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ショートショート

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1分程度で読める怪談です。
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#怪談

【ブレーキアシスト】ショートショート

【ブレーキアシスト】ショートショート

────ピピーッ!!
ガクンっとけたたましい音と共に車は急停止した。

「あ、あれ? 何で止まっちゃうの!?」
「おい! どうして……あぁ!! だから日本車だけはやめとけってあれだけ言っただろ!?」
「いやだって運転性能とか燃費が良いってパパが言ってたから!」
「パパの話はいつも聞き流せって……クソっ! 早くバックしろ! 逃げるぞ!」

兄妹が乗る車にゾンビの群れが迫ってくる。
世界の終わりはま

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「うーん、やっぱりこっちの方が収まりがいいわね」
と言い、母はアクリルの衣装ケースの中でギチギチに縮こまり眠りについた

近所のおばさん達から頻りに
「あそこの子供は本当にしつけがなってないわよね」
と聞かされるのだが、この数年間1度も姿を見た事がない

夜な夜な自分を罵倒する声が聞こえるのだが、その出処がハムスターのいるケージからだと信じたくはない

信号で止まる斜め前のデリバリーピザのカゴから、容量を遥かに超える黒い虫が溢れ出している

ある10階建てマンションの05と付く部屋の明かりが、9時を過ぎた辺りで上階から順に1回だけ明滅する

蛍光灯を外して替えようとしたところ
「はい」
と渡され素直に受け取ったのだが、後ろには誰もいなかった

オーダーメイド【ショート】

オーダーメイド【ショート】

「目はどうしますか」

「沢山世界を見たいので真ん中に1つ足してください」

「鼻はどうしますか」

「美味しい匂いを嗅ぎたいので穴を1つ足してください」

「口はどうしますか」

「キスしながら話しかけたいので2つください」

「耳はどうしますか」

「沢山声を聞きたいので穴を左右に1つずつ足してください」

「腕はどうしますか」

「好きな人が出来た時もっと抱き締めたいので2本足してください」

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古いデジカメ【怪談】

古いデジカメ【怪談】

心霊写真が撮れるという古いカメラを手に入れた。それを持って深夜、友人と山奥の廃神社へと向かった。
何とも不気味な雰囲気のある場所だ。
友人を賽銭箱前に立たせて、シャッターを押した。
確認するが、そこには何も写っておらずガッカリして
「やっぱ眉唾物だったなー」
と言うと友人は
「いやいや、写ってんじゃんはっきり」
と答えた。隅から隅まで確認したが私には分からない。
「どこ?全然わかんない」
「だから

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【1行怪談】

学校の数ある廊下の中で、理科棟へ繋がる渡り廊下だけは走ってはいけない。

【1行怪談】
夢の中でこれは夢だと自覚した時は、勢いに任せてムカつく上司を殺す事にしているが、一向に夢が覚めない。

路地裏の理髪店【不思議な話】

路地裏の理髪店【不思議な話】

「こんなとこにあったっけ」
飲み会で遅くなった夜、マンションのすぐ裏手の路地裏で、煌々と光る看板を見つけた。
【〇〇〇理髪】
難しい旧漢字なのか、なんて書いてあるのか分からない。
光に吸い寄せられる虫の如く、フラフラと歩いていき中を覗き込んだ。

チャキ……チャキ……

猫が猫を散髪していた。小さい手で、小さいスキバサミを器用に使っている。寝そべる猫は気持ち良さそうに欠伸を1つして、ふとこちらを見

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異物【怪談】

「痛っ」
目に違和感を覚え、それはすぐ痛みになって現れた
「目に何か入ったみたい」
「鏡貸したげよっか」
「ありがとう」
下瞼を指で押し下げ鏡で確認すると、目頭の部分に細く黒い物が写っている
「まつ毛入ったみたい」
鏡を置いて人差し指で先端を押さえながら親指も使って引いていく

するするする……