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InstagramやX等のSNS利用のビジネスやネット通販の広告ルールと契約書【うっかり法令違反をしないために】

 SEOは競合が厳しくなり、ネット広告は費用が高騰し、ウェブサイトへの集客は難しくなる一方です。
 そうした流れの中でSNSをビジネス活用する機会が増えており、InstagramやX等のSNSからウェブサイトやLINEに誘引するノウハウが注目されています。そのようなSNSアカウントを運営するには、広告や取引条件に関する法律やルールを把握しておく必要があります。

 SNSをビジネス利用する場合には、その広告や取引条件について、景品表示法と特定商取引法(通信販売規定)のルールが適用されることになります。これらの法律の内容を把握していないと自覚なく法令違反をしてしまい、行政処分の対象となってしまうリスクがあります。

行政処分の事例

 インターネット・ビジネスを行っている事業者が景品表示法や特定商取引法に違反したとして処分された事例を2つ挙げます。

(1)クチコミに高評価をすることを条件とした値引きがステルスマーケティング違反
 クリニックがGoogleマップのクチコミ欄に星5の高評価のクチコミ投稿をすることを条件にワクチン接種の値引きを行った施策が景品表示法の禁止行為であるステルスマーケティングに該当するとして措置命令が発せられました。

(2)サブスク申込の最終確認画面で表示義務違反
 サプリメントを定期購入(サブスクリプション)によるネット通販をしていた業者が、その申込の最終確認画面に特定商取引法で指定される6項目の記載を怠っていたために業務停止処分を受けました。

 この他にも2024年にはランディングページに「売上NO.1」等のいわゆるナンバー1表示をした販売業者への措置命令が連発しました。

 こうした消費者庁による処分はウェブサイトの広告だけに限定されるものではなく、ネット広告のキャッチコピーやSNSに投稿する内容も対象となるため、インターネット・ビジネスに関わる事業者は細心の注意を払わなくてはなりません。

【参考】
景品表示法のステマ規制で初の措置命令|割引の条件としてクチコミ高評価が違反認定(遠山桂note)

通販サイトの最終確認画面の不備に行政処分!通販業者のコンプライアンス対策を(遠山桂ブログ)

(1)ステルスマーケティング事例は、ワクチン接種の値引きの条件として高評価のクチコミ投稿をすることを指定したのが問題視されました。
 本来はクリニックからの利益供与があった場合は、その関係性の事実を表示しなければなりません。それを秘匿して高評価のクチコミ投稿をうながした場合は、広告であることが明瞭になっているとは認められないことからステマ判定を受けたということです。
 このケースでステマ判定を避けるには、投稿に「広告」マークを表示するか、ワクチン接種の値引きを受けた事実を表示するか、クチコミ投稿に高評価を付けることを条件とはせず自由に率直な意見を投稿してもらうかという対応が必要でした。

 (2)最終確認画面の表示義務違反事例については、特定商取引法第12条の6において通販契約の最終確認画面には(a)商品分量・(b)価格・(c)支払時期と方法・(d)引き渡し時期、提供時期・(e)解約条件・(f)申込期間について漏れなく表示する義務が定められており、その表示義務を満たす画面設計にしなくてはなりません。
 この最終確認画面の表示義務を満たさないウェブサイトはまだ多く存在するので、不備のある最終確認画面の場合は早急な修正対応が求められます。

 こうしたネット広告ルールや取引条件の表示義務についてはしっかりと押さえておきましょう。

ネット通販でも契約書交付が必要なケースも

 ネット通販サイトでは、特定商取引法の表示義務事項をウェブサイトに記載すればよいのですが、SNSでのビジネス展開をする場合には顧客に対して紙媒体の契約書を交付する義務が生じるケースがあります。

 通販サイト自体には特定商取引法第11条に定められた表示事項を記載し、最終確認画面には前述の同法第12条の6に定められた表示事項を記載すれば、表示義務はクリアできます。契約書をわざわざ交付する必要はありません。

 ただし、消費者が最終的に通販サイトで申込手続きをした場合でも、その前段階にてSNS等で勧誘行為を行った場合には、その契約は訪問販売や電話勧誘販売であったとみなされます。
 そうすると特定商取引法の訪問販売や電話勧誘販売の規律が適用されることになり、紙媒体の契約書を交付する義務やクーリングオフに応じる義務が生じることになります。

 例えば、以下のようなケースでは訪問販売や電話勧誘販売の契約書を交付しなくてはなりません。

<訪問販売の契約書>
・集合セミナー開催時に勧誘があった場合
・カフェ面談など、対面での勧誘があった場合
・SNSで知り合った後に対面で勧誘があった場合

<電話勧誘販売の契約書>
・LINE等のメッセージアプリで勧誘があった場合
・Zoom等の映像を介した勧誘があった場合
・InstagramやX等のDM機能で勧誘があった場合

【参考】
通販サイトからのアップセルに電話勧誘規制を適用。契約書のデジタル提供の限定的な解禁【特定商取引法の2023年改正】(遠山桂ブログ)

 つまり特定商取引法の通信販売規定の適用を受けるのは、消費者が自主的に通販サイトを閲覧して第三者からの働きかけがない状態で申込手続きをした場合に限定されます。
 対面での勧誘やメッセージアプリを介した勧誘があった場合には、訪問販売や電話勧誘販売の規定の適用を受けることになり、契約書を交付しなくてはなりません。

 そうした勧誘行為があった場合に、事業者が契約書の交付を怠ると行政処分の対象となり、消費者にクーリングオフの権利を与えることになります。
 どちらも事業者にとってはリスクがあることなので、SNSを介した勧誘をする場合には特定商取引法に対応した契約書を用意して紙媒体で交付するようにしなければなりません。

 SNSは顧客との結びつきが強くなるという魅力がありますが、同時に訪問販売や電話勧誘販売の規制が適用されるという面もあることを認識して、広告内容のチェックや契約書の用意をしていきましょう。

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