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読書ノート660「「記憶」のなかの戦後史」を読んだ

いまや死語とさえいえるかもしれないが、社会派ルポライターという呼称が実にぴったりの向井承子さんの最新作。
向井さんとは、スペース96/エンパワメント研究所で
「たたかいは命はてる日まで 医師中新井邦夫の愛の実践」https://amzn.to/2rxjl2W

を復刻させていただいて以来のご縁。
その経緯については下記をお読みいただきたい。
「たたかいはいのち果てる日まで」復刻顛末記
https://bit.ly/3li6PQS
その向井さんの最新作が本書。
献本をいただき、何気なく読み始めたら面白くて一気に読んでしまった。
彼女の生涯を、幼少期の東京大空襲から逃げ回ることから始まり、北海道への疎開、米軍による占領下での民主化教育、北大時代(なんと、60年安保全学連の委員長だった唐牛健太郎と同期だっとは本書で初めて知った!)、北海道庁での仕事、東京へ出てきて市川房江、紀平悌子らとの出会い、公害闘争への取り組み、さらにはライターとしての独立へと駆け足で描いている。
これらの目の回るような展開と取組みを、子育て、子どもの病気、親の介護、さらには自身の病とも戦いつつこなしていて、まさに戦後史そのものとして教科書にもなりうる内容である。
私自身も、60年代後半からの動きについては、同時代を生きたものとしてリアルに理解できる出来事の数々が描かれていて、その意味でも興味深く読める内容であった。
本書中には、「たたかいは命果てる日まで」復刻の関係で私の名前まで登場しているのには驚かされた。
末尾の著書の一部を紹介する中に「北大恵迪寮の男たち: 60年安保から三十年」を入れておいてほしかったなあ、あの作品、好きなもんで。

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