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今も風習に生きる「美味しい清水」 鷲取りの翁 元伊勢九一 神話は今も生きている ことの葉綴り四二〇

鷲取りの翁(おきな)

おはようございます。休日の土曜日の朝、「ことの葉綴り」に向かえました。久しぶりな気がします。
皆さん、いかがお過ごしでしょうか?
どうぞお元気でありますように。

さて今日も、倭姫命(やまとひめのみこと)さまのご巡幸の物語を進めます。


※これまでの神代~14の神話の物語(1~367回まで)のまとめはこちらです。お好きな神様の物語をご覧になってください。新たに「元伊勢 倭姫命さま 前編」の物語もマガジンに「まとめ」ました。


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倭姫命(やまとひめのみこと)さまは、「伊勢の国に居ようと思ふ」と、お告げなさった天照大御神さまが、永久にお鎮まりになる吉き宮処を、伊勢の国で、探し求めるご巡幸を続けられています。
宇遅(宇治)の五十鈴の川上にお宮の御殿を建てる吉きところがございます
信頼を寄せる重臣の大若子命(おほわくごのみこと)が、そのお宮の候補地を見つけて参りました。

倭姫命様ご一行は、三重県を流れる大河こと宮川を下り、伊勢湾へ。そして、同じ伊勢を流れる五十鈴川へ向けて、御船を進めていきました

其の処従り幸行すれば、小浜(をはま)有り。
其の処に鷲(わし)取る老公(おきな)在りき。
時に、倭姫命、「御水飲(みもひまゐ)らむ。」と詔(の)りはまはく、尓(そ)の老(おきな)に、「何(いづ)れの処に吉き水(もひ)在りや。」と問ひ給ひき。
其の老(おきな)、寒(ひや)やかなる御水(みもひ)を以ちて御饗(みあへ)奉りき。
時に讃(ほ)め給ひ、水門(みなと)に水競(みあへ)の神の社を定め賜ひき。
其の浜の名を「鷲取り小浜(をはま)」と号(なづ)けたまひき。

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美味しい清水と心込めたご馳走

倭姫命さまご一行は、貴重な楯や鉾、ご神宝を留めおかれた「忌楯小野(いむたておの)から、御船で宮川を河口へと向かい進んでいかれます。
御船は、宮川の河口から伊勢湾へとお出になりました。そして五十鈴川との間の三角州に、小さな浜を見つけます。
その小浜で、鷲取りの翁(おきな)と出会いました

このとき倭姫命さまは、喉が渇かれて、「お水を召し上がろうと思う」と、仰って、出会った鷲取りの翁に、「どこによいお水はありませんか?」と、お尋ねになったのです。

それを聞いた鷲取りの翁は、「しばしお待ちくださいませ」というと、
倭姫命さまに、冷たい美味しいお水を汲んできて差しだし、さらにその美味しいお水をつかい、ご馳走をつくり、倭姫命さまに奉ったのです。

そのお水はまろやかで美味しく倭姫命さまの喉を潤し、またその水を使って料理をしたご馳走もどれもおいしく、旅の疲れも吹き飛んでいくようでした。

鷲取り翁さんは、美味しいお水はもちろん、伊勢の地元の食材で、長旅の疲れを癒していただこうと、心を込めてお料理されたのでしょうね。

倭姫命さまは、「これは、なんとすばらしいことでしょうか」と、お褒めになり喜ばれて、その地に、鷲取りの翁の功績を讃えて「水饗(みあえ)神社」をお定めになりました。
そして、その浜を「鷲取り小浜(おはま)」とお名づけになったのです。

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美味しい水、伝説の井戸 旧跡「忘れ井さん」

この物語の場所と、いわれているのは、伊勢市大湊町の鷲が浜こと「大湊公園」です。“鷲が浜”の名前も残っているのですね。
伊勢の方々にとっては、初日の出スポットして人気なのですって。素敵ですね。浜ヒルガオの群生地で、これからの季節が見ごろですね。ウミガメの産卵地でもるんですって!

と、鷲取りの翁が、美味しいお水を汲んだとされる伝説の井戸は、「忘れ井」。現在は市内の児童公園の一角に旧跡として残っているそうです。
地元の方々は「忘れ井さん」と親しんで呼ばれているそうです。
倭姫命さまが、「水饗(みあえ)神社」とお定めになったお社は、大湊町の「日保見山八幡神社」さんの境内へと、明治四十年にお遷りになられたそうです。
ご祭神は、水戸御饗都神(みなとのみけつかみ)さまです。

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「御食神社」の「辰の井」のご神水は今も!

もう一つ、この物語の伝承地は、同じ伊勢市神社港(かみやしろこう)にご鎮座する「御食(みけ)神社」さん。
御食=水饗(みけ)ですもんね。
ご祭神は、水戸御饗都神(みなとのみけつかみ)さまです。
こちらは、伊勢の神宮の外宮(げくう)こと豊受大神宮(とようけだいじんぐう)さまの摂社になります。
境内には、清らかな水を汲んだとされる『辰の井』も!
こちらでは、新年最初の辰の日に、「お水取り」が行われるそう。
この初水は、一年間の水難・火難除けになるといわれ、地元の皆さんは、この初水を家の周りにかけたり、キッチンにお供えするそうです。
倭姫命さまがいただき喉を潤し、ご馳走を食されて、元気回復された清らかな水!

神話って、本当に今も生きていますよね。
暮らしの中に、風習として自然と根付いていることのその尊さ
そして、今の時代を生きる私達の「いのち」とも、繋がっているのですね。

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―次回へ
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