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読書ノート644「あるかしら書店」を読んだ
こんな本といっては失礼かもしれないが、読んだからと言って、読書したといえる本なのかどうかよくわからないのだが。
保育士の家人にはあきれられたが、実は、著者のヨシタケシンスケについて、つい最近まで知らなかったことを告白せざるをえない。
「あんたの好きな"ぽたぽた焼き"のおばあちゃんの絵を描いている人よ」と言われてしまった。
そういえば、うちの業界で最近、厚生労働省が発表した自殺防止のポータルサイト『
読書ノート643「おてあげ」第1号、第2号を読んだ
掲載内容すべてを読んだわけではないので読書ノートにカウントしてよいものかどうか迷ったが、備忘録と宣伝をかねて。
この雑誌を知ったのは、主宰している大手出版社の編集者3人のうちの一人と知り合ったことがきっかけ。
彼らが「困っている人文編集者の会」(略称、こまへん)というものを作っていて、いわばその機関誌といったところ。
簡単にどこででも入手できるわけではないのだが、ようやく下北沢のB&Bに残っていた
読書ノート642「海の見える風景」を読んだ
著者の早川義夫と聞いたって、ピンとくる人は70歳以上か。
ジャックスといったってわからない人でも「サルビアの花」は知っているかもしれないが、あれを書いた人。
もしかしたら、売れた数からいえば、歌い手というよりは「ぼくは本屋のおやじさん」の著者としてのほうが、よほど知られているかもしれない。
「ぼくは・・・」はいまだに文庫本にもなって売れ続けているようだ(単行本もまだ売られている)。
僕自身が本屋に
読書ノート641「フロスト日和」を読んだ
知人にすすめられて読み始めたフロストシリーズ。
1冊目で面白くないと思ったのだから、やめておけばよかったものを、メルカリでまとめて安売りしていたのでついうっかり買ってしまったのがいけなかった。
一作目でつまらないと思ったのだから、やめておけばよかったのに、昭和の人間は、食べ物を残せないのと同様、買った本は読まないともったいないと思ってしまう。
でも世界的には高い評価とものすごい売れ行きを示している
読書ノート640「神」を読んだ
「コリーニ事件」や「犯罪」などで読者をあっと言わせたシーラッハの新作。
例によって裁判という著者の得意とする場面を使った戯曲の形をとって、いわゆる安楽死の問題が議論される。
問題提起は、妻に先立たれた、建築家でもある人物が生きる希望を失って、自身の健康にはまったく問題がないのに死を望むのであるが、これをほう助することが是か非かという議論が、本人およびそれを弁護する弁護士と医学、哲学、神学の立場の者
読書ノート639「星月夜」を読んだ
亡くなった伊集院静追悼の意味を込めて読み始めた彼の作品。
表紙の帯に「新しく、何かに挑もうと決めた。初めての、推理小説を書くことにした」とある。
こんなふうに「次は推理小説を」と思えば、推理小説が書けるものなのかだというのにはちょっと驚きながら読んだ。
いつものストーリーテリングのうまさはあるが、ちょっと話を複雑に創り過ぎという感じがしないでもない。
登場人物の多さ、現在と過去との行きつ戻りつ、い
読書ノート638「独裁者の学校」を読んだ
もう60年近く前、中学生になった夏休み、夏休みに読むべき推薦図書として、各誌・紙などにしばしばあげられていたのがケストナーの「飛ぶ教室」だった。
そういうものは読むべしと思っていた健全な読書少年は、それ以来、岩波書店のケストナー全集を読み、その他のいくつかの作品をも読み続けてきた。
ケストナーがナチスなどから焚書の対象とされるような気骨あふれる作家であることを知ったのは、後年になってからのことだっ
読書ノート637「羊の目」を読んだ
亡くなった伊集院静の作品で、未読だったものを読んで追悼しようということで、過去の作品をいくつか買い集めた。
その中で、タイトルも知らなかった作品で、ヤクザを扱った内容ということで興味を覚えて読んでみた。
いつもながら、絶妙なストーリーテリングと展開で、長さを感じさせずに読まされてしまった。
中途で戦争時の話がでてきて唐突感が否めなかったし、最後の方ではアメリカが舞台になって、この先どんな話になるの
読書ノート636「戦争の社会学~はじめての軍事・戦争入門~」を読んだ
確か、佐藤幹夫さんが、自身が主宰する「飢餓陣営」の最新号で、橋爪大三郎がガザについて書いたものが掲載されるにあたって読んだというような意味のweb上の投稿を見て購入したのではなかったか。
佐藤さんのコメントは言葉少なめに、ちょっとネガティブなものだった気がしていたが。
橋爪がいうには戦争にいて社会学的にまとめた書かれたものがこれまでになかったということだが、前半、いや4分の3くらいは、過去の歴史に
読書ノート635「永遠の詩(2) 茨木のり子」を読んだ
読むつもりだったわけではない。
渡米してしまった娘が残していった荷物の中にあったのを、何気なく手に取ったら読んでしまった。
表紙にも記されている「自分の感受性くらい自分で守れ ばかものよ」のフレーズで有名な「自分の感受性くらい」以外は、いかにも詩らしい詩というか、難解な作品が多いのだが、死後に発見されたという箱詰めされていた、早くに亡くなった夫への深い思慕がうかがえる作品群がいい。
作品ごとに付さ
読書ノート634「客観性の落とし穴」を読んだ
この本がよく売れているらしい。
今、多くの人が、客観性に懐疑的だということなのだろうか?
何とはうまく言えない、言語化できない、社会や世界の不条理、不具合、おかしな進み具合に対する疑念、疑問に応えてくれる、なんかそんな手がかり、予感を「客観性の落とし穴」という題名が感じさせてくるのだとしたら、この一冊はタイトルだけで成功したともいえそうだ。
最少の2章くらいは、ちょっと退屈な展開なのだが、まあ、客
読書ノート633「少年譜」を読んだ
亡くなってしまった伊集院静の短編作品集。
「大人の流儀」シリーズや最近の長編などはいくつも読んでいたが、昔の作品はあまり読んでいなかったと気づき、いくつもの作品を追悼がわりに立ちて続けに購入してしまった。
伊集院の先品はタイトルがどれもあまりよろしくないと感じていたが、これはいい。
タイトルだけで作家らしさが伝わってくる。
読み終わって、なんというのか、一抹の涼、静謐、などという言葉が浮かび上がっ
読書ノート632「禍根」(上)(下)を読んだ
ご存じ、パトリシア・コーンウェルによる検視官、ケイ・スカーペッタのシリーズ最新作。
同シリーズを追いかけている人は先刻ご承知だが、かつては毎年、クリスマスの時期に新作が発表されていて、年末年始の読書の最大の楽しみのひとつだった。
それが30年近くも続いていたのに、数年前にパタリと止まってしまい、著者が執筆意欲を失ったのか、はたまたコロナ禍で命を落としたのではないかなどと心配させられていたが、突如と
読書ノート631「クリスマスのフロスト」を読んだ
昨年、知人にすすめられて読んだ、スウェーデン人作家、ヘニング・マンケルの刑事ヴァランダーシリーズの文庫全17冊を読了したところ、同じ知人から「次はこれを」と送られてきたのがこの作品。
主人公の刑事フロストという名前に聞き覚えはあったものの、全然知らなかった作家の作品を読んだ。
文庫本にして500ページをこえる作品で、翻訳は、かなり独特のテンポと描写を全体に維持させていてユニークなのだが、いまいち面
読書ノート630「銃弾の庭」(上)(下)を読んだ
スティーブン・ハンターによる、ご存じ、ボブ・リー・スワガーのサーガ。
と言っても、本書は父のアールの話で、時は第二次世界大戦のさなか、イギリス軍を悩ますドイツ軍のスナイパーをあぶりだす役割を、自身スナイパーであり、既に太平洋戦線でスナイパーとしての勇名をはせた、ボブ・リーの父、アール・スワガーがおおせつかるという話。
これまでにも、父、アールを主人公とした作品はあったし、ボブ・リー・スワガーのサー
読書ノート629「僕の好きな先生 」を読んだ
複数の知り合いが言及し、すすめてもいたので気になっていた本だった。
表紙に顔を出している、漫才のかまいたちが好きなわけでもなんでもないのだが、本書で紹介されている、知的障害のある生徒の送迎についての同級生たちの議論についての記事が報道された際には自分もFacebookで紹介したりしていた。
本書全体は、大阪のひとりの小学校長がコロナ禍で大阪の教育行政を公然と批判したことをきっかけとして、この校長先