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肥の河の精霊の大蛇 本牟智和気王12神話は今も生きていることの葉綴り。三一五

逃げるは恥だが……?

こんにちは。土曜日の午後、「ことの葉綴り。」のひとときです。
これまでの「ことの葉綴り。」神話のまとめはこちらです!


生まれて一度も“もの言わぬ皇子”だった本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)は、出雲の大神さまへのお参りをしたあと、初めて言葉を発するという奇跡が起きました。

そのあと、出雲の檳榔(あぢまさ)の長穂宮(ながほのみや)では、たいそう美しい肥長比賣(ひながひめ)が一夜妻として待っていたのです。

その夜、肥長比賣(ひながひめ)と結ばれた本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)ですが、見目麗しい比売(ひめ)と思っていた隣に寝ていた肥長比賣(ひながひめ)が、大蛇(おろち)に姿を変えたのを見てしまいます。

うわ~~!!
肥長比賣(ひながひめ)は、大蛇(おろち)だった~!!!

と、あまりのことに、「見畏み」恐れおののき、悲鳴を上げて、曙立王(あけたつのみこ)はじめ、配下のものを連れて長穂宮(ながほのみや)から逃げ出します。

一方、肥長比賣(ひながひめ)は、結ばれて夫となった本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)が、自分の姿に恐れおののき、逃げ出したことにショックを受けます。

逃げられたら、追いたくなるのが道理、ですよね~。

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大蛇は肥の河の精霊

肥長比賣(ひながひめ)は大蛇(おろち)の姿を、隠そうともせずに、逃げ出した本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)を追いかけていきます。

本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)たちは、長穂宮(ながほのみや)から、肥河(斐伊川)へと入り、船に乗って逃げていきます。

でも、河なんてなんのその!
なんたって、肥長比賣(ひながひめ)のお名前そのものが、この肥河のことを指しているのです。
そう、肥長比賣(ひながひめ)は、この肥の河の精霊だったのです!!

肥河から海へと急ぎ船を走らせる本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)一行。

大蛇になった肥長比賣(ひながひめ)は、夜の海原を自分で照らしながら、本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)たちの船を探し求め追いかけます。

本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)は、執拗に追いかけてくる闇夜に光る大蛇(おろち)の目を見て、よけいに「見畏み」、怖くてたまらず、震えおののいていました

海を船で逃げても、これは追いつかれてつかまってしまう!
曙立王(あけたつのみこ)よ、船を、船を陸へとあげるのじゃ。
陸路を逃げるのじゃ~。

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須佐之男命VS本牟智和氣王

神代の時代、出雲の神話の物語。
須佐之男命(すさのおのみこと)の「八俣の大蛇退治」。

こちらも、この肥の河が舞台となっていますね。

アウトロー神から英雄神になった須佐之男命(すさのおのみこと)と、もの言わぬ皇子だった本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)には、共通項も多いのです。

二柱とも、母を亡くしていて、母の姿を知りません

須佐之男命は、「八拳鬚心(やつかひげむね)の前に至るまで
長いあごひげが、胸もとに垂れるまで、「妣上に会いたい」と、ずっと母を慕って泣きわめいていました

一方、本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)は、
八拳鬚心(やつかひげむね)の前に至るまで真言とはず
と、長いあごひげが胸元に垂れるようになっても(成長しても)ものをいいませんでした。

二柱とも、母への想いと喪失を生まれたときから感じているのですね

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大蛇退治VS逃亡

そして、本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)は、父の垂仁天皇の夢に、出雲の大神が立ち現われて、
出雲の神にお参りすれば、ものをいうようになる」とお告げを受けて、出雲へお参りに向かうのです。

出雲の大神こと、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)とは、須佐之男命(すさのおのみこと)からすると、娘婿であり、子孫所縁が深いです。
その、出雲の大神のお告げ通り、本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)はお参り後、生まれて初めて言葉を発します。

そして、大蛇との出会い

須佐之男命(すさのおのみこと)さまは、出雲の肥の河の畔にくらす、愛する櫛名田比賣(くしなだひめ)を守るために、八俣の大蛇を退治します。

一方、本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)は、美しい肥長比賣(ひながひめ)と結ばれながらも、大蛇の真の姿に気づき、逃げ出して、別れていくのです。
実は、肥河の精霊なのに……。

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二柱の共通項と違いが、おもしろいですよね。

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夫妃、共に祭られて

けれど、そこで神話は、終わらないのがいいところ。
出雲には、本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)と、肥長比賣(ひながひめ)をお祀りする神社があるのです!!

出雲市所原町にご鎮座する「富能加神社(ほのかじんじゃ)」
こちらは、本牟智和氣王(ほむちわけのみこ)と肥長比賣(ひながひめ)が、一夜と共にした「長穂宮」の古跡なんだそうです。

そして、ご祭神は、 本牟智和氣尊(ほむちわけのみこと)。
その妃神の肥長比賣命(ひながひめのみこと)
初の夫婦神の伊邪那岐命・伊邪那美命(いざなぎのみこと・いざなみのみこと)。

安産祈願、子授かり、恋愛成就、夫婦和合にご利益があるそうです。

物語では、「別れ」ていても、今もご一緒にお祀りされている。
神話は今も生きているのですね。

出雲にもお参り行きたい~~と、祈りの心で手を合わせます。

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―次回へ

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