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グーグルマップのクチコミに医院の悪評投稿で200万円賠償の判決(名誉棄損とステマのシーソーゲーム)
グーグルマップにはクチコミ機能があって、実際に飲食店やクリニックを利用したコメントは大いに参考になるものはあります。
その一方で悪意を持って投稿されたコメントには名誉棄損の問題があり、事業者の自画自賛(自作自演)の投稿にはステルスマーケティングの問題もあります。
クチコミ機能とは、悪評と真実公開、好評と事業者のステマなどの要素がシーソーゲームのようなバランスで成立していることを認識する必要があるようです。
2024年5月31日の大阪地裁判決では、グーグルマップの口コミ欄に一方的な悪評を投稿された医院の名誉棄損の被害を認め、投稿者に200万円の賠償金を支払うよう命じました。
投稿内容は「何も症状がないのに勝手に一重まぶたにされた」など「患者から承諾を得ることなく、勝手な医療行為をするとの印象を閲覧者に与える」ものであったと認められました。
グーグルマップの口コミ欄で一方的に眼科医院の悪評、投稿者に200万円の賠償命じる判決(読売新聞オンライン)
この判決は投稿者が一方的にクリニックの悪評をグーグルマップのクチコミ機能に投稿したことについて、その内容がクリニックの名誉棄損にあたると認めたものです。
事実ではない批判の投稿をされ続けて事業者が迷惑を被ったということなら当然の判決だと言えるでしょう。
こうしたクリニックへの執拗な悪評の投稿というのは、裁判まで至るのは氷山の一角であり、実際には多数の問題が生じています。
そのため全国の医院の有志がGOOGLEマップクチコミ被害訴訟を行っています。
![](https://assets.st-note.com/img/1717214031003-Ls0Cnu5CSe.jpg)
GOOGLEマップクチコミ被害訴訟の弁護団は以下の問題を指摘しています。
・ビジネスプロフィールの登録を事実上強制されている
・全くの嘘のクチコミが投稿されることも珍しくなく受忍限度とは言えない
・医療機関には守秘義務や医療広告ガイドラインの規制があり反論が容易ではない
全くの嘘や誹謗中傷のクチコミであれば、グーグルが事業者側の申し立てに応じて速やかに削除をしていれば、ここまで問題が大きくなることはなかったかもしれません。
しかし、実際にはグーグルは事業者側の申し立てにはほとんど応じることはなく、グーグルがクチコミ機能を運営する上でのデジタルプラットフォームとしての管理責任を果たしていない模様です。
こうしたグーグルのクチコミ機能への不満というのはクリニックに限られた問題ではなく、飲食店や一般商店でも同様であることは容易に想像できます。
かつてグーグルのクチコミ機能は国の省庁や警察署にもあって、そこには罵詈雑言が無秩序に並んでいました。
ところが省庁のクチコミ欄は2023年12月に特にアナウンスもなくシレっと消えました。警察署のクチコミ欄も2024年4月頃に消えました。
【参考】
省庁のグーグルマップのクチコミが激烈に渋く、レビューの放置は問題では?(遠山桂ブログ)
今回の200万円の賠償責任を認めた大阪地裁判決は、投稿者の責任を認めたものですがグーグルマップの問題点を浮き彫りにするものでもあります。
GOOGLEマップクチコミ被害訴訟などの動きを受けて、判決前に病院関連のクチコミ欄を消す可能性はあるかもしれません。
一方的な悪意のある投稿についてはプラットフォームに早期の削除対応を求めたり、情報開示請求の手続きを迅速化して損害賠償請求をしやすいシステムにするという対処でよいと思います。
クチコミ機能の問題が複雑なのは、事業者側が悪質なサービス提供を行っていた場合や事業者側のステルスマーケティング行為をしていた場合の対応も想定する必要があることです。
例えば、明らかな悪質なサービスを提供している事業者があったとして、そこで被害に遭った投稿者がサービスへの批判を書いたとします。これは他の消費者にとっては被害を回避するための有益な情報ですが、その事業者にとっては名誉棄損ということになります。
事業者がプラットフォームにその投稿の削除の申し立てをした場合、プラットフォームがその情報の削除をするかどうかの判断は難しくなります。
また、ある事業者のクチコミ欄に多数の好評が同時多発的に投稿された場合、これが真実の投稿なのか事業者によるステルスマーケティング行為なのかは一般の閲覧者では区別がつきません。
ステマであるなら景品表示法の違反行為になるので、事業者には措置命令や課徴金納付命令が下される可能性があります。
プラットフォームにとってもステマ行為か否かの判断をするのは難しく、相当な手間もかかることから積極的に調査をすることは少ないようです。
【参考】
景品表示法のステルスマーケティング禁止の告示追加による広告主の注意事項(遠山桂ブログ)
以上のようにクチコミ機能というのは適正に運用をするには相当な手間と費用がかかるものです。
大規模な閲覧者を集めるプラットフォームとしてクチコミ機能の提供を続けるなら、グーグルにはその適正な運用について相応の責任を果たす覚悟が必要ということになるでしょう。
【追記】
2024年6月7日に消費者庁はステマ規制違反として初の措置命令を公表しました。
クリニックがGoogleマップに高評価投稿をすることを条件に、患者にワクチン費用を割引訴求したことがステマに該当すると認定しました。
Googleマップのクチコミ機能はステマ問題の他、本記事の主題である名誉棄損の問題もあって悩ましいところです。
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