、1774年。

日本は江戸時代ですね。『東海道中膝栗毛』の十返舎一九や、『南総里見八犬伝』の滝沢馬琴が生きていた時代。

なので、正直、文章が難解で、ズバっと感情移入はできないかもしれない。でも、その時代背景の違いが、この作品が自殺を誘発するものではなく、孤独の支えになる存在に変えてくれていると思います。

なんだか心に残って、10年後、20年後にふと読みたくなるような、そんな作品だと思う。

途中離脱してもいいから、10代のうちに一度は触れてほしい!


■この本が気に入った方には、こちらもオススメ

周りの誰ともわかりあえない。「自分はひとりだ」と感じたとき、心の友になってくれる作品。ここまで人間の孤独を見つめて、読者に「これは私のことが書いてある」と思わせるのはすごい。

『人間失格』は、紹介記事も書いているので、お時間があればぜひ読んでいってください。


■他にも、おすすめ揃ってます!
『ひきこもり図書館』――古今東西のひきこもりがテーマの作品を集めたアンソロジー。星新一からフランツカフカまで豪華ラインアップ!
『夜と霧』――ナチス・ドイツの強制収容所を体験した心理学者による、人間の心理変化を見つめ、不安との付き合い方を教えてくれる1冊
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