倭姫命様“懐(こころ)喜び言上げし” 元伊勢一〇七 神話は今も生きている ことの葉綴り四三七
“甚に(にへさ)に懐(みこころ)に喜び
こんにちは。今日はお仕事の合間に「ことの葉綴り」のひと時です。
今日は早速、神話の物語へと入ります。
天照大御神さまが伊勢の神宮にお祀りされるまでの物語。
※これまでの神代~14の神話の物語(1~367回まで)のまとめはこちらです。お好きな神様の物語をご覧になってください。新たに「元伊勢 倭姫命さま 前編」の物語もマガジンに「まとめ」ました。
大田命(おおやまと)の案内で、五十鈴川をのぼり、照り輝く霊妙な聖地へと向かわれた倭姫命(やまとひめのみこと)さま。
遥か古、天照大御神さまが、ご誓願をお立てになり、そして天上の高天原から、「豊かに葦が茂り瑞々しい稲穂が実る国(豊葦原の瑞穂の国=日本)の伊勢の加佐波夜(かさはや=風早)の国は、素晴らしい御殿の処がある」とご覧になられて、
天の逆太刀(あめのさかたち)、逆鉾(さかほこ)、金の鈴の御神宝をこの地上へとお投げ降ろしになられました。
この箇所は、“甚に(にへさ)に懐(みこころ)に喜びて、言上げし給ひき”とあります。
甚に(にへさ)には、程度のはなはだしい(甚だしい)、普通の度合いをはるかに超えている。予想を、想定を遥に超えている、という意味です。
そして、懐(みこころ)に喜びてはは、すぐさま「うわ~」と声を上げてという感じではなくて、懐はふところですよね。こころの中で、もう予想を超えてお喜びになられて、という感じでしょうか。
想像しますに、倭姫命さまは、今、皇祖神(すめおほみかみ)さまが地上に卸された光輝く御神宝を、目の前にして、ただただ驚きと、深い深い言葉にはならない感動と、使命を果たされた安堵と、その霊妙な光の輝きに包まれていらっしゃった……。
照り輝く光に包まれて充分に、言葉ではなく、御こころで、その喜びを味わわれていたのではないでしょうか。
そして、“言上げし給ひき”
やがて、このことを、父である垂仁天皇に、朝廷にご報告なさったのです。
言挙げせずと言挙げ
神道では、「言挙げせず」と、いうこともいわれます。
万葉集 柿本人麻呂の
「葦原の瑞穂の国は神ながら言挙げせぬ国」
言葉は言霊、呪力があるので、神秘なる「神さま」について口にするのは憚られ、思い上がったことをすれば神罰がくだると、畏れ慎んでいたのです。
けれど、「この人麻呂の歌には、続きがある」と、田中恆清石清水八幡宮宮司は著書『神道のちから』(神社本庁総長/学研)の中で、紹介していらっしゃいます。
少し引用してご紹介させて頂きます。
葦原の、瑞穂の国は、神ながら 言挙げせぬ国
然(しか)れども、言挙げぞ我がする
言幸(ことさき)く ま幸(さき)くませと……。
「つまり、「葦原の瑞穂の国」すなわち日本は神意のままに言挙げしない国だが、それでも言挙げを私はする。元気に無事でいてくれとーと、いうわけです」
倭姫命さまの「懐(みこころ)で喜び、言上げ」
ここで、倭姫命さまの物語に戻ります。
天照大御神さまの御神宝を、光を目にされて、
それはそれは、もう思考も言葉も超えた“世界”を体感されたのではないでしょうか。
そのご様子が、“懐(みこころ)に喜びて”ではないかしら……
と感じました。
日々、倭姫命さまの旅にご巡幸に触れていると、その御心が、伝わってくる気がするときがあるのです。
言葉も、思考も、時空も超えて、無……ただ、光の世界……
しばらくして、「今」に戻られてから、倭姫命さまは、ようやく、天照大御神さまの御こころに適った宮処にたどり着けたことを、朝廷に、父である垂仁天皇に、“言挙げ”お言葉で、ご報告なさったのでないでしょうか。
感じる、言葉にする、どちらも尊い
倭姫命さまほどではないにしても、私たちも、生きている中で、あまりの喜び、深い悲しみ、しみじみとした幸せ、胸キュンとなる感覚……神社にお参りして、神々しいものを感じて、あ~と包まれる感覚……言葉を超えた感覚を感じることがありますよね。
今は、SNSなどすぐに「言葉」にしてしまいますが、
「言葉」が出るその前に、心で感じる、味わう、体感する。五感で堪能する。感涙にむせぶ……そんな「間」はあっていい気がするのです。
いかがでしょう?
倭姫命さまの物語のこのくだりは、とてつもない喜び、歓喜、神さまと一つになる、神聖なものと溶けて一つになる。
尊い、ワンネス、至福の瞬間は、懐(こころ・ふところ)で味わうことの崇高さを。
そして、しばらくして、意識も今に戻ってから、言葉を大切に選んで伝えていく。
その「どちらも」大切なことなのだと、訓えてくださっているように感じました。
長くなりました。それだけ、天照大御神さまの光の中の倭姫命さまの御心の喜びが、私にも伝えっきた感じなのでした(苦笑)
皆様にも、天照大御神さま、倭姫命さまの光が届きますように!
いつも、ありがとうございます。
―次回へ
#一度は行きたいあの場所
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