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読書ノート654「恋しくて」を読んだ

この本を読んだきっかけは、朝日新聞の天声人語。
不勉強で知らなかったのだが、短編の巨匠といわれ、ノーベル文学賞も受賞しているアリス・マンローが亡くなったことにふれ、「ジャック・ランダ・ホテル」は、翻訳した村上春樹をして「芸だよなあ」と言わしめた作品と紹介されていたから。
で、さっそく、その作品が掲載されている本書を入手して読んでみた。
しかし、残念ながら個人的にははずれという印象だったなあ。
本書の全体は村上春樹が選んだ海外ラブストーリーの9編を翻訳したものという構成になっていて、もちろん翻訳も村上春樹。
まずは「ジャック・ランダ・ホテル」から読んだのだが、全然、面白くない。
他の8編も読んだが、いずれも面白くない。
短編というと、O.ヘンリーのようなオチをつい期待してしまうのだが、そういう納得感の得られる作品はひとつもなかった。
作品ごとに、村上春樹が短い評価を加えているのだが、村上春樹ファンなら興味がわくのかもしれないが、これも全然興味がわかなかった。
最後に、想定外だったが、9編とは別に、村上春樹による書下ろしが1編あった。
読み始めてすぐ「なんだカフカの『変身』みたいだな」と思ったら、やはり、カフカを意識して書いたものだと後書きにあった。
村上春樹の作品は実はあまり好きでなく、たいして読んでいないのだが、翻訳はいくつか読んでいて、いつも感じる、すごくこなれた日本語の部分とそうでない部分がないまぜになっているのを本書でも感じさせられた(プロの翻訳家に対してたいへん失礼で申し訳ありません)。
村上春樹ファンという基礎票があって、ある程度は売れているのかもしれないが、人にはすすめられない1冊。
天声人語の書き手は何がよかったのかなあ?



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