木花佐久夜毘賣 神様も“失敗”して成長した ことの葉綴り。百六一
気高き真の誇りと美
おはようございます。週末の遅めの朝「ことの葉綴り。」に、
向かう、“サボり屋”です。
今日も、神話の物語を、淡々と粛々と、かつ楽しみながら向かいます。習慣の中にも、隙間や楽しみがあるといいですよね。
天孫の邇邇芸命(ににぎのみこと)さまに一目惚れされて嫁いだ木花佐久夜毘賣(このはなさくやひめ)さま。
一夜の契りから、天孫の御子を身ごもったのです。
出産が近づいて、それを父となる邇邇芸命さまに伝えにきたところ
突然のことに、「たった一度なのに……。それは私の御子じゃないだろう」と、疑われてしまいます。
悲しみ、ショック、怒り……お腹の子も心配ですね。
見た目はか弱く美しい姫神ですが、
自らの身の潔白を証明しようと、
「誓約(うけひ)」を、強く決心される、芯の強さをお持ちでした。
誇り
上辺のプライドや見栄ではない、真の誇り。
尊厳に満ちた、静かな強さ……。
近年、ネット社会で、SNSなどで、
「正義中毒」となり、コメントで人を批判する人も増えています。
何かを目にしたり、読んだりして、
怒りを感じたとき、感情で反応して、行動してしまう……。
きっと、それは、「強さ」ではなく、「不安」や「恐れ」からの
衝動や反射行動からの、「攻撃」や「非難」のように思います。
その行動は、その瞬間は、「自分は正義」「私は正しい」と思えるかもしれませんが、実は、本来の誇りや、自尊心からは、外れていってしまう気がするのです……。
いかがでしょか?
神話の木花佐久夜毘賣さまのこのくだりを読んでいて
芯の強さ、深い意味での自尊心
信念の軸、自らの中の誠……。
そして、愛すること、許すこと……。
気高い美しさ……。
そんなことが浮かんできました。
火の中での出産
さて、物語に戻ります。
産屋の出入り口を土で塗り固め、火を放たれました。
猛火にくるまれる産屋の中で、木花佐久夜毘賣さまは
たった一人でお産の瞬間を迎えられました。
そして……。
燃え盛る火の中から
なんと、なんと
おぎゃあ
おぎゃあ
おぎゃあ
赤ちゃんの声が、聞こえてきます。
木花佐久夜毘賣さまは、
火にくるまれた産屋で、
赤ちゃんを無事にお産みになったのです。
おぎゃあ
おぎゃあ
おぎゃあ
あれ?
どうやら、赤ちゃんは1人(柱)では、ありません!!
燃え盛る火がピークに達したときに
火照命(ほでりのみこと)が、誕生しました。
そして、次に火須勢理命(ほすせりのみこと)。
少し火がおさまってきたときには、
火遠理命(ほをりのみこと)が生まれてきました。
この赤ん坊の神は、別名を天津日子穂穂手見命(あまつひこほほでみのみこと)といいます。
木花佐久夜毘賣さまは、三柱の御子を、無事にお産みになって、
御子たちが、天つ御子であること、身の潔白を証明されたのです。
駆けつけた邇邇芸命さまも、その妻の気高い誇りに、胸を打たれ
無事の出産に、たいそうお喜びになられました。
木花佐久夜毘賣さま、やっぱり素敵です。
カッコいいですね。
霊峰 富士山の女神
火の中で無事に出産された、この神話から
木花佐久夜毘賣さまは、猛火の中で三柱の御子を安産されたことから、すべてに、産霊(むすひ)の御力が強い、モノを生み出す神、
作物の生育や、安産の神さま、火防の神として、富士山の女神、
芸能、酒造り、養蚕の女神として崇められています。
また、焼畑農耕や、稲積を燃やすことで、穀霊の誕生を期待する儀礼を背景にするともいわれているようです。
木花佐久夜毘賣さまは、
富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)
北口本宮冨士浅間神社(山梨県富士吉田市)にお祀りされています。
北口本宮冨士浅間神社さんは、「吉田の火祭り」が有名です。
毎年8月26・27の二日間にわたり、開催されます。
とくに、26日の夜、高さ約3メートル、90㎝の、大松明80本ほどが焚き上げられる様子は、
木花佐久夜毘賣さまの、猛火の中での出産の故事を表すとされています。
現在は、「鎮火祭」と呼ばれ、富士山の噴火を鎮めるお祭りで、
「日本10大火祭り」の一つです。
もともと、富士山を神さまとする浅間神社(せんげんじんじゃ)は、「あさま」と呼ばれていました。この「あさま」とは、噴火する火山のこと。
浅間神社は、富士山の噴火を鎮める為に創始されたという伝えがあります。木花佐久夜毘賣さまが、富士山の神とされたのは、江戸時代という説もあるようです。
すべてのものを産み出す木花佐久夜毘賣さまのご神威は、霊峰富士山の産み出す恵みとも一つに重なりあったのです。
神話は今も生きている。
木花佐久夜毘賣さまは、今も、富士のお山で、
私たちのことを見守ってくださっています。
富士山のお山も、噴火が鎮められますように。
今を生きる、私たちも、この女神様のように
芯の誇りや自尊心を大切に
見目麗しく在りたいですね。
―次回へ。
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