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『ひきこもり図書館』星新一からフランツ・カフカまで。世界のひきこもり作品を集めた、ぜいたくアンソロジー

この図書館の目的は、ひきこもりを肯定することでも、否定することでもありません。ただ、ひきこもることで、人はさまざまなことに気づきます。心にも身体にもさまざまな変化が起きます。そのことを文学は見逃さずに描いています。その成果をひとつに集めたいと思いました。

ふむ。「ひきこもり」と聞いて、あなたがイメージするのはどんな姿でしょうか。学校や会社に行けず、1日のほとんどを、自分の部屋で過ごす姿?

一口に「ひきこもり」といっても、色々な状況が考えられます。

記憶に新しいところでいえば、2020年の4月。多くの人が、未知のウイルスの影響で、ひきこもりを経験したのでは。伝染病もまた、ひきこもりの状況を作り出します。

今回は、あらゆる状況下のひきこもり作品が集められた、『ひきこもり図書館』をご紹介。散文、小説、漫画まで。笑える話、考えさせられる話など、バラエティに富んだアンソロジーです。


全世界から集められた選りすぐりのひきこもりたち


『ひきこもり図書館』には、日本文学だけでなく、外国の作品も数多く収録されています。収録作品はこんな感じ。

◆萩原朔太郎 『死なない蛸』『病床生活からの一発見』
◆フランツ・カフカ 『ひきこもり名言集』
◆立石憲利『桃太郎――岡山県新見市』
◆星新一『凍った時間』
◆エドガー・アラン・ポー『赤い死の仮面』
◆梶尾真治『フランケンシュタインの方程式』
◆宇野浩二『屋根裏の法学士』
◆ハン・ガン『私の女の実』
◆ロバート・シェクリイ『静かな水のほとりで』
◆萩尾望都『スロー・ダウン』
◆上田秋成『吉備津の釜』

記事のカバーイラストに「桃太郎だって、ひきこもる」と入れたように、桃太郎のお話はぜひ読んでほしい。なんだかんだと理由をつけて、鬼退治はおろか、友人の遊びの誘いも断ってひきこもり続ける桃太郎の姿は、クスッとくること間違いなしです。

そのほかの収録作品も、日本近代詩の父と称される萩原朔太郎や、ショートショートの名手、星新一の作品など、豪華ラインナップ。さまざまなアプローチで、ひきこもりが描かれています。

アンソロジーって、ふだんの読書では出会えなかった作家さんに触れる良い機会だと思う。そこから、一生好きになる作家さんが見つかったりするよね。

「さいきん、新規作家さんの開拓をしていないな~」という方、ぜひ。


■『ひきこもり図書館』の次はコレ!おすすめ記事3選
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『か「」く「」し「」ご「」と「』――5人のクラスメイトが持つ、自分だけの秘密。優しさあふれる青春小説
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