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HIJIKI 第964話・9.15

「うわっ、ベンツかしら? 何か凄い高そうな車が通り過ぎたわ」私はその車だけでなく、その座席に座っている令嬢のような女性を見てため息をつく。「年齢は近そうなのにに、向こうは大金持ちで、こっちは......」そう思うとまたため息が出る。

「考えても無駄、やめておこ!」ため息は出るが、すぐに立ち直るのが私の得意分野かもしれない。なぜならばいくら金持ちでも悩みはある。それでずっと悩んで無駄な時間を費やすくらいなら、少しは落ち込んでも立ち直った方が良いに決まっているのだ。

 こうして気を取り直した私は、今日のご飯を買いにとあるスーパーに来た。「さてと、何食べようかなあ」と思ってみていると、目の前に「広告の品・奉仕品」と大きく書かれている商品が視線に入る。
「あ、それって」わたしはその商品を見た。そこにはパック詰めされた黒い食べ物がある。「ひじきかあ」私は心の中でつぶやきしばらく考え込む。「あんまりこういうの食べないけど」と思いつつ、気が付いたらひじきのパックを手に持っていた。「視線に飛び込んだということは、これを食べるべきだ」と、勝手に解釈してスーパーの籠に入れる。もちろんひじき以外にもいろいろ買ったが、ここでは割愛しておく。

 こうして私は家に戻って、スーパーで買ってきたものを並べる。やっぱりこの中で気になったのはひじきだ。パック詰めされたひじきには「ボイル」と書かれている。「普段買わないもの買っちゃったし、どうしたものか」買ってしまってから私は少し後悔した。普段食べないひじきを買ったのは良いが、果たしてひじきをどうやって食べるのが良いのかよくわからない。

「まあ、これがあるから」私はスマホでひじきのレシピを探す。
「そうか、ひじきは煮物で食べるものか、面倒だなぁ」私は煮物はあまり食べない。まったく食べないわけではないが、積極的に食べようとは思わないのだ。なぜならば一度煮物を作って失敗したことがある。

「危うく火事になるところだった」煮物を作っているのに、鍋に火をつけていることを忘れてしまった。何か焦げたにおいが部屋にするものだと思ってキッチンに行ったら、煮物の汁が無くなり、鍋の底はどす黒く焦げている。その上にある乾燥したような食べ物も、確か3分の1は焦げていたはずだ。

 だから煮物は極力食べない。食べても出来上がっている物をレンジで温めるくらいだろう。

「煮物以外に何かないかしら」私はひじきを煮物以外の方法で食べることを模索する。すると同じようなことを考えている人はいるようで、煮物以外のひじき料理のレシピを見つけた。
「サラダか、これは楽でいいわ」こうして私はひじきのサラダを作ることに決める。

「え、ひじきって戻すの?」私はひじきのことを本当に知らない。だからひじきは乾燥したものが売られていて、それを戻す作業などが下準備で必要と、レシピに書かれている。
 だけどこれは乾燥していないボイルしているもの。つまりレシピある下準備の必要がない。「ラッキー!」私は心の中でガッツポーズをした。

 ちなみにこのレシピはひじきを戻して、柔らかくしたものに、キュウリなどの野菜を合わせてドレッシングで合えるだけのようだ。私は冷蔵庫を見る。「あ、あった」私はキュウリを見つけた。それも少し乾燥しかけており、あと2・3日もすれば食べられなかったかもしれないきゅうりである。
 つまりきゅうりが使えるまたとないチャンス。

私はキュウリを細切りにしてボウルに入れる。そのあとパックのひじきを入れた。それを混ぜた後に、冷蔵庫に入っていた甘酢味のドレッシングを振りかける。
「あとは混ぜて完成!」あっけなくひじきのサラダが出来てしまった。

 さっそく私はひじきのサラダでご飯を食べる。ひじきのサラダに、インスタントの味噌汁、白ご飯、あとはこれもパック販売していたサバの焼いたものと一緒に食べる。他の物はともかく、今の私はひじきに注目した。
「うん、まあ無難かな」私は口を動かしながら飛び切りおいしいわけでもないが、かといって不味くもないひじきを食べる。ここでひじきとは、そもそも何物なのか気になった。

 食事の途中であったが、気になると調べたくなる私は、さっそくひじきを調べる。「え?ホンダワラ、なにこれ」いきなり聞きなれないキーワードが出てきて私は戸惑ったが、さらに調べると褐藻(かっそう)というもので、わかめや昆布、モズクなどの仲間だとわかった。
「そっち系だったのか」私はひじきがどういう食べ物かもわからずに買ってきて食べたが、ようやくその正体を知って納得する。あとは残りを平らげた。

「今日は一瞬へこんだけど、ひじきというものを知る機会になって良かったわ」私は食事のあとに、テレビをつけて画面を見ながらそう考えている。

 だが、ひじきのパックはひとりでは食べきれない量であった。このときは食べたが、その後別のことに関心が言ったため。私はひじきの存在を忘れてしまう。忘れ去られて冷蔵庫に入ったままのひじきは、そのまま長い月日が過ぎ......。


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シリーズ 日々掌編短編小説 964/1000

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