清き明き心の証明　天照大御神須佐之男命③ことの葉綴り。其の九六

天照大御神の弟神への疑心

こんにちは。午前の仕事の後、「ことの葉綴り。」に向かいます。。
“神様も失敗して成長した”
父の伊邪那岐命から「追放」され、妣のいる根の堅洲国に行く前に、姉の天照大御神さまに会いに高天原へと昇天していった須佐之男命さまですが……。

荒ぶる神の須佐之男命の泣きわめきにより、
葦原中つ国は、山も枯れ、海も川も涸れて悪神がはびこり、
禍が満ちてしまい、大ピンチに陥っています。

高天原におわす天照大御神さま。
そのこともご存じです。
私の弟は、高天原を奪うために、昇ってくるのではないか？！
と、思われてもしょうがありません。
高天原を守るために、
高貴な男装の麗神に身を飾られました。

そして、勇ましく雄々しい叫びをあげて
高天原に昇ってきた弟神の須佐之男命に
こう問いただしました。

なにをしに、高天原に昇ってきたのだ？！　

須佐之男命さまは、光輝き麗しい姫神のお姿ではなく
まるで、戦いに出る男装された姉神の姿に驚かれました。

姉の天照大御神さまは、弓をぎしぎしぎしと
引きながら、厳しく詰問します。

なにをしに、この高天原に昇ってきたのだ！！

のんきに姉神様にお会いして、ご挨拶して、
それから、母上様のもとへ、
な～んて、うきうきだった須佐之男命さま。

あの～姉神さま、わたしには、決して姉上さまに
背いたり、ケンカをしたり、反抗心を
隠し持ってはいません……。

自分に邪心のないことを、伝えます。
けれど、高天原を統べる天照大御神さまからすると
自分の使命を果たさず、荒々しい神が泣きわめいたことで
実際には、地上の山や木は枯れ果て
海や川の水も干上がり
悪神がはびこり禍が世の中に満ちている。

それを、どうとらえればよいのだ？
弟よ、お前のせいではないのか？

天照大御神さまの、須佐之男命への疑いは晴れません。

須佐之男命の言い分

須佐之男命さまは、懸命に姉神に向かい、説明をします。

姉神さま、聞いてください。
私は、ただ、ただ、亡き妣上に会いたかっただけなのです。
それで泣いていただけです。
父神の伊邪那岐大御神さまは、私に
「お前は、なぜ泣いているのか？」と、
お尋ねになりました。


それで、それで、私は、父神さまに
「亡き妣上が恋しくて、恋しくて、たまりません。
妣上に会いたい。亡き妣上のいらっしゃる根の堅洲国生きたいと
ただ泣いているのです」
そう、申し上げました。

天照大御神さまは、弟神の話を聞きながら、
まだ弓を引く手をゆるめません。

あっ、でも、父神さまは、
すごくすごくお怒りになってしまって……。
「おまえは、この国に住んではならぬ。
葦原中つ国から出てゆけ」と、
追い出されました。

それで、それで、私は亡き妣上の国に向かいます。

でも、でも、その前に、姉神さまにお会いしてからと、
黄泉の国へと参ることを、
ちゃんと、姉神さまに、ご報告をしてからと
高天原に昇ってきたのです。

天照大御神さまは、それでもなお
弓の矢を、須佐之男命さまに向けています。

ほんとうです。
信じてください。

ほんとうです。
姉神さまや、高天原の神々に
謀反をおこすこころなど
つゆもありません！！！
汚れた心はありません。
清い心だけです。

ご神意を問う誓約（うけひ）

姉神として天照大御神は、それでもまだ
目の前にいる弟の須佐之男命のことを
素直に信じることができませんでした。

ならば、なぜ、父神・母神のお生みになった葦原中つ国を
その自然の神々を、禍だらけの世界にしてしまったのですか？
父神が、どれほど困られて、淡海の幽宮にまで行かれたのに。
そして、なぜこの高天原にまで顔を出したのか？

弟、須佐之男命よ。
あなたは口でそういうのであれば、
汚れた心や謀反の心はなく
心が忠誠で、清き心だと
どうやって知ることができましょう？

すると、須佐之男命は、すぐにこう答えたのです。

姉神さま。
それは、神々に誓いを立てて、「誓約（うけひ）」をして
子どもを産みましょう！！

「誓約」（うけひ）とは、
物事の吉凶、黒か白、ぜひ、成否、勝負、当否などを
ご神意にうかがうことです。
何かを決めて、それを行って、その結果によって
神さまのご神意をうかがうことです。

須佐之男命さまは、それぞれに“神生み”をして
天の神さまに、自分の身の潔白をしめしますと
宣言したのです。

「誓約（うけひ）」という言葉を聞いて
天照大御神さまは、ようやく弓を降ろし
弟の須佐之男命に、うなづいて、
その申し出を受け入れられました。

須佐之男命さまの、清き明き心は証明されるのでしょうか？　いざ……

―次回へ