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永遠の命 伊邪那岐・伊邪那美さま⑳神様も失敗して成長した ことの葉綴り。其の七二

火の神八柱は、刀剣の工程!


こんにちは。超サボり屋の月曜の朝は忙しい(笑)。それでもお仕事の間にnoteに向かうひとときがあって。これもテレワークのおかげです。ありがたいことです。
神話の神さまたちも、人間と同じように悩み苦しみ傷つき涙する“お姿”は、私たちに勇気を与えてくれる。
それを伝えられればいいなと、今日も綴らせて頂きます。
いつも、お読みいただきありがとうございます。
今回も神さまの漢字が多いです。ご了承を。

最愛の妻を亡くされた伊邪那岐命さまは、
あまりのショックから“ワレ”を見失われ
妻の死の原因となった火の神の迦具土命さまの首を
十拳の剣で斬り落としてしまわて……。
すると、そこから、鹿島神宮のご祭神である
建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)さまをはじめ、
とても強いご威力をお持ちの
八柱の神さまがお生まれになりました。

この八柱の神さまは、実は、
刀剣をつくりあげる順序にほかなりません

前回を振り返ってみますと……。


鉄鉱を火で焼いて鍛え上げていく。
そして出来た真赤に焼けた刀剣を
谷間の清らかな冷水に入れて鍛える
焠く(にらぐ)。
この模様を生まれた神さまが
表されています。

そして、火の神さまの血が
岩石に飛び散るのは
まるで、刀鍛冶が鉄を鍛えるときに
飛び散りゆく火の粉を
思い起こさせてくれるのです。

一連の神さまが、誕生なさる流れにも
一つ一つ
私たちが知らない
“もの”や“いのち”が
「創造」されゆく過程が描かれている。
すごいですよね~。

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火の神の体から火山が誕生

そして、斬り落とされた
火之迦具土神さまのご遺体からも
神さまが誕生
していきます。


火之迦具土神さまの頭(かしら)からは、
正鹿山津見神(まさかつやまつみのかみ)
山の頂きの下りはじめる坂のことを「まさか」というそうです。

胸からは、淤縢山津見神(おどやまつみのかみ)

お腹からは、奥山津見神(おくやまつみのかみ)

陰部からは、闇山津見神(くらやまつみのかみ)

左手からは、志藝山津見神(しぎやまつみのかみ)
これは山に木を茂らせる神様
右手からは、羽山津見神(はやまつみのかみ)

左足からは、原山津見神(はらやまつみのかみ)
右足は、戸山津見神(とやまつみのかみ)

正鹿山津見神から戸山津見神まで八柱。

正鹿(まさか)は、山の頂から下りはじめる真坂を意味します。
そして、淤縢山(おどやま)は、山を下っていく様を。
谷底を意味する闇山(くらやま)
木が茂る山から、山の端、そして野原に出て
人々のいる里山の戸へとたどり着く流れが表されています

そして、火の神を斬った刀の名を
天之尾羽張(あめのをはばり)
伊都之尾羽張(いつのをはばり)とも呼びます。

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永遠の生命

なぜ、火の神さまのお身体から、
山の神々がお生まれになったのでしょうか?

火山の多い日本列島
百名山のうち47が火山だそうです。
火山の山脈が一度爆発すると
そこから溶岩やがあふれ出していき
山のふもとや一帯にも流れていきます。
山自体も、火の威力で燃えつくされていく。

けれど、時がたつとどうなるでしょう?

火山の噴火爆発により
自然の恵みももたらされる
のです。

溶岩は、美しい景観へと姿を変えて、
山火事で燃え切った山肌にも
いつか植物の種が芽吹き
緑が復活していきます。
そして、温泉が湧き出ていく

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死は、決して終わりではない。

いのちの連なり
「命」は永遠に生き続けていく。
エターナルライフ
永遠の生命
限りなき命
その生命観が、
火の神の死の物語に現れているのです。

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天地分離の「別れ」

お身体を斬り落とされながらも
これほどの神さまの礎になった
火の神も、すごいですよね。

以前、火の神誕生の意味でもご紹介しましたが。
すべてのものを焼き尽くしてしまう火
火の誕生によって、伊邪那美命さまは亡くなられました。
そして、神話でも、葬送儀礼や埋葬のことが記載されている。

心理学者の河合隼雄氏は、これを
「天地分離を物語っている」とし、

世界の神話の中に、火の神が誕生するとき
「天地分離神話」があると紹介しています。

ニュージーランドのマオリ族の
有名な天地分離神話においても、
そこに強い悲しみと怒りの感情表現があった。
人間が意識を獲得し、
それを発展せしめてゆくためには、
「分離」を体験することが必要であり、
そこには、悲しみや怒りの感情が
伴うものである。
このことをよく知っていると、
人生の各段階において必要な「分離」を、
そこに生じる悲しみや怒りの強さに
負けて避けることなないだろうし、
「分離」のプラス面の実を意識して、
そこに生じる悲しみや怒りに対する配慮を忘れ、
問題を後にまで引っ張ることも少なくなるだろう。

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人生の「別れ」を生きるとき

伊邪那岐命さまの妻との別れ
火之迦具土さまをお斬りになっての別れ

そこからは、
火の文明の誕生
鉄や刀剣の制作の過程

そして火山列島の日本の山々から
感じられる「永遠の命」の
生命観を教えてくれます。

また、私たちの人生の分岐点でも
感情が“爆発”することがあります。


けれど、この分岐点という「別れ」には
悲しみ、怒りの感情が伴うのだと
知っていることで、
意識できることで、
感情の噴火の
“溶岩流”に巻き込まれるだけではなく
悲しみは、悲しい
怒りは怒りである。
悔しいは悔しい
切ないは、切ない

だが……私は、生きる……と、
涙しながらも
別れへと向き合う
「対応力」が養えるはずです。


別れを経験したときに
悲しみも怒りも、すべての感情も
避けることなく、負けることなく
抱きしめて
そして、自分には
「生きていく力があるのだよ」

別れへの向き合い方も
教えてくれている気がします。

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―次回へ

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