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景品表示法のステマ規制で初の措置命令|割引の条件としてクチコミ高評価が違反認定

 2024年6月7日に消費者庁は景品表示法第5条第3号(ステルスマーケティング告示)に違反したとして、東京都のクリニックに措置命令を発したことを公表しました。
 
 認定された違反事実としては、Googleマップ内のクリニックのクチコミ欄に評価として星5か星3の投稿をした投稿者には、インフルエンザワクチン接種費用の割引をすると伝え、それに応じた投稿内容がステルスマーケティングに該当したというものです。
 その投稿は、一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められないことからステマ判定を受けたということです。
 
 景品表示法のステマ規制は2023年10月の法改正により導入された規律であり、本件が初の違反認定と措置命令になります。
 
 【追記】2024年8月9日
 消費者庁はフランチャイズの大手ジムがステルスマーケティング違反と優良誤認表示を行ったとして措置命令を発出しました。
 インフルエンサーの投稿を自社サイトに転載した際に、「広告」表示がされていなかったことが問題視されています。
 インフルエンサーへの広告については、依頼に基づいた「広告」であることの表示が必要です。

 これが景品表示法のステマ告示違反の2例目となります。今後もステマの規制は強化されることが想定されます。

景品表示法のステルスマーケティング規制の概要


 ステマ規制の対象となるのは、「事業者の(広告)表示であるにもかかわらず、第三者の表示のように見えるもの」です。
 
 禁止行為とされるのは以下の2つです。
 
(1)事業者が自ら行う表示(自作自演のなりすまし投稿)
 
(2)事業者が第三者に依頼して広告を表示(インフルエンサーに依頼等)
 
 
 ただし、以下の場合にはステマ規制の対象外になります。
 
(1)第三者の自主的な意思による表示内容と認められる表示。
 
(2)マスメディアが自主的な意思で企画、編集、制作した表示
 
 また、事業者の広告であり第三者の表示に見えるものであっても、その表示内に「広告」マークが記載されていれば、それは適正な広告表示とみなされます。
 
 ステマ規制の詳しい解説については筆者の書いた以下のブログ記事をご参照下さい。
 
【参考】
景品表示法のステルスマーケティング禁止の告示追加による広告主の注意事項(遠山桂ブログ)

景品提供をしてクチコミ投稿を依頼するのはステマになるか?


 
 本件のように、サービス対価割引の条件としてクチコミ投稿を依頼するのがステマ行為として違法となるかといえば、必ずしもそうではありません。
 
 景品提供やサービス対価割引を行ったとしても、投稿者の自主的意思で評価投稿をしたものはステマにはなりません。
 本件では、投稿をする際に星5や星3の高評価をすることを指定しており、これが一般消費者が事業者からの依頼があったことを判別することが困難と認定されています。
 
 つまり景品提供やサービス対価割引の条件としてクチコミ投稿を依頼することは適法ですが、そのクチコミ内容に高評価を指定することはステマにあたるということです。
 
 もしくは依頼した全てのクチコミに「広告」マークが表示されていれば、それも適法ということになります。
 
 SNS等でクチコミ投稿を依頼し、それに応じた投稿者に景品提供や割引を行う施策は広く行われています。
 それについてはクチコミの内容を高評価と指定することはステマになり、内容を問わないという形式ならステマにはならないという整理になります。
 事業者としてはクチコミ内容の指定もしたいところですが、それは避けるようにした方がよいでしょう。
 
 
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