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神と人の子 三輪山の神の子伝説② 神話は今も生きている ことの葉綴り。二六五

麻の糸“作戦”

おはようございます。霜月ですが気温が高い週末ですね。今朝も「ことの葉綴り。」に向かいます。

今日も、伝説の恋物語の続きです……。
宜しくお願いします。

疫病が流行したことに心を傷められた、第十代の崇神天皇(すじんてんのう)。
神床(かむどこ)に入られて、夢のお告げを受けます。

夢に現れたのは、古い古い三輪山のご祭神、大物主大神(おおものぬしのおおかみ)さまでした。

そして、「私の子孫である、意富多多泥古(おほたたねこ)に、神祀りをさせよ」と、仰られたのです。

意富多多泥古(おほたたねこ)は、大物主大神(おおものぬしのおおかみ)さまご自身から、「神の子孫」であると仰られます。

そこには、大物主大神(おおものぬしのおおかみ)さまと、美しい乙女、活玉依毘賣(いくたまよりびめ)さまとの、神さまと人との恋物語がありました。


美しい活玉依毘賣(いくたまよりびめ)の元へと、毎夜毎夜、現れる見目麗しく神々しく立派な男

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やがて、活玉依毘賣(いくたまよりびめ)は、その男の子を身ごもりますが、相手がいったい誰であるか知りませんでした。

活玉依毘賣(いくたまよりびめ)の父母は、娘が身ごもったことに驚き、その男が誰であるかを確かめるべく、知恵を出して“作戦”をたてました

両親は、男がどこの誰なのかを知りたいと思い、娘にこう言い聞かせます。

娘よ、よいか。
赤土を、お前の寝床の周りに散らしなさい。

赤土は、「はに」と呼ばれて、悪霊邪気を祓うためにまいていた土です。

娘よ。よいか。
赤土を巻いたら、次には、糸巻に巻いた麻の糸を針に通しておきなさい。そしてその男がきたら、その着物の裾に、そっと刺しなさい。

はい。父上、母上。


乙女は、その夜、父母に言われた通り、赤土をまき、麻糸を通した針を、その男の着物の裾に刺しておきました。

乙女の父母が考えた作戦はこうでした。
着物の裾に刺した糸を、男が家路についたあと、夜が明けてから、その麻糸のあとをたどっていくことで、男の居所がわかる……

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麻糸を追って


その夜も、男と一夜を共にした乙女
明け方になり、その男が帰っていったあと、
乙女は、両親に言われたとおりに、麻の糸をたどっていったのです。

麻糸は、乙女の家の戸口の鍵穴から、外へと抜け出ていました
糸巻に残っていた麻糸はもう、わずか、三輪(三巻き)だけでした。

乙女は、家の外に出て、麻の糸を追って歩いていきます

糸を見失わないように麻の糸を辿ります。

毎夜、寝床を共にする惚れた男が、誰なのか……。

乙女の心も、ドキドキが止まりません。

知らず知らずのうちに、小走りになっていきます。

あの方はいったいどなたなのかしら?

糸は、三輪山の方角へと導いていきます。
麻の糸を追っていった乙女がたどり着いた場所は……。

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三輪山の神の社へ

やがて、乙女はあるところで歩みをとめました

糸が終わっていたのです

乙女が目をあげると、
そこは、なんと、大物主大神(おおものぬしのおおかみ)さまをお祀りする三輪山の神のお社だったのです

ええっ……
あの愛しいお方は……
三輪山の神さま……

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神の子を授かった活玉依毘賣(いくたまよりびめ)

乙女、活玉依毘賣(いくたまよりびめ)の父母も、たいそう驚きます

なんと、わが娘のとことへ通われていたのは、
三輪山にお住まいの大物主大神(おおものぬしのおおかみ)さまであったとは!!!
それでは、私たち人間が気づけるはずもない……。

では、娘が身ごもったのは、神の子なのだ!!!

それは、尊び大切にお預かりしなければ。
娘も、身体を大切にお産できるようにしなければ……。


……と、こうした、言い伝えがあり、意富多多泥古(おほたたねこ)の祖先が、「神の子」といわれる由縁なのです。

これを「三輪山伝説」と申します。

また、乙女の家の糸巻に残った麻の糸が、三巻きだったことから、この土地を名付けて、美和(みわ)とよばれるようになったのでした。

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―次回へ

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