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同世代のみんなへ。1500冊読んで、たくさん対話して見えたこと。

何千年もの間、何千万もの人々が何百万羽の白い白鳥を見てきた。

それで、「白鳥はみな白い」と結論づけた。

ところが、オーストラリアで「黒い白鳥」が見つかって、その認識は覆った。「すべてこうだ」という命題を覆すには、たった一つの例外が見つかれば十分だったのです。

このことから、ごくごく稀ではあるものの、極めて大きな影響のある事象をブラック・スワンと呼びます。

ブラック・スワンが教えてくれるのは、人間が予測できることはとても限られていること、特に偶然性や大きな変動の影響を過小評価してしまうことです。

人は、「証拠がないこと」を「ないことの証拠」だと考えやすい頭を持っているのです。

どれだけ長い間うまくいっていても(ほら、やっぱり今日も白鳥は全部白い/今日も取引は順調だ)、ブラック・スワン(コロナとか、金融恐慌とか)たったひとつですべて帳消しになってしまうことがなかなかわからない。

過去に起こった一番大きな地震は、その地震が起こる日まで誰もそんな大きなものが起こるとは予測できなかったはずなのに、僕らはすぐそのことを忘れてしまう。

ブラック・スワンは、どこにでも潜んでいます。

<ブラック・スワンの3つの特徴>

ブラック・スワンには3つの特徴があります。

①異常である
過去に照らせば、そんなことが起きるかもしれないとはっきり示すものは何もありません。2008年になるまで、金融危機が起こる兆候はありませんでした(後づけで予測できたろうということはできる)。

②とても大きな衝撃がある
安全だと言われてきた原発ですが、福島のたった1回の事故で世界が取りやめようとするきっかけを作りました。

③起こったあとには、予測できたものであるかのように考える
なぜあの戦争は起きたのか。なぜ彼は成功したのか。なぜあの商品はヒットしたのか。僕らは、後からただそれっぽい注釈を述べているに過ぎません。そして再び未来予測を大きく間違える。

ブラック・スワンには、プラスのものもあります。

例として、身近なものを一つ挙げるなら、スマホの普及です。(スマホが世に出る前に予測済みだったって人へ。もしかしてスティーブさんですか?)

<人生を決めるブラック・スワン>

僕らは、何度ブラック・スワンに出くわしても、稀な偶然の影響を過小評価しがちです。

その証拠に、キャリアプランというものを立てようとします。

しかし、心理学者のジョン・D・クランボルツ教授によって1999年に発表されたキャリア理論によれば、「個人のキャリアの8割は偶然によって説明できる」ものです。

これは別に驚くことではありません。

5年前に、今自分がしていることや付き合っている相手を想像できたか、10年前だったらどうかと考えてみればいいのです。

いきなり鬱になったり、運命の相手と出会ったり、癌と宣告されたり、大金持ちになったり、家族の介護が必要になったり、新たな職場で意義深い仕事にありつけたり…。

そもそも、自分が生まれたことそのものだって、超絶な偶然の結果です(そしてこのブラック・スワンが一番その他すべての要素に影響しています。生まれていなければ、何も経験していなかったはず・・・)。

あらかじめ立てた計画以上に、たまたまあった出会いが人生に大きな影響を及ぼしているのは明らかです。

<予想するな、脆さを見抜け>

世界はランダム性に満ちていて、ブラック・スワンはしょっちゅう起こっている(パンデミック、大地震、リーマンショック、テロがどれだけ短い期間に起こっているか考えればいい)。

では、人生のほとんどが偶然によって決まるとして、僕らはいったいどう生きていけばいいのか?

未来を予測する精度をもっと上げなくてはいけないのか?

数学者であり哲学者であるナシーム・タレブの回答は、「未来予測は当てにするな。反脆いものと脆いものを見分けよ」というものです。

核心に迫る前に、言葉の説明を。

脆さ(脆弱性)と反脆さ(反脆弱性)について説明します。

あなたの周りの脆いものを思い浮かべてみてください。

たとえば、ガラスの器。

ガラスの器は、ランダム性に対して脆い存在です。すぐ割れる。割れたら戻らない。ランダム性の塊である赤ちゃんやワンコとは、もっとも相性の悪いアイテムです。

それに対して、反脆いとは、ランダム性によってむしろ強くなるもののことを言います。

負荷をかけるほど鍛えられる筋肉、逆境を乗り越えた分強くなるハート、抜けば抜くほど力強く生えてくる雑草は、刺激に対して反脆いといえます。

反脆いものは、むしろ逆境がないと弱っていきます。僕が運動不足で体が鈍っているように。

もちろん、反脆いのにも限度はあります。15メートルの高さから飛び降りることに対して、人は脆い。

<脆いか反脆いか。グラフで一目瞭然>

ブラックスワンにはプラスのものもマイナスのものもあるということを思い出してください。

脆弱なものは、ブラック・スワンからマイナスの影響を強く受け、反脆弱なものはブラック・スワンから多大な恩恵を受けとります。

個人的には、グラフで考えるとすっきりわかったのでそちらを一緒に見ていきましょう。

まず、横軸。こちらは、損得を表し、右に行けば行くほど良い結果・左に行けば行くほど悪い結果です。

次に、縦軸。こちらは、発生確率を置きます。線が高く描かれるほど、発生確率が高いことを表します。

引用したnote

脆弱なものを曲線のグラフで表すと下のようになります。

引用元

住宅ローンあり、妻子持ちのサラリーパーソンが「社内で大胆なアイデアを提案し、新しいことに挑戦する」という事象はこういうグラフになると思われます。

上手くいっても給料が少し上がるだけですが、上手くいかなければ解雇や左遷が待っています。

巨大金融機関のビジネスモデルも脆い構造になっています(利益は上限が見えていて、たった1回の金融ショックで数十年分の利益がふっとぶ)。

一方、反脆弱なもののグラフは次のようになります。

引用元

SNSの発信や本の出版なんかはこれに当てはまります。売れなくても印刷代やドメイン料がせいぜい損失の下限で、上手くいけば億万長者です。

たまたま有名な人に取り上げられたり、逮捕されて名前が知られたりするようなブラック・スワンがあると、売れ行きは上がりますよね。ランダム性に対して反脆いわけです。

あなたが占い師なら、みんながバカだと思う未来予測(正確にいうと、これまで一度も起きていないが起きないと言い切れないことの予測)をしておくのも反脆いやり方と言えるかもしれません。

「トランプが大統領になる」と2015年に述べていたり、「パンデミックで世界が大混乱に陥る」なんて2000年に書いている人がいたらきっと笑われたでしょう。

が、ブラック・スワンの後は取材依頼が殺到したはずです。

だから、くだらないことですが、僕も予測しておきます。

沖縄に雪が降る日が来ます。世界の長者番付は、僕の若いうちに総入れ替えが起きます。東日本より悲惨な大災害が起こります。日本もいずれ戦争に巻き込まれます。僕のことを知っている人が500年後にもいます。

脆さと反脆さを踏まえると、僕らが取るべき戦略はこうなります。

引用元

ただ、これだけでは不十分です。

僕らは、「頑健」なシステムに大半を賭けておく必要がある・・・

<バーベル戦略について>

脆いものと反脆いものの説明のとき、鋭い方はダイヤモンドみたいな丈夫なものはどうなるんだろう?

と思ったかもしれません。

実は反脆弱性を生かして強くなるためには、もうひとつ、頑健という概念が必要です。ダイヤモンドは、頑健である。

頑健なシステムとは、非常によい結果も非常に悪い結果もほぼないもののことです。公務員の給料とか。

直感には反するかもしれませんが、最低賃金の労働も頑健なものの一つです。いくらでも仕事が余っていて、やめてすぐに変えることが可能であり、転々としてもほぼ給料が下がることはないからです(最低なので)。

頑健、脆弱、反脆弱。
ブラック・スワンとそれ以外。

これらがわかれば、未来がわからなくても生き延びるためのマシな戦略を描くことができます。

リソースの多く(85%くらい)をごく少数の頑健なものに、一部を小粒に分けてプラスのブラック・スワンが出る方に賭けるのです。

これは、金融の世界でバーベル戦略と呼ばれています。

これは、キャリアにも転用できます。

実際、多くの偉人がバーベル戦略を取っていました。

ヒカキンはたしかスーパーの店員をしながらYouTubeをはじめ、アインシュタインは特許庁という非常に安定した職に就きながら空き時間でいくつかの重要な論文を書き上げ、カフカは保健局で働きながら執筆し、夏目漱石は講師のかたわら『吾輩は猫である』を発表しています。

安定して日銭を稼ぎながら、失ってもいい分のリソースを複数の大博打に当てる(たくさん書いたり、たくさんビートボックスの動画を出したり)。これがキャリアのバーベル戦略です。

ここまでの概念がひとまとめになっている図↓

タレブ『反脆弱性・下』より

<ブラック・スワンに賭ける者は報われない>

さっき、予測の話をしました。

「トランプが大統領になる」と2015年に述べていたり、「パンデミックで世界が大混乱に陥る」なんて2000年に書いている人がいたらきっと笑われたでしょう、と。

薩長同盟にせよ、倒幕にせよ(なぜか幕末で喩える)、ブラック・スワンが起こることに賭ける者は、それが起こるまでは超少数派であることが常です。

ですが、賭ける者が超少数だからこそ、大穴なのです(ギャンブルはまったくお勧しめません)。

商品開発の例でいうと、レッドブルという飲み物は、「まずくて、小さい缶に入っている、クソ高い飲料」でありながらこれまで115億本も売れていますが、そんな飲み物を作ろうとコカ・コーラ社内のアイデア出しで発言しても誰もまともに取り扱ってはくれなかったでしょう。

僕らはレッドブルが世に出た後だから、成功が論理的に考えて妥当だと考えてしまうのです。

ブラック・スワンに賭ける者は、大半の時間をまじめに話を聞いてもらえず過ごし、ややもすれば、笑われ続ける。

おまけに、ブラック・スワンが起きた後にもまともな評価を受けられません。この前こちらでツイートした通り。

<たとえ評価されず、お金が減る一方でも>

ブラック・スワンに賭ける者は報われない。

であるなら、いくら戦略的だとしてもそんなものに時間やお金をコツコツ何年も、下手したら十何年も投資し続けられますか?

という話です。

ほぼほぼ無理でしょう。なかなか理解されず、失敗すると手痛い扱いを受け、たとえ成功しても報われない。

そんなことのために力を注げるとしたら、それは天命か趣味の対象である場合くらいではないでしょうか。

もしも動機が大勢からの評価や安定した稼ぎのためだとしたら、続くわけがありません。手をつけることもないでしょう。

続けられるのは、天命か、趣味かのみ。

趣味とは、誰の役に立ちそうもなく、お金は出ていく一方で、人には苦笑されるようなものです。でも、主観的にはいくらでもおもしろがれる。無根拠に、やりたいからやる。やるなと言われてもうずうずして隠れてやってしまう。そういうものです。

理性脳に対して、アーティスト脳がやれということです。多くの人は理性脳にジャックされている。

そこから解放されるには、アーティスト脳を解放するための手順があります。自分には無理とか思う方はぜひこちらの動画を見てください。

僕にとっては、こうして本を読み考えまくって文章で説明することが趣味です。その上で、リスクを取ってでも自分の考えを試す実験がしたい。

昔からこういうことが好きで、だから報われなくても細く長く続けられる。ブラック・スワンが訪れるその日まで。別に自分の死後に自分の書いたものが有名になっても一向に構いません。早かったら嬉しいですけどね。

この文章だって、どれだけ時間がかかっているかわかりませんが、たぶん1円も儲かりません(誰か投げ銭してください  #僕のブラック・スワンになりませんか )。実験もだいたい失敗ばかり。

それでも全力で書く。思想を体現する実験を、あれこれ試す。その方が面白いから。そういうものなのです。


趣味は、続けられます。だから、上手くなる。そうすると、人に喜ばれるようになってくる。

自分が無根拠に、無報酬でも喜んで続けたいことで、たくさんの人が喜ぶ。そんな姿を見ていると、やがて自分の天命を自覚するようになります。

天命とは、たとえどんな障害があろうとも、一生をかけてやり遂げなければならない使命のことです。アパルトヘイトから黒人を解放するとか、幕府を倒して新しい時代を作るとか。

僕の天命は、まだぼんやりとはしていますが、方向性は見えてきています。

自己紹介記事でも書いたことですが、「人々を、より長期的・大局的・戦略的に動けるようサポートすることで、苦痛を減らし、生きる楽しみを見出せるようになってもらいたい」。

いずれもっとはっきりと天命を自覚する日が来ると思っています。

<精神的な頑健さを養う>

趣味と天命という、精神的な領域に話がスライドしてきたところで、バーベル戦略の精神面への応用についてです。

バーベル戦略は、精神面にも応用できます。

結論からいうと、心に「ストア派(ストイックの語源になった哲学の一派)の哲学者」と「趣味(天明)に生きる者」を同居させるのです。

前者が頑健な心構え、後者が反脆さを利用するために必要な心構えです。

それを体現していた偉人として、セネカというローマの哲学者がいるので、彼の生き様と言葉をベースに語ります。

この章では、頑健な心の方から説明しましょう。

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2000年ほど昔に哲人セネカが説いたのは、かんたんにいうと、外的なことがどうあれ、楽しみや生きがいを見出す力を育んでおけということでした。

地震、戦争、鬱病、癌、愛する人との別れ・・・。

偶然の不幸について考えると、夜も眠れないという人もいるかもしれません。それくらいなら、能天気な方がいい。そう思う人もいるでしょう。

実際、まれにしか起こらないことを毎日心配して寝つきが悪くなることほどバカバカしいことはありません。

しかし、セネカは言います。悪いことは全部起こると思え。そして、来るなら来いと思え。

君があらゆる心配を取り除けたいのなら、君がいま恐れていることはみな、いつかは起こりうることだと思うのです。またその禍が何であれ、あらゆる側からよく観察して、君の恐怖を査定してみるのです。そうすれば、君の恐怖の対象は、大したものでないか、長続きはしないものだというのがわかるでしょう。

中野孝次『ローマの哲人セネカの言葉』

この忠告は的いているように思います。

なぜって、僕らが生きるのは、古代ローマとは違い、人生100年と言われる時代です。

歴史のどこの100年を切り取っても戦争や地震が全くなかったなんてことがなさそうなのを考えれば、僕らはあらゆる災禍に直面すると思っておいた方がいい。

それに、考えてもみてください。グローバル化した社会ってのは、世界のどこかの問題が、ろくに薄められもせず全世界に波及するということです。どこぞの国で正気じゃないトップが当選したらすぐ一大事です。

今後100年にもわたって、先進国のどこにも、正気とは思えない首脳が1人も当選せず、当選しても恐ろしいことをせずに済むなんてことは奇跡では?

また、個人レベルの話にしても、僕らはきっと長い生涯で無一文になることも餓死しそうになることも経験する可能性はあるのです。

うーん、嫌な気分になりますね。

2000年前にセネカの話を聞いた人もも同じことを思ったでしょう。それに対して、彼はこんな修行を勧めています。

ある程度の日数を用意する。その間、もっとも不足しているが、安価なもので全て事足りるようにし、粗末な服を着て歩き、心の中でつぶやきなさい。「私はこんなことを恐れていたのか?」

ナシーム・タレブ『反脆弱性・上』

最低辺の暮らしを、たまにあえて経験するようにしておけ。そうすれば、ほとんどの出来事が儲け物だと感じられる。

そういうことを述べています。

足るを知る者には、少なすぎるということはない。足るを知らない者にとってだけ、いくらあっても十分ではないのです。

中野孝次『ローマの哲人セネカの言葉』

<利用すれども奴隷にならず>

足るを知る。

ほぼどんな状況でも充足を得られるようにしていれば、あなたの幸福度の下限はプラスの側にとどまります。

ここまでが前半です。

もう半分を説明するには、セネカの実際の生き方を知らねばなりません。

先ほどの章で紹介したセネカの言葉を見て、みなさん、セネカがどんな生まれや身分で、どんな暮らしをしていた人だと思いますか?

おそらくみなさんの予想に反し、彼は裕福な家で生まれ、本人も大変な財産家になっています。絶頂期には、政治の中枢にいたり、ローマ皇帝の家庭教師だったりした時期もあります。


彼は、あえて数日貧困に身を置いて心を鍛えはしても、進んで財産を捨て去ったり、権力を持つことを拒否したりはしませんでした。

なんだか嘘をつかれた気になる人もいるかもしれませんね。

しかし、彼が真に偉大なことを成せたのは、いつ全部を失っても自分は楽しく生きていけるという自信をたしかに持ったまま、財力や政治権力を持ったからだと僕は思うのです。

彼は自らの力を人のために利用すれども、その奴隷にはなりませんでした。

実際、彼は自分の信条を貫き、7年ほど島流しにもあっていますが、その間も哲学的思索を深め続けています(そのあとでまた政治の中枢に戻されています)。

哲学は彼の趣味であり、実践によって全世界、遥か未来に貢献することが彼の天命でした。

わたしはこれまで一度として運命をあてにしたことはありません。たとえ運命が友好状態を保とうとするような様子をみせた時にも、です。
彼が最大の親切さからわたしに積み上げてくれたもの、財産や、官職や、勢力やを、わたしは、運命がわたしを興奮させないでいつでも取り戻しに来られる場所に置いておきました。

中野孝次『ローマの哲人セネカの言葉』

ここまでの話から、精神におけるバーベル戦略を人生訓的にまとめるなら、以下のようになるでしょうか。

・幸運は、利用すれどもその奴隷にはならないこと。
・不運は、外的な要因に過ぎず、鍛えた心には絶望を与えることはできない。みずからの心よって充足できるようになること。

これって最強状態だと思いませんか。

別に偉大なことを成し遂げないにしてもですよ、失うことを恐れていなければ、自分が意義があると信じられることを続けられるじゃないですか。

「生きていくためなんだ。仕方ないんだ」とか言って、無駄だと思っている仕事に加担したり、大切な人との時間を削ったり、自分に嘘をついたりしないでいい。趣味と天明に、他者の評価は関係ないのです。

最低ラインに充足できるなら、ほぼいつでも頻繁に幸せを感じられるし、長い目で見て大きなプラスの可能性がある正のブラック・スワンに賭けられる。

たまに大当たりを引いてもその上にあぐらをかかず、人に与えることに躊躇がないから、より人徳は高まる。おぉ、最強。

忘れてはならないのは、たとえ賢者が飢餓の中にあって喜びを見出せるとしても、十分に食事ができるに越したことはないわけで、もし幸運にも地位や財を手に入れたのなら、それをより自分を自由にするために使えばいいってことです。

「いかに生きるか?」に対して、

精神面と実生活面(投資家のやっているようなバーベル戦略)の両方でバーベル戦略を取るのがベストアンサーではないか。

これが今の僕の回答です。

よくわからんけどそれ自分のキャリア構築にも使いたいと思った方は、ぜひ富山に遊びに来て僕に会ってください。一緒に考えます。

<困難が教えてくれること>

しかし、どうしてセネカは最低ラインで満足できる心を持っているのに、あえてリスクを取ってまで地位や財を築いたのでしょう?

ずっと趣味に生きるのではダメだったのでしょうか?

僕が思うに、セネカくらい不確実性を理解しており、かつ鍛えられた心を持っていれば、その内心には感謝と自信が無限に満ちていたからではないでしょうか。

セネカは、自分の成功が偶然の産物で、借り物に過ぎないと知っていました。それから、粗末なパンやボロ衣にもありがたみを感じられるよう実践的な修行によって心を鍛えてもいた。

であれば、自分が手にしているもの、出会うもののほとんどは単に運がよかったらから手元にあるもので、しかも必要な量に比べてあまりに多過ぎるわけです。

世の中に還元しないと、バチが当たる。
そう思うのが自然な流れではないでしょうか。

人は誰かに親切にされたらお返しせずにはいられない生き物です。自分が受けた善意を他の誰かに渡すペイ・フォワードはこうして生まれる。

それから、人は成長を求める生き物です。

自分がどこまでいけるのか試したい。同じ難易度の課題ばかり続けていては退屈極まりない。

だから、意義を感じられるか楽しめる対象(趣味か天命)については、立ち直る自信のある限り、人は進んで挑戦的な目標を掲げ、自ら壁を用意するものです。

再びゼロから始まるとしてもやれる。それほどの自信があったセネカが設定した壁は誰より高く聳え立つものだったのでしょう。たぶん。

セネカは、こんな言葉も残しています。

もし徳ある人が、自分の心の力を示すべき困難な出来事に出会う機会が与えられないでいたら、その人に向かって言うでしょう、

「僕はあなたを不幸だと思う、一度も不幸な目に遭ったことがないからだ。
あなたはこれまでずっと敵対者もなく人生を渡って来たから、あなたに何が出来るか、誰一人知らないでしょう。おそらくあなた自身でさえも」と。

つまり自分自身を知るためにも、試練に遭うことが必要なのです。人一人が何を出来るかは、試練を経ることによって以外には知りようがないのです。
(「神意について」411~3)

中野孝次『ローマの哲人セネカの言葉』


<面白がることから始めよう>

ここまで整理し言語化したのははじめてのことですが、中学2年生くらいからの僕のふるまいは、完全にここまでに述べた戦略に沿っています。

それができたのは、別室登校を選択し、ひたすら読書にふけることができたがためだったというのも、最近なんとなくわかってきました。

僕は一番多感な時期に、長いこと自分を評価しようとす他者からの目に触れてこなかったのです。

誰からも否定されることなく、ヤバめな趣味(思想の偏り激しい読書、執筆、空想)にも没頭する時間がたくさんありました。アーティスト脳を十分育てられた。

しかし、大学生になって周りを見ていると、そんな時間をもったことがない人がけっこう多いのに気付きます。

この1年、学生が集まる場所に住み続け、たくさんの学生とガッツリ対話しつづけてよりその認識を深めました。

「将来の収入につながるか」とか「親(大人)を説得できることじゃないとダメだから」とか「周りに変な目で見られないか」とか、そういう理由を中心にやることを決めているのです。で、なんだか元気がない。退屈そうにしている。

「趣味なんてやってもどうせお金にならないから」「いつかまとまった時間をとって自分の好きなことを全力でやりたい」「今日も生産性のない日を過ごしてしまった」

みたいなこともよく聞きますが、僕は聞いていていつももどかしかった。やっと今日これでもかってくらい丁寧に言語化できました。

まず純粋に面白がればいいんです。がんばらなくていい。無責任でいい。

面白がる感覚を思い出して。 主観100%でいいから、面白がることをベースにした行動を少しでも1日の中で増やしたらいいんです。不合理なことにも投資し続ける。バーベル戦略です。

その時間を無駄だと思う必要はありません(なんか言われたらこのnote送りつけてください)。

僕が全力で趣味を肯定します。(ただし、快楽と充足を僕は明確に区別します。

<面白ベースへ行こう。面白ベースで行こう>

とまあ、長々と1万字近く僕の思想の全体像を述べてきましたが、僕は自分の考えを述べるだけで終わるようなことはしません。

形にして、時の試練にさらし、磨き上げてこその哲学です。

僕はお金と時間と労力を割いてでも、リスクを負ってでも、あなたのブラック・スワンに賭ける行動(趣味と天命)を肯定することを約束します。だって、それが面白いから!

手始めとして、旗印となる拠点を作ります。

今年中に、「おもしろい大学」を自称する富山大学の真向かいに「面白ベース」という施設をオープンするつもりです。

学生を中心に若い人が、面白がることから始め、夢中になれる生き方を見つける手助けをするための拠点です。僕は常駐します。

まずは、一緒にいろんなものを面白がることから始めよう。

あらゆるものを面白がる感覚を思い出し、面白がることをベースにした行動を増やしていく。そこからすべてが始まります。

就活に有利になるとか、親や友人に認められるとか、そんなことは横に置いておきましょう。

純粋に遊び心であれこれ企画する。「こっちは遊びでやってんだよ!!」の精神で本気でやる。

僕とたくさん対話する。それを繰り返して、「面白いか」「楽しめるか」という観点から考える癖づけをする。

その繰り返しの先で、自分が無根拠に、不合理にどうしようもなく続けてしまえることを発見し、肯定する。

そしたらついでにちょっとアイデアを加え、人の手を借りて、挑戦してみる。気づいたら、誰かに喜んでもらえるようになっている。

そうなってからビジネスや社会貢献に本腰を入れても、きっと遅くはない。

大丈夫、面白ベースに来てくれれば僕はいつでも君を受け入れるつもりです。


でね、僕はもっともっと未来も妄想しています。

しばらく時間が経った先で、君も天命と言えるものを見つけて、君自身が日本や世界にとってのプラスのブラック・スワンになっているところです。

<だからお願い。側においてね>

そろそろちゃんと締めに入ります。
ここまで読んでくれてありがとう。

僕は、自分の体の弱さと自分の不器用さを知っています。

いつも大風呂敷を広げるけど、プロジェクトが動き出す時には集まってくれた仲間がいなきゃ全然ダメです。詰めが甘い。

不器用すぎて手間を増やすだけだから、DIY中に僕だけ「座っといて」って仲間みんなに言われます。

財布はしょっちゅう失くすし、履修登録(やら書類手続きやら)も自分ではできないし、すぐ体力が尽きるし、だいたいいつもどこか体が痛くて「おじいちゃん」と呼ばれています。

でもだからこそ、みんなのことを心底すごいなぁと思っています(僕がみんなに勝っているのは、久高諒也っぽさだけ)。

僕から見たみんな(たとえば、よく裏門や寄処で会ってる同世代の君のこと)がどんな存在かを喩えてみるなら・・・

みんなさ、もしタイムスリップして、15歳のときの龍馬とかキング牧師とかイチローとかに会えたら、どんなふうに接する?

まだ何もなしてないけど、たぶんもう何か成した偉人として向き合うんじゃないかな。僕から見たみんながそれです。けっこう大真面目にそんな気持ちで君に接しています。信じてくれないかもしれないけど。

自分がずっと続けられることを通して、未来の偉人に奉仕できたら、それ以上幸せなことが何かありますか。僕には想像できません。

だからお願いです。

僕のためだと思って、面白ベースを始める仲間になりませんか?

学生のみんなへは以上です!

ここまで読んでくれてほんとありがとう!!

<これを見てる大人のみなさまへ>

まだまだ未熟者ですが、ここまで書いた通りです。

まずは富山から、面白がることをベースに、大勢を巻き込む必要のあるチャレンジングな目標を持ち、一生続けるだろうと思える強みを持った学生を輩出します。気分は吉田松陰。

若者の方からガンガン大人を巻き込み、独創的なプロジェクトが動く。そんな社会を目指します。

この目標のために、「書く」「対話する」「企画する」「教える」「読書する」をしつこく毎日でも続けられる久高が、上手くいくまで何年でも試行錯誤します。

ちなみに、教育をシステム化してフランチャイズ式にスケールしようとかは思ってないです。自分が、たまたま集まってくれた子たちに向けて全力でやることに意味があると思っています。本はいずれ出すと思いますが。

僕は、面白ベースに、人生でもおそらくもっとも体力と知力のある期間を捧げる気でいます。

ライター・編集者としての仕事も続けますが、20代の間にあと5人くらいまでしか長期連載、からの出版のお供はしないつもりです。

本気で伴走したい、学ばせていただきたいと感じた方に限りお供させていただきます。


ここまでお読みいただいて、僕の本気度を感じられて、めげずにいつまでも試行錯誤してくれそうだと信じていただけたら、ぜひ応援していただきたいです。このnoteへの投げ銭も大歓迎です。

こんなふうに協力できるという形は人それぞれだと思いますので、一度会ってお話しするのでも大丈夫です。むしろお願いします。

TwitterのDMかFacebook(いずれも久高諒也で検索したら出てきます)からご連絡ください。

<参考文献>

場づくりをしていく上で、久高が拠っている哲学・思想を紹介。

久高は最近、「どう上手くやるか?」「いかに速くやるか?」というノウハウ的なことを議論する前に、「世界はどうあるべきか?」「善く生きるとは何か?」という抽象度の高いコアの部分を十分に学び、己の思想を腹落ちさせることが重要だと信じている。

ので、哲学系の本が多い。

『勉強の哲学』

どのようにして今のものの見方を脱構築し、新たなノリへ移るのか。
手法というより、「コード」「アイロニー」「ユーモア」という概念的に参考にしている。

『反脆弱性』

極端に稀な事象を研究する数学者であり、哲学者であり、トレーダーでもあるタレブ氏の著作。

未来は本質的に予測ができない。それでも、「脆いもの」「頑健なもの」「反脆いもの」を見分けることができれば、生き延びるための手立てを考えることができる。

セネカのストア哲学がなぜ最強かについても論じてある。

『脳は「ものの見方」で進化する』

人間の脳の可塑性について。ものの見方を遊び心に満ちた装丁で書き換えてくれる本。一番好きな本の一つ。この本に出てくる「未来の過去を変える」という考えを参考にしている。

『世界史の構造的理解』

世界史を理系的な切り口からすっきりとモデル化して説明している本。
この本の中の「知的制海権」という概念が、世の中を変えていきたい若者にとっては非常に重要だと思う。

『フロー体験とグッドビジネス』

一つ前の本の著者である長沼先生がいう「縮退」にも通ずる話が出てくる。
フロー体験は、人生の充実において極めて重要な概念であると思う。noteにまとめている。

『ずっとやりたかったことをやりなさい』

いかに理性的な脳を抑制して、自分の感性的な側面を取り戻すか。具体的なノウハウがプログラム形式で書かれている。ここにあるレッスンをそのまま実践する会を作ってもいいと思う。

『実力も運のうち 能力主義は正義か?』

「努力すれば成功する」「失敗は自己責任」という考えは、不運によって虐げられる人を軽蔑してしまう社会を生み出すという問題について深掘りしている本。

外的な指標において成功しようとすることの社会的な問題。構造的な問題を理解できる。

僕は、個人の享楽的なこだわりを発掘し、個人の内的な意味での成功を実現する手助けをしたい。


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