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長編

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複数編の怪談です。一編の長さは中編と同等か若干長いです。
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#長編小説

ムシ ムシ ムシ  第一話

ムシ ムシ ムシ 第一話

※今作品には多種多様な昆虫が登場します。それに伴って昆虫の詳細な描写、また、残酷な表現が多く描写されます為、読まれる場合は注意をお願い致します。🐝
※今作品に登場する地名、建物名などは実際の人物、団体等と一切関係はございません。🐞
※あくまでフィクションとしてお楽しみください🦋

第一話 序章 石化した珊瑚、或いは長年の雨風によって風化した岩石にも似た大小様々な無数の穴。その穴の数よりも圧倒

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校舎内の禁足地 七

校舎内の禁足地 七

人柱。
それはかつての因習でしかなく、現代では合理性も化学的根拠も一切無いけれど、アステカ文明やたった50年程前の日本においても行われていた儀式。どれだけ尽力しても叶わず、神か悪霊か、そのどれでもない何かに祈りと命を捧げていていました。勝利、五穀豊穣、安全祈願だけに留まらず時には契約として。
そんな代物に自分の家族が関わっているとしたらどれ程の衝撃でしょうか。
あくまでも可能性の話だよと黒田さんは

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校舎内の禁足地 六

校舎内の禁足地 六

私の頭の中には疑問符しかありませんでした。関わっているどころか、最早渦中のど真ん中、大元だとは思いもよらなかったからです。ありきたりな名字ですから、他の長住の可能性もあるかと必死になって地図上に長住の文字が無いか探しました。でもどれだけくまなく探しても他に長住の文字はありません。
「なんで長住さん家はこんなとこに建ってるのかな。あんまり良い理由は無さそうだけど……」
田添君が言う様に中洲には長住の

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校舎内の禁足地 五

校舎内の禁足地 五

週末にまた公園で会う約束をし、そして約束通り昼過ぎに黒田さんはやってきました。三人で藤棚の下のベンチに腰掛けて、自販機で買ったコーラを飲みます。本来なら子供である二人を巻き込まずに解決したいところですが、校舎に入ったり他の子から噂を集めるのは黒田さんには難しいでしょう。週末に集まって情報を共有し、開かずの廊下が何なのか突き止める事。現状出来るのはそれくらいだとこの時は思われました。長住さんの祖父に

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校舎内の禁足地 四

校舎内の禁足地 四

菊池君と久保君とは席が隣で、私が真ん中でした。久保君が運ばれて菊池君が急な休みになってから両側が空席で、気が気じゃありませんでした。名前を呼ばれてはいませんが私も声を聞いていましたし、翌日普通に授業を進めようとする先生達が何かを隠していることは明白でした。深淵を覗けば…ではありませんが、私達子供が関わらない様にする必要があったのでしょう。じゃあ何でそもそも3階ごと、あるいは建て直したりをしなかった

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校舎内の禁足地 三

校舎内の禁足地 三

彼の名前は久保君と言います。くぼではなくひさよしと読みます。久保君はクラスの中でも比較的大人しめで、きちんと会話こそするものの休み時間には外で遊ばずに読書に耽る様なタイプでした。彼と話したのは噂が流れ始めてからで、それも「僕も聞いたよ、僕の名前を呼んでたんだ」とたったそれだけでした。その彼が、本当に呼ばれてしまったんでしょうね。真似をした訳ではありませんが、私もパクパクと口を開けて驚き呆けて立ち尽

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校舎内の禁足地 二

校舎内の禁足地 二

誰かのイタズラだと思うのが普通だと思います。でもついさっきまで電気は点いていなかったし、点ける為にはバリケードを越える必要がありました。子供が自分の少ないお小遣いをはたいてわざわざこんなイタズラをするとは思えませんでしたし、何より、こう、その蛍光灯の下の空間がとても古めかしく感じたんです。夕焼けに染まった教室のノスタルジックさではなくて錆びれた商店街の様な、とにかく退廃した空気でした。

菊池君は

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