影武者を立てた弟王 応神天皇さま二一 神話は今も生きている ことの葉綴り六四五
納めの水天宮
十二月五日。毎月、五日は、子育てや安産にご利益のある「水天宮」さまのご縁日。十二月の五日は、年内最後のご縁日なので、「納めの水天宮」。今年、水天宮さまで頂いたお札があればお参りして納めてるのにいいですね。
暦は、六曜は「赤口」昼前後の正午が吉。
十二直は、万物を建て生じる日「建」。物事を始めるのに佳い日。神仏の祭祀、お参り、婚礼、棟上げ、引っ越し、旅行、服の着始めに吉。
二十八宿「昴」も、神仏詣で、お祝いごと、新規事業、婚姻に吉。
十二月に、今年の振り返りと、新年を迎える準備の予定など“建てる”のにいい日曜日ですね。
<ことの葉綴り>全体のご案内
「ことの葉綴り」は、神話の物語を神さまごとに「マガジン」に分けて読めるようになっています。「神さまも“失敗して成長した”」と、魅力的な神さまごとに18のマガジンに分けています。全体のご紹介はこちらをどうぞ
皇位継承を巡る兄王と弟王
誉田天皇こと、第十五代応神天皇さまが身罷られたあと、皇位継承を狙う、長子の皇子大山守命は、弟、宇遲能和紀郎子の命を奪い天下を獲るために反乱を起こします。
兄の反逆を知った弟、宇遲能和紀郎子は、兄の兵士たちが、宇治川を上り攻めてくるのを予想し、川べりの草むらに自分たちの兵士を隠し、山の上に陣営をつくり、身代わりの影武者を仕立てました。
遠くからでも、この陣屋で家臣たちが恭しく礼をする床几に座る“王”の姿がよく見えます。
そして、宇遲能和紀郎子自身は、この陣屋にはいませんでした。
船頭に扮した弟王
粗末な布の衣と袴を着て、賤しく貧しい身なりの船頭に扮したのです。
兄は、必ずや、山の上の陣屋を攻めるために、この川を渡るはずだ。
宇治川を渡す船の渡し場に、船と櫓や櫂を準備していました。
さらに、船底にある簀の子が、つるっと滑るように、さな葛の根をすりつぶし、この汁を塗っていたのです。
そして自らは、船頭に扮して、兄を待ち受けたのです。
ということで、三択は、1 粗末な身なりとなり、宇治川の船頭となった……でした。
そこへ、弟を討つ気まんまんの、兄、大山守命たちが、兵士であることを隠してやってきました。
けれども、兄は衣の下には、鎧を着ています。
おい、船頭よ。川を渡ってくれ
へへ―。
大山守命に、頭を下げた船頭の顔は、傘を被っていて見えません。
あの陣屋の床几に、弟王は座り、指揮をとっているのか……。よし、待っていろよ!
大山守命は、船着き場から船にのりこむとき、宇治の山の上にある、絹で張られた陣幕を、しっかりと見上げています。
その大山守命の姿を、傘の網目の隙間から、凝視する、弟王の視線がありました……。
大山守命は、何も知らずに、この船頭の船に乗り込んでいきました。
そして……。
さて、兄王と弟王の行方はどうなるでしょうか?
―次回へ、
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