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深いため息 海幸山幸11 神様も“失敗”して成長した ことの葉綴り。百七四

三年目の……ため息

こんにちは。連日の猛暑が続いていますが、お元気ですか?
私は今日もお昼から「ことの葉綴り。」に向かいます。


山幸彦は、海の神の綿津見神の娘である豊玉毘賣(とよたまびめ)と、運命的に出会い、とお互いに一目惚れしあい、恋慕の情が芽生えます。
父である綿津見神からも
「娘を嫁に」と大賛成されて、めでたく結ばれました。
毎日毎日、夫婦で仲睦まじい時を過ごし、
満ち足りた暮らしを満喫して、
そして、幸せに竜宮城で暮らしましたとさ……。

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で、物語は終わりません(苦笑)。

気が付くと、三年もの月日が流れていたのです。

幸せなときって、時がたつのも早く感じますよね。

山幸彦さまにとって、愛する豊玉毘賣さまとの竜宮城の日々は
あっという間に感じたことでしょう。

けれど、ある夜のことです。

山幸彦さまは、なぜ自分がこの竜宮城にくることになったかを
思いおこしていました。

そうだ。私は兄の釣り針を失くして、
それを元通りに返してくれと言われて
それを探すために、塩土老翁神の助けを借りて
海へと旅に出たのであったな……。

それを忘れていた…………。
妻との暮らしは、楽しく喜びに満ち足りているが……。
こんな大事な、自分の使命を忘れているとは……。

山幸彦さまは、その竜宮城来訪の意味を思い出すと
肩を落とし、大きく深いため息をついたのでした。

そして、再び、遠くをみやると、
はあ~と首を横に振りながら
ため息をついて背中を丸められたのです。


これ、私の“創作”じゃないのですよ。

神話にちゃんと

ここに火遠理命(山幸彦のこと)、
その初めの言を思ほして、大きなる一嘆(なげき)したまひき。

と、ため息をつくという描写が綴られているのです。
おもしろいですよね。

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豊玉毘賣の心配

驚いたのは豊玉毘賣さまです。
いつもなら、隣ですやすやと眠っている夫が
夜中に目が覚めて一人で枕元に座り込んで
ため息をついている……。

そんな夫である山幸彦の姿を見たのは初めてでした。

どうされたのでしょう。
何か心配事がおありなのかしら?

豊玉毘賣さまは、父である綿津見神さまへと相談したのです。

と、豊玉毘賣は、何事もお一人(柱)で決めつけることはせずに
父の綿津見神さまに話をしていますね。
山幸彦さまと泉のほとりで出会い、恋に堕ちたときもそうでした。
いきなりまぐわい結ばれるのではなく
父に、相手の存在を確かめてもらいました。
ここでは、父と娘の親しい関係性も感じられます。

豊玉毘賣さまは、父に早速、正直に伝えました。

父上、天孫の御子である山幸彦さまと結婚し
三年間、ご一緒に暮らしておりますが、
これまで夫君は、一度もため息などついたことがございません。
ところが、昨夜、それはそれは大きなため息をつかれたのです。
何か理由がおありなのではないでしょうか。
私は、それがとても心配でございます。

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なぜ、あなたは此処に?

娘から婿となった山幸彦の変化を聞いた綿津見神さまは、

それは、気がかりであろう。
私が、御子どのに確かめてみよう。

そういうと、山幸彦さまと、二柱(人)きりで、話を始めました。


御子どの。
今朝、娘の豊玉毘賣から聞いたのですが、
これまで、この三年間、竜宮城での、娘との暮らしを楽しまれていた御子どのが、昨夜、とても大きなため息をつかれて嘆かれていたと、たいそう心配しております。
何かございましたか? 
もし心配事がおありなら、この私に仰ってください。
そして、これまで一度も聞いてこなんだのですが、

綿津見神は、目の前に座る婿神の山幸彦を
じっと見つめながら、こう問いかけたのでした。

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そもそも、竜宮城に御子どのがいらした理由は何だったのでしょう?
―次回へ。

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