マガジンのカバー画像

ものがたり

24
物語はこっちに集めます。
運営しているクリエイター

#ことば

たわむれ

たわむれ

僕はどうして人間なんだろうと考えたことがあるか。
世界はどうして透明なんだろうと考えたことが。
或いは空の色を移したバターの味だとか、それらがトーストの上で溶けていく速度について。
愚かな君と僕の300日後については後で話そう。あっという間の50日を突破して、残りの15日は誰かにあげる計画でもいいな。

夕焼けの燃える世界の意味は。月がわざわざ満ち欠けをして、星がその遺影を夜に残し続けていく意味は

もっとみる
ハッピーエンド

ハッピーエンド

透明な蜻蛉を抱いて、笑う少女がいた。

夏の青い空に照らされて、地面から雨のにおいはすっかりと消えてしまったらしい。青い鳥を肩に乗せた少年は、仄暗いトンネルの向こうへどんどんと進んでいく。



ぎざぎざに割れた空き瓶の欠片で、僕たちは緑色の血液を作った。流し込む先には、もう既にきらきらした音が待っていると知っていた。

透明な蜻蛉は日向に揺れて、もう誰も笑ったりはしなくなるけれど。



もっとみる
loop and,

loop and,

眩い朝だった。

或は、それは夜だったのかもしれない。

薄っすらと目を開けた僕の視界に、大きな影が揺れた。頬を撫でる風は確かに自然な不安定さを保ち、ここが外であるということを僕に知らせる。

淡い桃色の、綿菓子のような空が見えた。

確か、僕は一人で学校からの帰り道を歩いていたんだ。

いつも通りの見慣れた景色。すれ違う友人は、僕が住むアパートの4ヶ月分くらいの値段もするロードバイクにまたがって

もっとみる