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赤いリボンの あいうえお

今朝の空気は、新鮮で、すっきりとして、純度が高い感じがします。
きっと 昨夜の雨で、空気が綺麗に洗われたのでしょう。
青空も、いつもよりも、より青く澄んでいるようです。

りこちゃんと こざる達は、いつも通り 皆で一緒に朝ごはんを食べています。
「りこちゃん、温泉玉子、どうぞ。」
「ありがとう、こざるちゃん。」
「つるんと飲み込まないように、少しずつ食べてね。」
こざるちゃんは、りこちゃんの隣で、ちゃんと見ています。
「美味しいねぇ。」
りこちゃんは、嬉しそうに温泉玉子を食べます。

春休みも終わって、朝のこの時間に、
子供たちの声が聞こえてくるようになりました。
思えば、春休みの間は、しん としていました。
いつもは、当たり前過ぎて気がつかないけれど、
なくなると、あれ? と感じること、ありますよね。

こざるちゃんは、窓から外を覗きます。
近くの小学校へ行く子供たちが 歩いています。

「あのピカピカの黄色い帽子は、一年生だ!」
新品の帽子が、朝日を浴びて輝いています。

「ランドセルもピカピカだ!」
かなり大きく見えるランドセルも、服も、靴も、ピカピカです。

「持ち物や、着ている物だけでなく、本人がピカピカだもんね。」
こざるちゃんは、呟きます。

「あ! 一年生だね。」
他の こざるも一緒に 覗きます。

「ぼく、赤いリボンのあいうえお、思い出したよ。」
こざるちゃんは、懐かしそうに言います。

赤いリボンのあいうえお、
それは、子供たちが ひらがなを学ぶための
あいうえお、かきくけこ….の五十音表のことです。

「前に、りこちゃんが作ってくれた五十音の表だね。」
「うん、赤いリボンを りこちゃんがつけてくれた表だよ。」

数年前の四月に、一年生になったばかりの子供たちと、
お母さんたちが、こざるカフェに来たことがありました。
その時に、子供たちは、学校でもらったのでしょう、
あいうえお…と書いてある五十音表を持っていて、
こざるちゃんは、いいなぁと思ったのです。

「あれは、小学校に行けば、もらえるのかなぁ?」

すると りこちゃんが 手書きで白い紙に、
あいうえお、かきくけこ….と書いて、赤いリボンをつけて
こざるちゃんに、作ってくれました。

こざるちゃんは、飛び上がって喜んで、
ずっと眺めて「あいうえお、かきくけこ、さしすせそ…」
と読んでいました。

「真っ白な紙に、黒いペンで きれいに書いてくれて、
赤いリボンをつけてくれたんだ。」
「まだ持ってる?」
「あるよー、後で、持って来る!」

こざるちゃんが ピカピカの一年生の気分になった
嬉しい嬉しい思い出です。
りこちゃんにとっては、大して手間がかかることではなかったのですが、
こういうこと、こういう小さなことでも、
嬉しいことは、子供の心に いい思い出として ずっと残っています。

子供は、まだ体が小さい分、
大人にとっては 小さなことでも、
子供にとっては とても大きなことなのかもしれません。

「あの子たちも、あいうえお表、持っているのかな?」

皆、朝食を食べ終わったようです。

「もうすぐ、朝ドラが始まるよー。」
「じゃあ、食後のコーヒー、淹れてくるよ。」
こざるちゃんが立ち上がります。
「お願いねー。」


こざるカフェは、今日も ゆっくり始まって
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。

読んで下さって、どうもありがとうございます。
明日は、雪になるかもしれないそうです。
どうぞ皆さま、お身体ご自愛ください。
よい毎日でありますように (^_^)


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