【ショート】ノイズだらけのふたりだけの嘘 ⒈
日本がまだバブルに浸っていた時代。
あの部屋で彼女と会う時間だけが唯一の呼吸できる瞬間だった。
「あなたもいい歳なんだから」
なぜ母親とは、あれほど世間体を気にする生き物なのだろうか。
聞こえの良い会社を好み、見栄えの良い生活を望み、気立ての良い女性を求める。
親の心配とは、いつの時代も先走り過ぎている。
「わかってるから」
たとえ、そう返したとしても「心配してるから、言ってるんやないの」と決まり文句。
この三十年何度繰り返しても更新されないやり取りは、俺の嫌いなものとして