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短編

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短編小説を載せていこうと思います。拙い文章ですが読んでいただければ幸いです。
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新しい出会い

新しい出会い

彼からの告白に私は何も驚かなかった。
やっぱりかというくらいで、むしろいつか来るだろうとどこか待ち構えている自分がいた。

彼は上擦った声で緊張しながらも誠実に自分の気持ちを伝えてくれた。
私が長年の恋人と別れたので玉砕覚悟で告白をしたと少し気まずそうに言った。
予期していたくせに彼への返事に何と答えたらいいかわからなかった。

しかし、彼は私に返事を求めなかった。
嫌なら離れるし、構わないならこ

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「バカンス」「コップ」「絶体絶命」

「バカンス」「コップ」「絶体絶命」

彼女と二人でバカンスに出かける。
それは僕にとって夢のような出来事であった。

僕と彼女が出会ってもう一年になる。
一目惚れだった。
この人しかいないと本気でそう思った。
いや、今でもそう思っている。

僕と彼女との恋には様々な障害があった。
それこそ絶体絶命とも思えるような出来事さえあった。
しかし、二人で乗り越えてきた。
そして、それ以上に幸せなことも多くあった。

最後の思い出にとホテルのバ

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季節の変わり目

季節の変わり目

「お父さん、そろそろご飯できますよ」
二階にいる洋一に聞こえるよう大声で呼んだ。
洋一は返事の代わりにギィギィと階段を鳴らして降りてきた。
「今日はカレーか」
洋一はぼそっと呟くだけだったが、内心喜んでいるのが私にはわかった。彼はあまり感情を表に出すタイプではなかったが、顔にははっきりと出る。その証拠に目を細め、口角を少し上げて微笑んでいるのを私は見逃さなかった。
洋一に食器を出すように頼むと彼は

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ベネチア

ベネチア

張り巡らされたように流れる川からは絶えず水のせせらぎが聞こえる。

七時を告げる鐘の音がサンマルコ広場のほうから聞こえてきた。初めて聞いた時は、想像していたよりもずっと長い間隔で鳴っていることに感心した。

ここアルバトルホテルの喫煙所は廊下の小脇にあるベランダにあった。

濃淡の違う茶褐色の建物が四方を囲んでおり、開け放された縦に長い窓から顔を出した妙齢の女性がにこやかに挨拶をくれた。

シンプ

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カフェ

「モーニングのトーストはいかがなさいますか」
メニューも開かずにホットコーヒーを二つ頼むと店員がすかさず尋ねてきた。
無料ということだったので有難く頂戴することにしたが彼女は首を横に振った。
彼女はすでに怒ってはいなかったが、それでもまだどこか緊張しているような面持ちであった。

夜中に始まった言い争いは苛烈を極め、気づけば朝になるまで続いた。
事の発端は来月に計画している旅行のことだった。でもそ

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ドライブ

ドライブ

ようやく登板車線に入った。
前のトラックがウインカーを出して車線変更をする。
アクセルペダルを徐々に踏み入れる。スピードがぐんぐんと加速していく。

煙草の匂いで充満している車内を換気するために窓を全開に開けた。
風が唸り上げながら強烈に顔をはたきつける。
 
高速道路なのに一車線しかないため、トラックに合わせて走らなければならずイライラしていた。
その証拠に昨夜開けたばかりの煙草はもう空になって

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空港

空港

「別れたよ」

彼女は僕の言葉にそっかと一言だけ返した。

彼女はそれ以上何も言わず、ただ黙って運転を続けた。

いつからかお決まりになった空港へのドライブ。
いつもと違うのは今日は彼がいないということ。
彼女と二人きりになるのは別に珍しいことではない。

それでも今日はいつもと違った。

見慣れたはずの窓からの景色も違って見える。

二四時間営業のファミレスの看板も。
ちらちらと光る工場地帯の赤

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青い靴

青い靴

その国ではみんながたくさんのくつを持っています。

赤、黄色、緑、紫、黒、白。
そしてそれらは色ごとに用途が分けられています。
学校へ行くなら学校へ行くためのくつ。パン屋へ行くならパン屋へ行くためのくつ。公園へ行くなら公園へ行くためのくつ。

それが、この国のルールでした。

トリエラの家にはたくさんの兄弟がいて、みんな一足ずつしかくつがありませんでした。だからこの国で一番安い学校へいくための赤い

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祈り

祈り

ぼんやりとテレビを見ているとけたたましく携帯が鳴った。

地震だ。
 

少し遅れてテレビにもテロップが流れた。
自分が揺れを感知していないあたり震源地は遠く、どこか緊迫感に欠けていた。

こう言ってはなんだが、地震のような人間が太刀打ちできない災害が起きると、自分の身に起きなかったことにまず胸を撫で下ろす。

知人、友人のほとんどがこの辺りに住んでいるため、日本のどこかの地域の事でも外国のように

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柔らかな陽光

柔らかな陽光

 怪しい、というよりは少し淫靡な空気が部屋に漂っている。

僕がいつものようにチャイムを鳴らさず部屋に押し入ると「やあ」と言ってすぐさま布団に入った。

「眠いです。寝ます。どうぞご自由に」

彼女の部屋はクリーム色の壁に黄緑のカーテン。長方形のテーブルと小さめのテレビ。あとは頑丈そうなラックが隅っこにあるくらいで整然としていた。

何も敷かれていないフローリングに腰を下ろし、何を探すわけでもなく

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Regret

Regret

絶対に変わりたいと思っていた。

いつか変わると信じていた。時が経てば変われると思い込んでいた。
でも、何も変わらなかった。いや、変えようとしなかった。環境や人のせいにしてきた。それが甘えた言い訳だと知っていた。

それでも、崩れそうな心を保つためにはそうすることしかできなかった。

滴る水が岩を穿つように、僕の心はゆっくりと、でも確実にバランスを崩していき遂に瓦解した。

そうして何もかもが遅か

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リピート

リピート

彼女の瞳に涙が浮かんでいた。
彼女はきつく歯を食いしばり、浮かべた涙をこぼさないようにと眉間に皺を寄せている。

「うん…大丈夫、大丈夫だから。本当に…」

気丈に振る舞っていても声は微かに震えていた。
長らく一緒にいたが、彼女の涙を見たのは初めてだった。

「本当にごめん」

謝っても何も変わらない。そして、許しを請うている訳でもない。ただ、謝る以外に紡げる言葉がなかった。

「いいから…本当に

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