遠山桂

行政書士と消費生活相談員と大学非常勤講師(日本福祉大学経済学部)。 ネット取引と消費者法の考察やショートストーリーを投稿します。 |Webビジネスの契約書→https://keiyaku-web.com/  |継続サービスの契約書→https://tokutei.biz/

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    最近の記事

    定期購入契約の解約をする場合の通知書の書き方

     ネット通販や動画視聴サービスなど、定期購入(サブスクリプション)の契約が増えており、便利な一方で契約解除の手続が面倒で難しいというトラブルも生じています。  通販の契約は消費者が主体的に注文を行うことから不意打ち性はないとされており、クリーングオフの適用はできず、販売業者がウェブサイト内に表示する利用規約の内容が優先適用されるのが原則になります。  その利用規約に、例えば「6ヶ月以内に解約する場合は、違約金として3万円の支払いを要します」と記載されていれば、契約をした消費

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      • クーリングオフの文例(書き方)と手続について

         電話勧誘や訪問勧誘によって契約をした場合には、基本的にはクーリングオフが出来ます。(例外的に出来ないケースもあります)。  このクーリングオフ制度というのは法律で利用できる条件が定められていて、店舗に出向いての購入やネット通販では適用されません。  クーリングオフが適用されるのは、電話勧誘などの不意打ち的な取引であり、店舗購入や通販は消費者が自らの意思で買い物をしているのだから不意打ち性はないとされており、クーリングオフの対象にはなりません。  本記事では、クーリングオ

        • 訪問勧誘や電話勧誘のビジネスの契約書を作成するポイント

           訪問販売や電話勧誘販売といったアウトバウンド営業のビジネスを行う場合には、特定商取引法のルールを守らなくてはなりません。 同法ではクーリングオフに応じる義務や取引条件を記載した書面(契約書等)を消費者に交付する義務が定められています。  そうした義務に違反すると業務停止処分や罰金といった行政罰、契約の撤回や返金といった民事的ペナルティの対象になってしまいます。 持続的なビジネスを続けていくためにはコンプライアンスを徹底する必要があるので、特定商取引法のルールは把握しておく

          • ネット事業者のための「特定商取引法に基づく表示」の書き方

            ネット通販サイトやSNS、各種プラットフォーム等の有償サービスの運営を行う場合には、ウェブサイトに「特定商取引法に基づく表示事項」を掲載する必要があります。 この「特定商取引法に基づく表示事項」ですが、よくわからないままに同業他社の掲載例をマネして書き写すことで済ませているケースはないでしょうか? これは特定商取引法という法律によって、通信販売事業者がウェブサイト等に表示すべきと義務付けされた事項なので、取り扱いをしているビジネスの内容を正確に記載する必要があるものです。

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            【第8話】ステマ通販とインチキ電話勧誘|特定商取引法ストーリー

             古びたアパートの1LDKの部屋に住むようになって半年が過ぎた。窓際や机の上にはストライクフリーダムや初代ガンダムのプラモデル、いわゆるガンプラが10機ほど鎮座している。長尾颯太は大学3年の期末試験を終え、明日からの春休みの予定についてボンヤリと考えながらガンプラを眺めていた。実家に帰ればガンプラはこの3倍の量があるが、これ以上は増やすなと親に口うるさく言われている。  春休みといっても、バイト以外の予定は何もない。アニメ研究会のメンバーは帰省や旅行で不在となり、大学に行って

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            【第7話】訪問購入の目的|特定商取引法ストーリー

             郊外の一軒家に息子夫婦と孫と暮らして、敷地内の狭い畑で好きなように野菜を育てる日々を送っている。73歳の押田みねは、そんな平穏で緩やかな生活が気に入っている。やんちゃだった孫の健も大学を卒業して2年が経ち、前島電気という家電量販店で働いている。夫は闘病の末5年前に亡くなってたいへんであったが、それも過去になりつつあり、今のところは家族で懸念することない。  午前の畑仕事が終わりリビングでくつろいでいる時に電話が鳴った。電話の相手は若い女性であった。 「不用品処分の大浜商事と

            【第6話】業務提供誘引販売の闇|特定商取引法ストーリー

             駅前の家電量販店の前島電気は、週末ともなれば家族連れや外国人客で賑わっている。3階の情報機器売場で販売員として走り回っている押田健は、入社2年目の大柄な男性だ。インバウンド需要で外国人の来店者が増えているため、外国人への接客ができれば売上目標も容易に到達できる。  もともと英語は得意なわけではないが、学生時代にアジアに長期旅行に行っていたことがあり、カタコト英語とジェスチャーで何となく意思疎通は出来るという自信を持っていた。専門的な語学力はなく、情報家電の商品知識も怪しいも

            【第5話】特定継続役務との切れ目|特定商取引法ストーリー

             駅前の繁華街に立地する家電量販店では外国人の来店も多く、日本語の他に英語や中国語など様々な言語が飛び交っていて賑やかだ。南希美はその前島電気駅前店に入社2年目の店員だが、他言語には苦手意識があって外国人の来店者に話しかけられても萎縮してしまうところがあった。3階の情報機器売場を担当していて商品知識には自信をもっているが、インバウンド来店者への対応が消極的なため、大きく売り上げで貢献できる機会が少ない。  同じ売場に所属する同期入社の押田健は、英会話の語彙力はそれほどの差はな

            【第4話】連鎖販売取引(マルチ商法)の沼|特定商取引法ストーリー

             クローゼットの前に暖色系のブラウスとワンピースを並べ、どれを着ていこうかと、アラフィフの秋川秀美は思案顔をしていた。年頃の娘の唯がいれば相談をするところだが、あいにく今は仕事に出かけていてこの場にはいない。高校の同窓会に出席するのは15年ぶりだろうか。何度か逡巡してブラウスとスカートに決めた。  会場のホテルで受付を済ますと円卓から懐かしい顔が手を挙げて合図を送ってきた。ノッコとアミだ。思わず声が出た。 「ノッコ?久しぶり」 「そうね。秀美とは10年くらい会ってないよね。」

            【第3話】電話勧誘販売の押しに負けて|特定商取引法ストーリー

             今日はアパート暮らしをしている孫の颯太が帰ってくる。1ヶ月程前に一人暮らしをしたいからと言って、引っ越しをしていった。同じ市内のアパートだが、大学生でお金もないのに無茶をするものだ。家にいたらだらしない生活ぶりが目について小言も言いたくなるところだが、いざいなくなると寂しいものだ。それが1ヶ月ぶりの帰還である。楽しみだ。  長尾久志は定年退職後に再就職した会社も辞めて、今は年金暮らしの75歳だ。そうはいっても妻も健在で息子夫婦と同居していて孤独とは無縁だ。そこに颯太が加わ

            【第2話】通信販売の落とし穴|特定商取引法ストーリー

             女子大生2年の夏はコンビニのバイトと地下アイドルグループの追っかけで終わろうとしている。後悔はない。秋川唯は洗った後の長い髪をヘアクリップで留めて、部屋のベッドに腰かけながら動画サイトで推しの同性アイドルグループの公演を眺めていた。 「やっぱりQギャルのアヤちゃんカワイイ。メイクもナチュラルで神。」 そう呟きながらアヤちゃんのSNS投稿をチェックするのは日課だ。スマートフォンのタップを続けていると新たなライン着信が入った。送信者は南希望だ。 「唯ちゃん、久しぶり~」 「希望

            【第1話】訪問販売は突然に|特定商取引法ストーリー

            大学3年の夏休みの間にアパートへ引っ越しをした。長尾颯太は念願の一人暮らしが始まることが嬉しくて、片付けが終わったばかりの部屋の中央に大の字になって寝転んだ。  そんな昼下がりに、突然チャイムが鳴った。 「え?まだ友達の誰にも住所は教えていないし、何だろう。大家さんとか?」  そう思いながらドアを開けると、そこには小奇麗な黒系のスーツを着たアラサーの男がにこやかな笑みを浮かべて立っていた。 「こんにちは。最近、引っ越しをされて来たんですね?」 一瞬、颯太は同じアパートの住人が