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訪問販売や電話勧誘販売の規制対象拡大への対応と契約書の交付

ネット通販でのショッピングはクーリングオフができず、事業者の契約書交付の義務もありません。
 これが訪問販売や電話勧誘の場合だと、クーリングオフが可能となり、事業者には契約書交付の義務が求められます。

 こうしたクーリングオフや契約書交付義務についてのルールは特定商取引法により定められています。

通信販売は、消費者が自分自身で主体的に情報収集をして契約をするものなので、そこには不意打ち性はなく、クーリングオフ対応や契約書の交付は必要ないとされています。
しかし、訪問販売や電話勧誘販売といったアウトバウンド営業については、事業者側からの勧誘行為によって始まるもので、消費者にとっては不意打ち的に契約をすることも多く、クーリングオフや契約書交付の義務化といった保護措置が図られています。

 その規制対象となるアウトバウンド営業の適用範囲は、法改正を経ながら拡大していることに注意する必要があります。

 例えば「訪問販売」という用語のイメージとしては、消費者の自宅に訪問してくる販売業者のみが対象と思われているところがあります。
 ところが特定商取引法の「訪問販売」の適用範囲はもっと広いものになります。

 特定商取引法第2条の「訪問販売」の定義としては、「営業所等以外の場所」において(勧誘を)行う商品・権利・サービス(役務)の契約とされています。
 つまり「営業所等以外の場所」で行われる勧誘行為は「訪問販売」になり、特商法規制の対象になります。

 その「営業所等」の要件としては、
(1)3日以上の期間に渡り営業していること、
(2)消費者が陳列された商品を自由に選択できる状態であること(=密室ではないこと)、
(3)レジ等の販売設備を有する施設であること、
の3つを全て満たす必要があります。
 この3要件を満たさないものは店舗販売とは認められず、「訪問販売」とみなされることになります。

 そうすると以下のような販売形態は、特定商取引法の「訪問販売」規制の対象となります。

 ・キャッチセールス
 ・アポイントメントセールス
 ・セミナー会場での販売
 ・店舗での短期催事場販売
 ・SNSで知り合いカフェにて商談 など


 また、ネット通販サイトでの申込であっても、事後にアップセル・クロスセルの勧誘行為があった場合には「電話勧誘販売」規制の適用対象になります。
アップセルは、商品やサービスをについて、より上位の高価なものに移行してもらう営業活動のことをいい、クロスセルは関連するものを組合せで購入してもらう営業活動のことを指します。

具体的には、ネット通販サイトから注文のあった顧客に対し、電話・メール・SNS等により連絡をとるように誘導し、アップセル・クロスセルの営業(勧誘)をした場合には、特定商取引法の電話勧誘販売の規制内容が適用されることになります。

 このように当初は通信販売であったものが、ZOOMやLINE等でアップセル・クロスセルの営業をした場合には「電話勧誘販売」規制に応じた対応が必要になります。

 事業者がこうしたアウトバウンド営業を行った場合には、特定商取引法の要件を満たす契約書を紙媒体で交付し、クーリングオフにも応じる義務が生じます。
 事業者がこの義務を怠った場合には、業務停止命令や罰金・懲役の対象となり、クーリングオフ期間が永続するというリスクが生じます。

 そのような違法行為となることを予防するために、通信販売のビジネスであっても訪問販売や電話勧誘販売に対応した契約書を用意しておく必要があります。

 筆者(遠山桂:行政書士)は特定商取引法の要件を満たす契約書雛形の販売をしております。詳細は下記テキストリンク先ページをご参照ください。

ウェブ広告から電話等に誘導するビジネスでは契約書の交付が必要|遠山行政書士事務所

特定商取引法の契約書交付をメール添付等のデジタル的手段で実施する場合の解説書については、下記テキストリンク先ページをご参照ください。

特定商取引法に対応した契約書のデジタル交付のルール解説と承諾書雛形|遠山行政書士事務所
(限定的なデジタル交付)

英会話塾などデジタル完結型の特定継続的役務の契約書デジタル交付|遠山行政書士事務所
(全面的なデジタル交付)


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