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ドライ・フラワー(脚本)

(このお話はフィクションです。シナリオセンターの課題を編集したものになります。)

   人 物
藤江建(13)中学生
江頭翼(37)ゆうちょ銀行員
倉満紀治(38)ゆうちょ銀行員
野々宮太野亮(52)ゆうちょ銀行員
来宮由比(15)中学生
理沙(20)劇中登場
直倫(20)劇中登場
女子生徒A
女子生徒B
検事 



○紀治アパート・室内(夜)
倉満紀治(38)と江頭翼(37)がソファで身を寄せあって、テレビを見ている。

○映像・恋愛ドラマ
直倫と理沙が向かい合っている。
理沙「なんで来たのよ!」
直倫「彼女とは別れてきた。やっぱりお前と居たいんだ、好きだから」
理沙「バカ・・・」
理沙、直倫に抱きつく。

○紀治アパート・室内(夜)
翼、倉満の肩に顎を乗せる。
翼「ねぇ、私のこと好き?」
倉満「うん」
翼「うんじゃわかんない〜、好きって言って?」
翼、倉満の頬を指でグリグリする。
テーブルの上で携帯が鳴る。
携帯を手にする倉満に、
翼「ねぇ?」
倉満「あ?うんうん。ちゃんとしてたらね」
携帯を見て微笑む倉満。
冷めた目で倉満を見つめ、翼が立ち上がる。

○通学路(朝)
中学生の集団が何組も歩いている。
集団から離れて、藤江建(13)が一人で俯きながら歩いている。
草むらから飛び出して来た猫に警戒する建。
由比の声「そんなに怯えなくても大丈夫だよ。この仔も怖がっちゃう」
建の背後から来宮由比(15)が猫に手を伸ばす。
由比「猫苦手??」
建「あ・・え・・」
由比「こんなに可愛いのに」
由比、猫を撫でる。
建「いや・・や・・」
由比「じゃあね、またね?」
立ち上がった由比が手を振りながら、去っていく。
建、小さく手を振りながら由比に見惚れる。
その様子を窓から見つめている翼。

○同
T 翌日
猫を探す建。
建「いない・・・」
窓が開く音。
肩を落とす建の後ろ姿を見つめる翼。
翼「君!」
建、びっくりして、周囲を見回す。
1Fの紀治の部屋の窓から顔を出す翼。
翼「君だよ、き〜み」
自分を指差す建。
翼「そう、そう君!おはよう!」
笑いかける翼に会釈する建。
翼「今日は可愛い先輩来ないね?」
目を見開き、俯く建。
翼「私、江頭翼。よろしくね」
建、小さく会釈する。
翼「君の名前は?」
建「たけっ・・たけ・・」
翼「たけ・・。なんか可愛い名前だね?君にピッタリかも!」
建、両手で胸元を掴み、小さく笑う。
翼「あ、学校行かなきゃだよね?引き止めちゃってごめん!」
建、首を振る。
翼「じゃあ、タケ!学校行ってらっしゃい!」
建、翼を気にかけながら、去っていく。
翼が窓を閉めると、ソファで寝ている倉満の姿が反射している。


○紀治アパート・室内玄関(朝)
制服の上にブルゾンを羽織る翼。
翼「じゃあ行ってくるね?課長には今日はお休みしますって伝えておくから」
翼、パンプスの踵を返し、部屋を出ていく。
紀治、目と口を開けたままピクリともしない。

○ゆうちょ銀行
翼と野々宮太野亮(52)が立ち話をしている。
太野亮「そうか〜、今日は倉満くんお休みかぁ〜」
翼「すいません課長、なんか昨日から具合悪いみたいで。本人ももしかしたらイン
フルの可能性もあるからって、大事を取って休むって」
太野亮「なるほど。江頭くんにお大事にと伝えてください」
翼「はい」
太野亮、去って行く。
翼、窓に映る自分を見て、ニヤリと笑う。

○通学路(朝)
建が歩いてくる。
窓が開き、翼が顔を出す。
翼「タケ、おはよう!」
翼が窓から身を乗り出している。
建「おはよぅ・・」
建、頷きながら挨拶を返す。
翼「今日は?」
建、自分が歩いて来た方向を振り返る。
建から少し離れた先に、由比が友達と一緒に楽しそうに話しながら歩いている。
翼「ほーほー」
顎を摩りニヤつく翼。
翼「話しかけちゃえ!」
建、顔を真っ赤にして激しく拒否する。
翼「チキンだなー」
下唇を噛み締める建。
由比が建の横を通過する。
建「あ、おは・・おは・・おはよう・・!」
由比が足を止める。
由比「え?」
女子生徒A「由比、どうしたの?」
由比「うんん、何でもない」
由比が去って行く。
女子生徒B「何、知り合い?」
由比「う〜ん、覚えてないんだよね・・」
女子生徒A「まさかナンパじゃん?」
女子生徒B「うっそ~やだ〜」
由比らの背中を見つめて落ち込む建。
翼「最初なんて、みんなこんなもんだよ」
建、不貞腐れて何度も小刻みに頷く。
翼「塵も積もればなんとやら!だから、気にせず・・・」
建、足早にその場を去って行く。
建の後ろ姿を見送る翼。
翼「若いなぁ〜」

○通学路(夕)
建が石を蹴りながら歩いている。
翼「タケ〜!おかえり!」
建、改まって会釈する。
翼「君は本当に無口だな。そんな恥ずかしがり屋さんでどうするつもりだ~」
建「違っ・・違っい・・います」
翼「ん?」
建「ぼ・・僕っ・・うまっ・・く喋れなくっ・・て・・」
翼「ふ〜ん。君、もしかして吃音持ちとか?」
建、激しく頷く。
翼「そっかぁ〜・・偉いね!」
建「え?」
翼「だって今朝、吃音で上手く話せないのに勇気出して声かけてたじゃん?カッコ
良いし、度胸あるよ」
建、肩を縮こませて照れる。
翼「ねぇ、ちょっと来て?」

 × × ×

窓枠に手を添え、翼を顔を突き合わせる建。
翼「今教えた通り、ゆっくり話せば大丈夫!」
建「でも・・・」
翼「焦らなければ大丈夫だよ。伝えたい気持ちがあるなら、ゆっくりでも良いんだじゃないかな?私だって最初は不安だったけど・・あの時勇気出して良かったもん、だって今は私達ラブラブだし」
翼、振り返り寝ている彼氏を見つめ、ニッコリ微笑む。
建、背伸びして部屋の中を覗き込む。
建「カレの・・人、お疲れなんですか?よく寝てますね?」
翼「許せないよね。こんな可愛い彼女の私をほっといてさ」
翼に困惑して、苦笑いをする建。
翼「ね、君は絶対に大丈夫!私が保証する」
笑い合う建と翼。
建「お姉さん、ありがとう・・・ござ・・います」
建N「この一週間後、僕がお姉さんと話すことは無くなった」

○ニュース映像
交際相手を殺害 37歳の女を逮捕

○法廷
証人として検事から質問を受ける建。
検事「君はこの江頭被告の部屋で殺された倉満紀治さんの死体は見ましたか?」
建「見てません・・外からはよく見えませんでした」
検事「では、質問を変えます。江頭被告とはどのような関係でしたか?」
建「お姉さんは・・・良い人です。僕に・・優しくしてく・・れまし・・た」
建、翼を見つめ、
建「お姉さん、あの後話しかけれ・・ました。喋れた!お姉さんの教えてくれた・・通りに話しかけたら、ちゃんと話せたん・・です。有難うございました」
翼、虚ろな目で建を見つめ微笑む。

○ニュース映像
交際相手を殺害 37歳の女に懲役14年の判決

おしまい。

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