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その人は、玄関の方へ向かう。 壁にかけてある麦わら帽子を手に取り頭の上に乗せる。カバンの…
人間の脳の働きは、本当に不思議だ。 何を覚えていて何を忘れていくのか。記憶を自分でコント…
固い握手のようにみえて、実に握力のない握り合いだったのかもしれない。 盲目の紳士と車椅子…
半分に膨らませたビーチボールの上に、お手玉を乗せる。それを机の上に置く。 正面に位置した…
弾けるような笑顔だった。 両目を見開いて大きく口を開け、ストリップ劇場の最前列にかぶりつ…
介護用のベットは移動できる。 足についているローラーのロックを外せば、簡単に方向転換や位…
「何を馬鹿なことをいっとるんだ。貴様!どこの大学の出身だ!このクソたわけっ!」 ただ、「野球やってらしたんですね」ぼくはそう、喋りかけただけだった。 「俺はな、慶應義塾の野球部でキャプテンだったんだ。なにを馬鹿な質問をしとるかっ!このクソたわけっ!」 隣にいるぼくに、部屋の端まで聞こえる声量でその人は怒鳴り散らす。 無論、ぼくは怒らせるつもりなんて露ほどもない。その人の介護資料を見て、昔話を得意げに気分よく話してもらえればと思って話しかけたのだ。 まだ、続く「俺をな
その人のお尻は、子持ちししゃものお腹のようにプックリとしている。 確かに、お腹から何かを…
この記事は、ぼくがぼく自身のために書いているものです。 脱衣室の手すりに向かい合うように…
できればこちらに身を委ねてほしい。 そう思うことがある。 介護は自立支援という基本的な考…
もう!素手で行ったれ! と、なってしまうことがある。不可抗力。 トイレ介助や入浴介助を…
近所の道路をテクテクと。 その歩くスピードと後ろ姿に、見覚えがある。 その人が向かう先も…
ぼくは、時空の歪みにでも入ってしまったのか。 それともタイムリープしているのか。 先輩の…
ジジィが、へたり込んでいる。 体が硬くて体育座りができずにお尻の後ろに両手をついて。恋人に振られて呆然と空を見上げるように。 ジジィが道端にへたり込んでいた。 デイサービスの仕事を終えた帰り道、ぼくは通い慣れた道を自転車で走っていた。 介護職の職業病なのだろうか。すれ違う人を見ては高齢者かどうかを無意識に確認するようになってしまっている。ぼくの潜在意識の中に、高齢者介護が刷り込まれてきた証拠だ。 自転車で走りながら脇道にも目を配る。 高速で移り変わる景色に飛び込んで