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The story of a rabbit and a turtle

 ここはある世界のとある場所。はっきり言えることは、種別の違いなく生命体同士の会話が通用する世界ということである。
 そこではラビットが、まるで地面がゴムまりのように反発させて、飛び跳ねながら素早く前を進んでいると、目の前にはタートルが、ゆっくりと地面をかみしめるようにゆったりと歩いていた。

「いよ。のろのろ歩いている奴がいると思えば、タートルじゃねえか」「ああ、ラビット。いつも馬鹿みたいに素早いわね」
「おめぇさん相変わらずゆっくり歩いてるなあ」「仕方がないわよ、私たちはあなたたちよりも古くからいた爬虫類なんだし。大昔は大きな恐竜ってのがこの世界を支配したっていうそうだけど、今じゃわずかな種類しかいない。いまはあなた方哺乳類の天下になっているしね。それならそれでいいじゃない。もうほっとってよ」と言いながらラビットを無視しようとするタートル。

「おいおい、そんな落ち込むなよ。そりゃあんたらのせいじゃねえし。それに、何だかんだ言って、今もしっかり生き残っているじゃねえか。それにウミガメだっけ?海と往復するあんたの仲間は、卵も含めてたいてい保護されていてうらやましいぜ。
 俺たちなんかよ『ふれあい』という名目でさ、不特定多数の小さな子に餌を与えられたり、べたべた触られたりで、見世物そのものなんだぜ。なんか扱いが低くないか?」
「何言ってんの。それだけ親しまれているんじゃないの。私たちは一部のファンを除いて『気持ち悪い』ってなることが多いし、周りの温度に左右されるから冬は冬眠しないといけなのよ。そもそもあなたたち卵じゃなくて孵化した子供を出しているしね」
 そういうと、再び歩みを始めるタートル。しかしラビットは、さらに絡んでくる。

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「タートルよ。せっかくだ俺と勝負しねえか」「はあ、何?体の硬さを争うの?それなら背中の甲羅で勝てるかしら」
「おいおい、そんな初めから決着ついているのなんてしょうがねえよ。じゃなくてよ。この先にある川のほとりまで、どっちが早いか競争しようじゃねえか」
「何馬鹿なこと!あんたに私が勝つとでも本気で思ってるわけ」
「やってみなけりゃわからねえぜ。もしおいらが途中で事故で骨折するかもしれねえ。またあんたが、何か別の生き物に捕まってもらったらどうなる」

 と何度もしつこく絡むラビット。タートルも困り果てつつ、半ばあきらめた。
「で、私と勝負してどうするつもりよ」「勝ったほうがその日、一日負けたほうを自由に命令できるってのはどうだ」  
「ふう、結局あんたに使われるわけね。でも私の足だと、夜になっちゃうかもよ」「いいよ夜になったら、それはそれで短時間でいいじゃねえか」
「ったく。あんたほんと暇なのね。一体何がしたいんだか。じゃあこれが最初で最後よ」

「オッケー、じゃあ行くぜ。よーいスタート」というとラビットはあっという間に跳ねだした。
「ふう、勝ち目ない戦いが始まったわ」とゆっくり歩くタートル。
「どうせ負けるのわかっているし、でも引き受けちゃったしね」とつぶやきながらマイペースで歩いていく。
 一方で余裕をもって飛び跳ねながら突き進むラビットは、目の前に大きな木があるのを見つけた。
「さて、ちょうど昼寝によさそうな木があるな。ちょっと休憩するか?」と気に近づく。しかしここで頭にあることが浮かんだ。
「ん、まてよ。ここで休憩して俺寝てたら、タートルが抜かして負けてたってオチ。あ、これ十分あり得るな。そうは行くかってんだ。よしそのままゴールへまっしぐらさ」

 一方のタートル。勝敗が決まっているからその後のことを頭に考えていた。「さて、負けたら1日自由にか。多分夜になると思うけど、そのままこき使われるのは癪(しゃく)だからよしてほしいわ。
 あ、ゴールはこの先の川のほとりって言ってたわね。そうだ。川の中のすばらしさを伝えちゃおうかしら。泳ぐことの喜びを提案して、ラビットを川で泳がせるように話をもっていっちゃえ。って、そもそもラビット、あいつ泳げるのかしら」

 タートルはそんなことを言いながらゆっくりと足を動かしていると「おう、タートル姉さんじゃねえか」との声。振り返ると、そこにいたのはアリゲーター。「あ、なに怖そうなのが来たわ。私を食べよってんじゃないわよね。甲羅硬いわよ」「心配するなよ、姉さんなんか食べねえよ。というよりさっきから必死に歩いているけど、どうしたんだ」「ああ、そんなに必死に見える?実はね」

 と、タートルはアリゲータにラビットと競争していることを伝えた。「ったく、姉さんもだけど、ラビットもしょうがねえやつだな。そうだ、なら俺の背中に乗っていくか」「え、でもあんたも予定あるでしょ」「ああ、実はこの後、クロコダイルの野郎とどっちが強いか対決することになっているんだ。決戦場所が、ちょうどあんたらがゴールする川のほとりってわけだ。どうせ行くから、あんた運んでいくぜ」「え、いいのかしら? 見返り期待しないでね」「姉さんわかってるよ。大体俺たちは同じ爬虫類じゃねえか。ちょっと偉そうにふるまっている哺乳類ラビットの野郎に好きにさせてたまるかってんだ」「ほんとに、助かるわ。今からじゃ遅いかもしれないけど、あんたと来たら、ラビットビビるかもしれないしね。ホッホホ!」
 
 そういうとタートルは、アリゲータの背中によじ登った。アリゲータはゆっくりと歩き出す。それでもタートルが歩くよりははるかに速い。「姉さん、知ってるかい?あの木の横にせせらぎがあること」「え、知らなかったそれ便利いいわね」「だろう。そこから水中を経由すれば、ずいぶん距離を稼げるぜ」そういってアリゲータは、木のほうに向かった。そしてすぐ横を流れるせせらぎに入ると、泳ぎだすアリゲータ。その速度は一気に加速した。

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 一方で休憩なしに飛び跳ねたラビットは、早くもゴール地点に迫っていた。「こりゃ楽勝だな。ゴールまであと5メートルってとこか。ここなら大丈夫だ。ならちょいと休憩するか。ここならタートルの足跡が聞こえれば、ひと跳ねすりゃ。一瞬で勝てる。ゴールで来るの待っているより、ギリギリのところで勝利したら、絶対かっこいいよな」
 と言って休憩するところを探すラビット。「お、この岩のところがいいぜ。コブたいなのがついてりゃ。ちょっと頑張りすぎて体凝ってるから、マッサージも期待できるわ」と、そのコブみたいなところに背中を持たれかける。そしてラビットはそのま昼寝した。

 そのころアリゲーターが水中を高速で泳ぐと、間もなくゴール地点に近づいた。「よし、ここで地上に戻ろうか」と言って水中を出た。するとアリゲータは、ただならぬ殺気を感じる。「もう、あいつ来ているな」「え?」「ああ姉さん、クロコダイルの野郎だよ。ちょっと気合を入れる。姉さん、も間もなく背中から降りてもらったほうがよさそうだ」

と同時に、対決相手のクロコダイルもアリゲータの存在を感知した。実はそれまでゆったり昼寝していたが、殺気を感じるとついに目覚める。「ようやくきやがったな。じらせる作戦。宮本武蔵の真似事のつもりだろうが。そうわ行かねえぜ。あれ?うん、誰だ!俺様の尻尾で寝ている奴は」と同時にしっぽを大きく振り回す。「ギャー」それはラビットの声、あろうことかクロコダイルの尻尾を背にして寝てしまったのだ。

 川のすぐ手前に放り出されたラビット。そこはゴール地点から少し離れていた。思わぬ相手に全身が震えだす。
「おのれ、こりゃアリゲータの前に、先に貴様を血祭りだ」
「お、お許しください」と震えながら謝るラビット。「黙れ!よりによって俺様の体で寝ているとは、許さん!」

 そういってクロコダイルは顔をラビットに向ける。しかしラビットは素早くその場から立ち去ろうとする。だが逃げる方向にあるのは川「え?おいら泳いだことねえ。ど、どうしよう」と一瞬迷うラビット。すると見た目よりも素早いクロコダイルは、そのすきを見逃さない。後ろに向いて先ほどの長い尻尾をラビット目掛けて降りだすと、ラビットに直撃。
 それで足が一瞬にして負傷し、動けなくなる。「ひ、ひえええ! あ、いや、す、すみません」と何度も謝るラビット。
「ふん、ちょうど良い。腹が減っては戦ができねえっていうからな」と言ってラビットに襲い掛かろうとする。

 ここで「待ちな」とは、アリゲータの声。「ち、来やがったか。遅い奴め。ふん、こいつはどうでもよい」とラビットから視線をアリゲータに合わせるクロコダイル。「おう、かかってこい」とアリゲーターも戦闘モード全開。
 そのままタートルを背中から降ろすと、ゴール地点のすぐ目の前で二匹の戦いが始まった。
「ラビットケガしてあんた大丈夫?」心配そうにラビットに声をかけるのは、タートル。「い、いやおいら油断しちまって、まさかクロコダイルの尻尾とは」「馬鹿ね。アリゲータいなかったら今頃あんた」

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 目の前では二匹の戦いが続いていた。ラビットもタートルもその戦いの様子を少し離れたところで見守るしかない。さてどのくらい時間がたったのか? 決着がつかず、お互い体が傷だらけになっている。
 ついにこのままでは負けると先に悟ったのはクロコダイル。
「け、いい加減疲れてきたぜ。目の前のラビットの相手もしたからな。アリゲーターよ、良ければこの対決後日にしねえか?」
 すると同じく疲労困憊のアリゲータ。「ああ、あのタートルおぶってきたからこっちも疲れたぜ。よかろう。一旦仕切り直しと行こうじゃねえか」と、対決の中断を了承した。そのあと二匹はそれぞれ川に入り、反対方向に泳いでいった。

 残されたのはラビットとタートル。「イテテテ、足ケガしちゃった」
「じゃあ私たちの対決も無理ね」「いいよ、あんたすぐそこだ。チャンスだぜ」「ええ、でもそれはちょっと」
「何でだよ、足負傷しちまったのはおいらの不注意だ。こればかりはどうしようもね。あんたの勝ちが決まっているというのによ」
「そんなのいいのよ。それよりもその傷をいやさないと」
 そういうとタートルはラビットを甲羅の上にのせ、そのまま所定の位置にゴールした。
「アリゲータとクロコダイル同様、対決はお預けでいいじゃないの。その草むらに傷がいやせる薬草があるわ」
「おめぇさん優しいな。本当に申し訳ない」と言って、タートルに薬草で癒してもらった。

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「いやあ、ありがとう。おかげでゆっくりだが歩けそうだ。この恩は忘れねえぜ」「無理しちゃだめよ。じゃあね」
「あ、最後に行っておくぜ。おいらあんたの心意気には感服した。この対決でも負けを認めるぜ。傷が完治したら、一日何でもおめえさんのいうこと聞くぜ」
「え、本当にいいの。わかったわ。じゃあそのときね。だったら川を泳ぐ練習でも依頼しようかしら」

 こうして、ラビットはタートルの前をゆっくり歩いて去って行く。タートルはそれを見つめると「今日はいろいろあったわね」とつぶやくと、そのまま川の中に飛び込むのだった。



こちらの記事をもとに書いてみました。

 こちらで、砂男さんが「うさぎと亀」の物語を書く場合は、人によって書き方が違うということ。それで「どう書きますか?」との問いで終わっていました。
 そこで私が改めて大まかなストーリを残しつつ、独自の解釈を巻き込みながらこの作品を創作したということです。


まだ間に合います。10月10日まで募集しています。
あと4日を切りました。よろしくお願いします。

こちらは97日目です。(あと3日)

第1弾 販売開始しました!

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シリーズ 日々掌編短編小説 262

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